33.《ネタバレ》 シリーズ11作目。ようやく、タイトルの意味が通じる内容の作品登場。 忘れな草の花言葉は「真実の愛」。またリリー(ユリ)の花言葉は「純粋」。 寅が散財して買ったおもちゃのピアノが、タコ社長のうっかり一言のせいで、一気に価値のないものになった時の空気の変わりようが、また絶妙だったわ。必死にピアノをフォローするおいちゃんと博。おばちゃんは奥で魚屋に電話「なんか、お刺し身ある?え?タコだけ~?」最高のタイミングで鐘の音がゴーン…まぁここからいつもの修羅場になるんだけど、間の取り方が、上手いなぁ。 そして舞台は網走です。山田洋次×網走と言えば『幸福の黄色いハンカチ』。個人的には健さんが食堂でビールを飲むシーンと並び、本作の網走の港は名シーンだと思います。二人たたずむ寅とリリー。夜汽車から見る明かりの話。この時の寅次郎の手。指には下品な金の指輪。そしてリリーの足の赤いペディキュア。同様に赤いマニキュアの指先にはセブンスター。二人がカタギじゃないことを一枚の画で観せる。そして海に出る父と見送る子たちを、寅とリリーの対岸に置く辺り、綿密に計算したのではなく、自然とそうなったんだろうな。美しい。山田洋次と網走はよっぽど相性が良いのかな。 今までとは違うタイプのマドンナのリリー。中学で家を飛び出てフーテン暮らしという、同じ境遇のリリーに、寅もさぞシンパシーを感じたことでしょう。酔ってとらやに来たリリーをなだめる寅。「昼間みんな働いて、疲れて寝てるんだ。ここはカタギの家なんだぜ?」こんな格好いい大人な寅を、旅先でなくとらやで観られるなんて。 寅を大人の男として信頼して、子供のようにワガママを言えるリリー。そうか登だ。登の女版がリリーなんだわ。先の話をチラッと調べたらやっぱり。前作を最後に登はしばらく出て来なくなります。メッチャ残念。 一方リリーが結婚して、寿司屋の女将になったのは急展開。今までの作品同様、マドンナは寅のそばから離れて終わるんだけど、1作限りではあまりに勿体ないマドンナだったからなぁ。さて次回はどんなカタチで登場するのかな? 【K&K】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-08-09 22:52:28) |
32.《ネタバレ》 そんなに恋愛方面にのめり込んだ作りにはなっていなくて、むしろ放浪者同士の心のふれ合いや交錯というのがテーマだったんですね。だから、あっさりリリーが消えてしまう展開の切れ味が光っています。もっとも、だからこそ、鮨屋での再会のシーンはいらなかったんですが。●内容的には、この時点では「異形のキャラ」とさえいえるリリーを、制作側がまだ使いこなせていない印象も受けますが、だからこそ、後の寅のある意味生涯の支えとすらなるリリーを発掘した意義は大きいといえますし、この作品があったからこそさらにシリーズの長期化が決定づけられたともいえます。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-12-26 23:11:43) (良:1票) |
31.《ネタバレ》 浅丘ルリ子演じる寅さんといちばん相性のいいマドンナ リリーが初登場するシリーズ11作目。北海道の港で出会うシーンから二人はかなりいい雰囲気で、リリーの登場する最初の作品であるこの作品から既に寅さんのベストマドンナはリリーだと感じさせてくれる。でも、この映画のラスト、なぜリリーは寿司屋(演じるのは「ウルトラマン」のアラシ隊員や「ウルトラセブン」のフルハシ隊員で知られる毒蝮三太夫)と結婚したのだろう。もっと余韻に浸れるような別な終わり方のほうが良かったのではないかと思う。 【イニシャルK】さん [地上波(邦画)] 7点(2021-05-09 21:34:03) |
30.寅さんファンならご存知のリリー初登場によるシリーズ第11作「忘れな草」何だか意外と点数低いけど、私はかなり好きです。北海道は小樽の景色、風景、そこに生れるひとつのドラマ、色んな要素が重なって観れば観るほど好きになっていく作品です。寅さんにとって最も相性の良いマドンナはやっぱりリリーだと思う。リリー登場の作品はどれも素晴らしい!それはリリーが寅さんと似たような人物だからだと私は思います。 【青観】さん [DVD(字幕)] 9点(2021-01-19 23:26:07) (良:1票) |
