1.《ネタバレ》 オープニングで、テーブルが倒れるモーションだけでブレッソン映画だと分かる。これって、凄いことですよ。
どうやったらあのようなショットが撮れるのだろう・・・ブレッソンに聞いてみたい。
それはともかくとして、これは超が10個付くくらいの超難解映画。
何故難解かと言えば、過去の出来事のみを一方的に語るというスタンスをとっているためであり、また、回想シーンにおいても女は男に対しての感情をほとんど口にすることもないままに物語が進行し、銃を男に向けるアクションですら動機が分かり辛く、死人に口なしのもはや八方塞がりの映画なのだ。
何が彼女を自殺に追いやったのかとか、夫婦間にどんな亀裂がなど、詮索する事が無意味であることは間違いなさそう。
ストーリーの辻褄合わせは無視して人物の心情を読み解くべき映画もありますが、これはそれすらも許さないであろう映画。
ただただ画面の中で起きているモーションに着目し、そこから何を読み取るかではなく何を感じるかに注力すべき映画。
これが並みの映画監督なら心理描写が全然出来ていないなどと酷評するところではありますが、最初に述べたテーブルの動きや死体の描写、視線などを含めた役者の表情、室内シーンの陰影の付け方、要所要所で聞かせる街の喧騒などなど、これぞブレッソン映画というべき本作に自分のような素人がいちゃもんを付けられる訳もなく、ただひたすらに映画に向き合うのみなのであります。
けど、これだけは問いたい。「やさしい」とは???