1.《ネタバレ》 ふざけた題名に見えるが真面目な家族の物語である。「東京物語」(1953)や「東京家族」(2012)と同じく松竹が製作に関わって配給もしており、一方で埼玉県も製作に加わっていることが「埼玉」である理由になっている。撮影は川口市内が多かったようで、埼玉県が開設した映像産業の拠点である「SKIPシティ」(川口市上青木3丁目)も映像に出ている。制作は「デジタルSKIPステーション」とのことである。
内容としては若手監督4人が担当した短編4つのオムニバスである。事前知識なしで見始めたので途中でやっと気づいたが、ばらばらの4つではなく最初から最後まで一つの家族の物語だった。父・母・兄・妹の4人が、それぞれ周囲の人々に影響されて家族関係を見直す話になっている。
【ハカバノート】高校生の娘の話。よほど深刻な問題のある家族かと思ったが、その実態はあとで明らかになる。幸薄そうな友人(演・美山加恋)が不憫で愛おしい。また女の子に泣かれると弱いので困ってしまう(笑って!)。
【キャンディ】母親の話(いまでも美形)。横浜~大船~久里浜~東京湾フェリー~房総半島と移動するが埼玉は出ない。個人的に最も納得しにくい話だったが、対象層の人々(40代女子か不倫中の女子)には共感してもらいたい。
【父親輪舞曲】父親の話。悪くはないが少し出来すぎの展開である。浮気相手は女優としては好きだが、ああいうのに愛を求めるようではよほど心が疲れていたのか。「ミュージカル作品」とのことで少し身構えていたところ、単に登場人物の心情や状況を歌詞にして歌うだけだった(踊らない)。水崎綾女という人は女優だろうがちゃんと歌の歌える人だったようで、劇中人物としても清潔感が出ていていい感じに見えた。
【ライフワーク】社会人の息子の話。ろくでもない男かと思っていたら気遣いのできるいい奴で、夜勤明けの看護師もきれいに撮れるプロだった。ここは本当にいい顔をしている。
【エンディング】いろいろありながらも一応の大団円。娘のナレーションで総まとめをしていたが、父母についてのコメントには笑った。
ちなみに埼玉の関係では、「荒川のほとり」の風景(戸田公園から東に400m)を父親が懐かしんでいたのが印象深い。こういうと失礼だろうが、外から見れば東京大都市圏の一角にすぎない場所でも、やはり生まれ育ったところが故郷なのだろうなと思わされた。