2.《ネタバレ》 台湾が舞台ながら、登場人物はバラエティに富んだアジア系人種のごった混ぜであり、彼ら「異邦人」が織りなすエキゾチック日常絵巻とでも言う様な作品、だとも思う(まあそんなに大層なもんでもないが)。しかし、本作を実際に構成しているいくつかの会話は、率直にどれもかなり居心地の悪いもので、一部は完全に口喧嘩である。そしてそんなことになっていることの原因は、ひとえに登場人物たちの底意地の悪さ、更には人間誰しもが奥底に秘めているであろう排他的な差別意識に由来する様に思える。その意味では、人間の負の側面の方をより強く描き出す作品であるし、前述のとおり観ていて相当に不快な作品でもある。
それ以上に私が本作に好感を抱けないことの最大の理由は、そういう登場人物のややアレな人間性の描き方の「雑さ」にある。こういう間違い無く国際的な作品で、実際に多種多様な人種の役者を使って「差別」を描くのであるから、誰が何故どのように行動するのかというその描き方にはごく細心の注意を払って然るべきだと思う。が、本作では、登場人物たちは本当にただ大した理由も無く陰湿で差別的である様に見える。そしてその「人の悪さ」というものは、否応無く登場人物の人種に付帯する属性であるかの様に見えてしまうのだ。その意味では、作品としてのテーマ性だとか出来映えだとかいう以前に、一種のルール違反に近い作品だとも感じられる。
と言うかそもそも、何が描きたいのかもイマイチ分かんないし(ラストのシークエンスとかも意味不明だし)、製作サイドが単純に圧倒的にレベル不足なだけにも思える(それは、明確に悪意を持って差別を差別的に描いた、というワケではないかも知れないという意味で、私個人にとってはやや救いに近いことでもあるのだが)。