29.《ネタバレ》 第1作から順に観てきて、初鑑賞となる第11作。 今回のマドンナ「リリー」はこれまでとは一線を画す異色のキャラクターだが、その分印象深い回となっている。 場末のキャバレーを巡業する歌手で、煙草も吸えば酒も飲む。 当時はこうした女性が世に増えてきた時代だったと思う。 網走の船着き場で寅さんと出会い、お互いの境遇を語り合う、その目の前では、母子が父の出漁を見送る。 自由奔放ながらそれぞれの寂しさを抱える二人が共鳴する名シーンだと思う。 また、リリーが実の母から金を無心され暴言を言い放つシーン、寅さんがリリーの住んでいたアパートを訪ねるシーンなど、多くを語らずとも情感を物語ってくれる名シーンが多い。 結局は歌手をやめ、新しく世帯をもった旦那にも「一番好きなのは寅さんだった」と言って憚らないリリー。それをとまどいながら聞くさくらの表情も印象的。 リリーは今後の回にも度々登場するようなので、楽しみにしたい。 全編通して自分自身が幼少期だったの頃の記憶と、ところどころに映る街の背景が重なり、なんともいえない懐かしさがこみ上げてくる作品だった。 【田吾作】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2020-06-15 14:01:20) |
28.《ネタバレ》 なんか腑に落ちない。消化不良。酔っ払ってとらやを訪ねてくるリリーをそのまま返してしまったのは何故なのか?助けを求めているのはわかっているのに。近所迷惑なら、どこか場所を移せばいいだけだと思うが。流石に翌日気になるのか、探しに出かけるが、一晩ホッタラカシにしたのはなんか優しさに欠ける気がする。さくらとの別れのシーンの「札のしわ伸ばし」も過剰演出な気がする。本来、金ってもんは汚いものだから、これ見よがしにするもんじゃないでしょう?とらさんのポケットにさっと入れるか、財布にさっとしまうのが粋ってもんでしょう?皆が見てる食堂であんな事長々とやられちゃ寅さん肩身が狭いよ。当初、浅岡ルリコは酪農の奥さんで、そこへ寅さんがやってくるという設定だったようですね。その設定は酪農を営むさくら・みつお親子の所に高倉健がやってくるという「遥かなる山の呼び声」へと受け継がれたように思います。 <追記>ロケ地を訪ねて網走に行ってきました。で再見。上記のように色々不満は残るものの、2人の出会いのシーンは名シーンだと気づかされました。<追記>14年ぶりに再見。「おいリリー静かにしろよ。昼間みんな働いてな、疲れて寝てるんだから。ここは堅気の家なんだぜ。」と非常識なマドンナに説教する常識人寅さん。このシーンはかなりの緊張感がある。本作は、上流・中流といった階級的な用語が頻出するが、一億層中流時代を意識しての事だろう。他方、所有と幸福の関係についても言及されており、そういった事への懐疑は現代でもテーマとなっているという点において普遍性があるのだろう。また五反田や錦糸町の雑然とした町並みが映像に残されているのは非常に貴重でもある。ラストで新興住宅地である松戸五香で開業するというのも世相を現していると感じる。まあ、何の前触れもなくあっさり結婚しちゃうのもちょっと唐突な所はあるんだが。これじゃあ寅さんが振られた事にはならないようにも思えるが、寅さんに追い返された事によってリリーの方が振られたと感じたんだろうか? |
27.1作目から順に鑑賞してシリーズ11作目。もはや完全に定番化したストーリーながら水戸黄門のような安心感で楽しめます。さくらやおいちゃん達には子とものような我儘な寅さんが、リリーに対しては男らしくかっこいいのが良かった。リリーも今までのマドンナより存在感がすごい。今回は登は出てこなかったけど、もう出ないのかなあ。 【ぽじっこ】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2020-06-08 05:42:41) |
26.子供の頃父に連れて行ってもらった怪獣映画でよく併映していた寅さん。 90歳になったその父と50年ぶりに見た映画「お帰り寅さん」を見てからもう一回 見始めた寅さんシリーズ。 とりあえず何から見たらいいかわからなかったので、 知識ゼロからの寅さん入門という本を読んで、50作近くあって 全部おんなじと思っていたら色とりどりなんでびっくり。 まずはお帰り寅さんの柱になっていた リリーさん四部作から見ることにしました。 四部作?の一作目。 二代目おいちゃん(松村達雄さん)の「バカだね〜、あいつは」がツボです。 次は四部作の第二作の相合い傘をみようと思います。 始めから古い。だから今も古びない。映画を観る楽しみが増えました。 【NOBUK】さん [DVD(邦画)] 8点(2020-03-08 18:14:22) |
