1.《ネタバレ》 だいぶお歳を召した雰囲気が強くなってきたリーアムさん。でも、その風貌が寧ろ本作のキャラクターにはマッチしていて作品世界にスッと入っていけました。
冒頭の冷酷な腕利き殺し屋然とした仕事ぶり。直後に見舞われるアルツハイマー認知症の症状への衝撃。冷徹で緻密に長年完璧な仕事をこなしてきた来た彼にとって、記憶を失うことによる仕事への影響・リスクがどれほどのものと感じてしまったのかは十分想像できます。だからこそ、即座に引退を決意する。しかし裏社会は簡単には彼を解放してくれない。彼の苦しみが伝わって来ます。
一方、人身売買組織の壊滅に向けて我が身を顧みることさえせずに執念を燃やして来た刑事と仲間たち。上司の納得出来ない態度や判断に、彼らの正義心は不完全燃焼を強いられます。滲む口惜しさに思わず共感できます。ガイ・ピアースさんが良い味を出していますね。
そして一人の少女をキーに結び付く殺し屋と刑事。意外にも本来は水と油の関係のはずの二人が、彼らにとっての正義(それは本質的な正義)のために手を組む。このあたりの流れもいいですね。
そして、過去数えきれないほどの命を不法に奪ってきた彼は、正義を貫くため、更には刑事の命を救うため、自らの命を捧げます。瀕死の状態であったとは言え、余命いくばくもないと解っていたとは言え、唐突とも思わずにはいられない死です。
刑事の命と安全は、仲間たちによっても守られます。ラスト、マスクを脱いで処分するまで描く必要があったかどうかは疑問がないわけではありませんが、組織の一員を離れた個としての憎しみを表現するためには必要なカットとも思えました。
伏線が張り巡らされた見応えのあるサスペンス作品に、リーアムさんびいきで少々甘めに9点献上します。