1.《ネタバレ》 監督の初期作品としては、前作『雨粒の小さな歴史』に引き続き自主制作ということらしい。率直に、今作の方が仕上りがだいぶん「粗い」とも感じられる。ただその粗さというのは、今作が描こうとするものがより「激しい」ということに依る様にも思われるし、その意味では「敢えて」である様にも思える。もちろん、自主制作であるが故の役者その他のクオリティ(ちょっと失礼な言い方かも知れないが)を鑑みて、今作では取り繕うよりはむしろ剥き出しに、というシビアな判断があったのかも知れない、とも思うけれど。
交わらない3つの物語が描き出すのは、比較的シンプルな、ただし根源的な絶望を宿す人間像である。一個の人格形成において注がれる愛が「足りなかった」ことによる自己肯定感の致命的な欠如と、それが生み出す病的な「愛(或いは他者に必要とされること)への渇望」、そしてそれは、自己または自己と他者との関係性の破壊へと終着してゆく。「歪んだ」彼女らが追い求めたものが仮に愛だったとしても、それを与えてくれる人に彼女らが与え返すことができるものは決して愛ではなくて、むしろ拒絶こそが(相手を思い遣るという意味での)愛には近い、ということなのだろうか。確かにこれは、これ以上無いほどに悲しくて絶望的なラブストーリーであると思う。
本質的には、十分に8点を付けられる内容であるかと思っている。一方で、諸々のクオリティの実際、というトコロには大いに改善の余地が残されているとも思う(正直、セルフリメイクしてもいんじゃねーか、と思うくらいに)。この評点はその点を念入りに勘案したもの、というコトで。