25.男はつらいよシリーズ、視聴6本目です。 だんだんと、序盤の家族との喧嘩のシーンを見るのが辛くなってきました。あまりにも理不尽で…。(まぁそういう映画なんですが)冒頭の夢から始まる演出も、毎度同じ。う〜ん、1作目を見たときの面白さはこれからも超えられなさそうだなと思い、ちょっと悲しくなりました。 さくらがあまりにも出来過ぎで、身近にあんな人がいれば結婚する気にはなれないでしょうね。 【はりねずみ】さん [インターネット(邦画)] 4点(2020-02-23 16:59:56) |
24.《ネタバレ》 ○リバイバル上映にて再鑑賞。○リリー初登場の作品。やはり他とは異なる雰囲気がリリーだけでなく、作品全体から伝わってくる。○寅と家族、リリーと母の対比、北海道の広大なロケーション、リリーの狭くて暗い部屋の対比等、短いシーンに映画らしい演出が光る。○リリーのキャラも良い。快活で男勝り、孤独で寂しがりな一面もあり、洋風な顔立ちとメイクに、スッと通る美声と来る。○また特徴的なのは、そんな酔ったリリーを寅さんが常識的な対応するシーン。今までのシリーズであまり見られなかった。○そんな異色作だからこそ、惜しむべくはリリーがあっさり結婚している(シーンがある)ということ。手紙のシーンくらいであっさり済ましても良かった(なんなら手紙もなしで、さくらとおばちゃんに「リリーさんどうしてるかね」くらいの会話だけでも良かった。)。○とは言え、歴代マドンナの話や、ピアノ騒動など見所満載。 【TOSHI】さん [映画館(邦画)] 8点(2018-01-14 23:28:47) |
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23.リリーの存在感は凄い。寅さんを上回るキャラが遂に登場した、という作品。 北海道の風景もいいし、シリーズの完成度もさらに高くなってきている。そして最後にちょっと哀愁が漂っている不思議な面もある。 【simple】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2015-03-22 13:23:51) |
22.《ネタバレ》 歴代マドンナNo.1の呼び声高い、リリー松岡・浅丘ルリ子の登場回。美しいことももちろんだが、寅さんと一番心通っていたマドンナなのだろう。物語も他作に見られるような、前半の寅の騒動とマドンナの話との断絶感が薄く、綺麗にまとまっている。 ただ、あれだけ独り身の女の不幸感を醸していたのに、最後にあっさり旦那と店を構える展開に、腰砕けの感あり。 ちなみに、この二人を見ていると、(もちろん歌のほうが後発だが)中島みゆきの『二人は』という曲を思い出してしまう。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-05-15 19:52:11) |
21.山田洋次の女性の好みは時代劇三部作に起用した女優を見ても良く分る。宮澤えり、松たかこ、壇れい。それ以降の作品の主演には再三吉永小百合を起用しているところをみてもいわゆる清純派である。しかし、清純派というのは寅さんのマドンナにはイマイチ違和感があるというのが見る側の気持ちではないか。八千草薫のような例外はあるが、男はつらいよ当初からあった違和感はそこにある。その中で浅丘ルリ子を起用した。浅丘ルリ子に関して山田洋次は全くのノーマークで共同脚本家の朝間義隆の提案で面接し起用を決めたらしい。山田洋次の好みの女優ではなかったのか、起用は決めたもののストーリー的には山田洋次のヤル気の無さが気になる作品となった。しかしストーリのしょぼさなんて払拭する浅丘ルリ子と寅さんの相性の良さが目立った作品になった。渥美清は監督の好みではない女優を相手に水を得た魚のように生き生きしている。監督の当初の意図とは別に役者同士の化学反応が起き別の魅力的な場面が出来た作品となった。山田洋次の好みの女優と寅さんと相性の良い女優は違うということが分かったのは浅丘ルリ子のプロ意識のお陰とも言える。山田洋次もそれに気づいたのか、浅丘ルリ子起用の次作にヤル気を見せてくれた。 【rosebud】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2014-03-24 05:06:20) (良:1票) |
