1.航空機パニック×感染パニック×韓国映画、その触れ込みから想像し得る映画の構図は、予告編の段階で極めてエキサイティングで鑑賞意欲を掻き立てられた。
ソン・ガンホ、イ・ビョンホンというもはや国際的映画俳優である2大スターのキャスティングも、古くからオースター映画の代表格だった航空機パニック映画の系譜であり、期待感を煽った。
結果的に、想像通りにエキサイティングな映画であったことは間違いない。
ただし、注意しておくと、本作は決して褒められた仕上がりの映画ではない。
ストーリー展開は、娯楽映画であることを踏まえても、リアリティに乏しく想像以上に破茶滅茶だった。主人公らをはじめ、登場人物たちの言動や心理描写も、割と大雑把でありお粗末。
限りなく“トンデモ映画”に近い映画世界のテンションには、ときに閉口してしてしまうことは避けられないだろう。
が、しかし、それでも成立させてしまうのが、やはり韓国映画の“地力”の強さだ。
強引だろうがなんだろうが、積み重ねられた二重三重の絶望的パニックが、すべての人間が実は孕んでいる悪意と脆さ、そして尊厳をあぶり出している。
タイトルでもある「非常宣言」を発した上で、領空侵犯を犯す韓国の民間機に対する自衛隊機の対応の様など、日本人鑑賞者として色々な感情が渦巻くシーンもあり、文字通り二転三転する不安定なストーリーテリングには、浮遊感と居心地の悪さを存分に感じる。
ただ、その“乗り心地”の悪さこそ、このパニック映画のテーマに相応しいと思った。
往年のハリウッドの航空機パニックとは異なり、ハッピーエンドではありつつも、明確な“傷み”をしっかりと映し出す姿勢も、韓国映画らしく味わい深い。