2.《ネタバレ》 まずは題名に目を引かれる。これが映画の名前ということは何か別の意味のある言葉かと思ったら、普通に激戦州のことだったのはかえって意外だった。邦題であえてこの言葉を選んだのは、日本でもアメリカ政治を意識する人々が増えているとの認識と思われる。
映画の中心人物が民主党側で、そもそもアメリカ映画であるからには民主党推しかと思えばそうでもない。都市部の目で農村部を見下すなど、当初はかえって民主党側への皮肉が効いた形かと思ったが、結局は都会の選挙屋などどちらも同類ということになっていた。
物語的には、結末は意外だったが都合良すぎの印象がある。コメディなので笑わされなくはないが、よくあるようにアメリカ人はこれで何が可笑しいのかわからない的なところも多い。ただTV中継の場面で、両候補の選挙屋が境界を越えて揉め出すなどは気心の知れた同士の馴れ合いのようで、いわゆるトムとジェリーが仲よく喧嘩する感じで笑った。また真相がわかってから、敵側の選挙屋が素直に感心していたのはよかった。
社会的な面では、主に「スーパーPAC」でやたらに資金を集めてネガキャンなどに使う問題を扱っていたらしい。また「本当の問題はマスコミが共謀してること」という指摘もされていたが、日本のマスメディアもアメリカに連動しているようなところがあるので関係なくはない。
また地元民の動きに関しては、全国レベルの争いと別に地方独自の課題と解決策がある、という考え方自体は悪くない。しかし善良なはずの住民が、制度の抜け穴を使って選挙屋を騙すのは「一緒に汚くなったら後悔する」という言葉に反しないのかと思った。
なおこの映画は2016年大統領選の結果を受けて製作されたもので、2020年選挙の実態は反映されていないことになる。11/5投開票の2024年選挙はどうなるかと思うが、この映画の時点からもう深刻度が違ってきている気がして笑っていられない。
[雑記1] 序盤で選挙屋がウィキペディアを見ていたが、アメリカでは州ごとに地方制度が違うようで、ウィスコンシンの「町」とは何なのかに関して自分でもウィキペディアで調べたりしたので、選挙屋もそういうことを見ていた可能性がなくはない(好意的に考えれば)。
[雑記2] CNN、Fox News、MSNBCといった実在の放送局が映像に出ていたが、前半に出たNews 3 Nowというのはウィスコンシンにある放送局の番組で、出演したのは当時の本物のキャスターのようだった。