20.《ネタバレ》 本シリーズではある意味「異色」といえるキャラクターの登場、浅丘ルリ子さん演じる、そうリリーです。今までのマドンナはいわば良識ある賢女でした(過去の恋愛トークはおかしくもいとおしい、とても観客心をくすぐるニクイ演出ですね)。しかし本作のリリーはかなり寅さんに寄った、いや、部分的にはそれ以上なものです。夜、酔ったリリーがとらやを訪れる。あの寅さんが「ここは堅気の家だからみんな寝てるんだ」とリリーをなだめる。いままでの本シリーズではこんな場面は無かった(と思う)。初めて寅さんのキャラクターの何かを上回った瞬間を感じました。どうも聞くところによると山田監督的に意図していなかったようなのですが、寅さんとリリーという偶然的な組み合わせに何か不思議な力が働きこのような特別な作品が出来上がったのではないかと。観終わった後今そのような気がしてイマス 【Kaname】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-02-03 22:56:07) (良:1票) |
19.《ネタバレ》 【酪農で三日と続かず 真夏の網走 労働篇。今回のマドンナは浅丘ルリ子さん。】 寅次郎を訪ね遊びに来たリリーを囲んだ食卓で、とらやの面子が 寅次郎の過去の失恋相手の名をズバズバ挙げてゆくシーンが熱く嬉しい。 そこでちょっと再現してみました。確かこんな感じやったです→ 寅次郎「ばかやろー!それじゃ俺が一年中恋してるみたいじゃねえかよ!」ってところから始まって。笑い始めたリリーがその話に食いつく食いつく。 そしてすったもんだの挙げ句、リリーがさくらに寅の失恋相手の名前を〝おねだり〟〝おねだり〟 そしてついに、さくらが口を開いた 「強いて言えば、、」と言いかけた途端に 寅次郎→「お千代ぼうでしょ? ばかだなあ あれは単なる幼友達じゃないか ばかだなあ ねぇおいちゃん」とおいちゃんに同意を求めた寅次郎、 そこでおいちゃん→「じゃ、ほら、小説家のお嬢ちゃん、なんつったっけ」と言えば、寅次郎→「うん、歌子ちゃん。あれはダメ 歳が離れてる」 「それじゃほら」と畳み掛けるおばちゃん→「喫茶店のたかこさん」寅次郎→「あ!たかこさん 居たっけなぁ(そんなひと) 」と思いに耽りながらも 「その前は?」とついに、さくらに催促 寅次郎、 さくら→「花子ちゃんよ」 寅次郎「ああ!そうだ!」 さくら「あの子どうしてるかしらねぇ~」 と言った感じに盛り上がった話の後で お寺の鐘がゴーーン。 いやあ、わくわくしました このシーン。 (文字数の関係にて後半、割愛せざるを得なかったところが悲しい) でも、考えたら不思議なもんです 過去に10作ということは過去にマドンナ10人いたわけです。それなのに今回マドンナの名前が9人しか出てきてないんですよね はてと、忘れ去られてしまったマドンナって誰なんだろう・・ 必死で調べましたさ 答えは第6作のマドンナ:夕子さんこと若尾文子さん。あなたが忘れ去られていました 何かワケ有りだったのでしょうか どうもお気の毒様でした。 あと、変な風になってたのが“幼稚園の綺麗な先生 秋子先生”ってさて誰だ? 正確には 第4作にて栗原小巻さんが綺麗な先生役でマドンナ演じてたんですが栗原小巻さんって役名 春子先生だったんですよね その辺わざと違う名前を出していたのか 単にミス台詞だったのか答えは今となっては分かりませんが、気になって眠れなかったですなあ、なんか自分、あほだな、ばかだなあ・・ では 終了。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2014-01-08 23:41:38) (笑:1票) |
18.《ネタバレ》 ここまでのシリーズとは違った空気を持つ作品でした。マドンナ役のリリー(浅丘ルリ子)が堅気の純日本的美人ではなく場末の歌手として登場し、自らを「フーテン」と語ります。男女の違いこそあれ、寅次郎との共通点が多々ある。北海道・網走の海辺での会話に、似た者同士のシンパシーが漂います。寅次郎は「恋慕」というより「友情」を覚えていたと思います。でも二人に徹底的に違っている部分がありました。家庭環境です。毎度毎度ケンカをしながらも、寅次郎には帰る場所がある。悪口を言いながらも、寅次郎を心配する家族がいる。この普通の有難さがリリーの家庭と対比されます。そんなリリーを気遣う寅次郎の優しさが見えた一篇でした。 逆説的な意見になりますが、下町庶民的な家庭の普通さと、寅次郎の破天荒さのコントラストが、このシリーズの根本を支える秀逸な設定なのだと再確認しました。 それにしても、リリーが「死ぬほど惚れて惚れて惚れ抜いてみたいわ」と言った時の迫力は大したもので、その刹那、松竹映画が日活映画になりました(笑)。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-08-26 01:14:42) |
