1.《ネタバレ》 磯部鉄平監督は知名度的には大した事ないかもしれないが、この人の作品は大好きなものばかりだ。
そんな磯部監督作品群の中でも本作がベストかな。
才能的には売れっ子監督のあの今泉力哉さえも超えてるとわたしは思っている。
交際6年で同棲中だが「愛情」のうち「愛」の方が欠けてしまった倦怠期の男女を描いている。
もはや居心地が良すぎて何となく交際を続けている状況。
二人とも見た目はめちゃくちゃ綺麗とまではいかないけど、愛着を感じるキャラで、見ていてどこか落ち着く不思議感。
男の方がかわいい女のコから誘われて浮気まがいなことをしてしまうところや、女の方が涙ながらに別れを切り出すところ、すべてが愛すべき人間臭いシーンだ。
ウォン・カーウァイが『天使の涙』のバイク二人乗りで魅せたなら、磯部監督は自転車二人乗りで魅せる。
『キッズ・リターン』の危険な自転車二人乗りに匹敵する危なっかしさとインパクト。
それと磯部監督は夜の撮り方が徹底的に巧い。
デジタルなカリカリの美しい映像でもって、魅力的に夜の情景を切り出す。
それは見ているだけで心地よい。
今後の磯部監督の活躍に大いに期待できる逸品。