17.このシリーズでは旅先の風景シーンがいつも素晴らしく、本作も北海道の広さなど見事なものの、今回心に残るのは、東京のリリーがらみの二つの情景だ。母との場、それとリリーが立ち去った部屋のうつろさ、まるで北海道の広さの対照物のような狭さ・暗さがザックリ心に染み入り、こういうシーンがあるせいで、作品はぐんと深まる。「俺たちアブクみたいなもんだ」とかっこよく詠嘆しながらも、寅には北海道まで迎えに来てくれる身内がいた。身内がいるっていいものだ、と思わせておいて、後段になって、リリーの身内=母が登場し、金をねだる。リリーが悪態をつき、言い返すか何かしてくれればまだいいのに、ここで母に泣かれる。このベトベトした「身内」というもののやりきれなさが、五反田(?)の高架下や濁った川が画面を埋める狭苦しさと重なる。明るいとらやの人たち全員に拮抗する暗さをこの母(利根はる恵)は一人で持ち、ワンシーンだけなのにこれまでの母娘の軋轢の長い歴史をしっかりと示した。あと寅がリリーの去った部屋を訪れるシーンもいい。彼女の内面を語ってくるすさんだ室内。別の部屋の住人がこわごわ応対する。かたぎの住人にとっては、女に逃げられたやくざのヒモにしか見えない寅なのだ。アブクみたいなリリーと寅、「とらや=身内」という背景を除いてしまうと、寅もこの荒廃した情景にふさわしいという現実を一瞬のうちに見せたシーンだった。ヒロシが憧れる「広いところを旅する気ままな暮らし」の後ろには、こんな部屋が隠れている。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-14 09:58:33) (良:1票) |
16.《ネタバレ》 深夜に酔って虎屋に来たリリーが、別れ際に見せた涙は切ない。 おばちゃんの言うとおり、寅はリリーを追っかけていかなくちゃ・・・ リリーにしてみれば、寅が追っかけてきてくれないというもどかしさ。 寅さんは、やっぱり私と違って幸せ者、私なんかと違うんだわ、というところか。 切ない。 気になったのは、博が幼稚園から帰ってくる満男をあまりかわいがらないこと。もう少し満男を笑顔で迎えるような演技があっていいのではないかと思った。もしかして自分の父親との関係のトラウマ?そんな深い話ではないですよね。 【karik】さん [インターネット(字幕)] 8点(2013-04-15 23:00:08) |
15.リリー松岡の初登場回。いつもの寅さんより切なさが募る回でしたね。ラストのリリーはさくらの意見が正しい様に終わりましたが、続編ではやはり寅さんの意見が正しくなるのかな。彼女と寅さんの行く末を知ってからこの回を観たので、安心して(?)観られましたが、これ何も知らなくて当時観に行ってたら、あっけない結末で物足りなかったかも。やはり高嶺の花に恋して撃沈する寅さんが笑えるね。でもリリーが一番似合ってるけど。 【movie海馬】さん [地上波(邦画)] 6点(2012-06-24 01:14:25) |
14.《ネタバレ》 マドンナは浅丘ルリ子。 彼女が演じるリリーの1作目。リリーは、寅さんが憧れるマドンナというよりも女版の寅さんとでも言うべき存在。だから寅さんは、彼女のことを自分の分身のように想う。これも寅さんの愛なのだ。 この頃のとらやは茶の間談義が楽しい。今回は「中流家庭とは?」「上流階級とは?」ということについて話題になり、いつものように博の少々理屈っぽい意見(これは山田監督の意見なのだが)でしめる形になるのだが、今回はさくらが寅さんのことを「お金で買えないものをたくさんもっている」(それを「愛」だと表現したのは少し唐突だったけど)といって褒める場面が印象に残った。近年流行りの「プライスレス」の奔りが寅さんのライフスタイルなのである。 まぁ、何だかんだ言って、寅さんのそういった生活を支えているのはさくらで、リリーへのフォローも、北海道の開拓農家(寅さんが2-3日働いてあまりの辛さに投げ出してしまう)へのフォローも、寅さんの金銭面も、心の拠り所も、全部さくらが支えているのがこの一篇で分かるのだ。 あと、ピアノ騒動は面白かったけど、ドタバタもパターン化してきたって感じ。 【onomichi】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-04-28 23:04:01) |