59.《ネタバレ》 先ず最初に言っておく。決して面白い映画でもないし、楽しい映画でもない。それでも8点付けたくなるだけの魅力がこの映画にはある。 冒頭の海辺、浜辺のシーンからただならぬ雰囲気がある。砂浜に寝そべる遺体を目にしても、何もないかの様にもろこしを食べている原田芳雄の不気味な演技、この映画は登場人物全てが何を考えてるか予測付かない不気味さを醸し出してる。突然の様に鰻を食べたいと言い放つ原田芳雄、不気味な音楽を背にして、琴を弾く女と二人の男、その他にも眼のゴミを唇で吸い取ろうとする女の不気味さ、そんな女を逆さまに担いで階段を登る男、作品全体に漂う不気味さ、ラスト、亡くなった奥さんの女の子に骨をください。命をくださいみたいなことを言われるシーンも怖い。人間の欲望、絶望感を説明台詞ではなく、映像で見せる凄さ、昨今の邦画にはない映画的文法に優れた何とも怖い怖い作品だ。 【青観】さん [映画館(邦画)] 8点(2023-12-01 19:15:42) |
58.《ネタバレ》 本作は今回初見なのですが、なんとなく、勝手に、若かりし日の大谷直子の妖艶な姿 というひもづけをしていました。実際見てみたところ、若かりしと言うわけではなく、私の知っている大谷直子そのものでした。と言うことで、そっち方面ではちょっとスカッたのですが(裸で指ぱっちん意味不明です。)、それより、原田芳雄が原田芳雄らしくてほんと良かったです。豪胆で放埒なんだけど、乱暴な感じはなく、安っぽくもない。知性がにじみ出るとか感じさせずに、バカっぽくもない。たまに丁寧語使ったりするのも違和感なくハマっています。作品としては、雰囲気映画なんですよね。映像も美しく、嫌いではないですが、ストーリーがちょっと散漫で、原田芳雄のキャラ以外であまり引っかかるものがなかったです。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 5点(2023-03-08 18:34:10) |
57.《ネタバレ》 もうね、指パッチンですわ。こんな不思議で不気味な作品、よく思いついたものですよ。 原田芳雄の演じる中砂の強烈なキャラクター。「ウナギが食べたいなぁ」あの力強い声でそう言われると、私までウナギが食べたくなる。特大のうなぎの蒲焼を手掴みで食べる。焼きとうきび。すき焼きに大量のこんにゃく。蕎麦と日本酒。腐りかけの桃。なんて美味そうなんだろう。戸棚の中の鱈の子のこだわり。青池夫婦が食べるいっぱい並んだ料理も、何だか解らないけどどれも美味そう。赤い器が印象的。 印象的な赤。女の股から出てくる赤い蟹。赤くなっていく弟の骨。中砂家に吊るされた赤い提灯。中砂の眼球を舐める周子の舌の赤さ。船の渡し賃にパカパカ開いて見せる門付の女の股ぐら。観えないんだけど赤いんだろう。 門付の3人組がまた強烈なインパクトを与えてくれる。イチャイチャしたい若い2人、だけど稼ぎ場までの道を知ってるのは年重の男だけ。三角関係の結末は、コントみたいな殴り合い。 コントというより不条理に近い。「ダメダヨ」のタイミング。屋根に落ちる小石。トマソン・トンネル。小雨の中登場人物たちが勢ぞろいで見上げる花火。サラサーテのツィゴイネルワイゼンに入る声。何でか解らないモノ・現象から醸し出される不思議さ。「怖いな…気をつけなくっちゃ…」椅子の上で体育座りの中砂カワイイ。 カワイイといえば青地の腕を引っ張る園「もうじき落ちてまいりますわ、早く参りましょ」の少女のような仕草カワイイ。旦那の居ない家の中で胸がはだけて、さぁコレから。ってタイミングで入る指パッチン。怪しい雰囲気から一瞬で目を覚ますような指パッチンの可愛さ。このセンスが素晴らしい。 【K&K】さん [インターネット(邦画)] 8点(2022-05-03 20:04:11) (良:1票) |
56.《ネタバレ》 若い頃観て非常に感銘を受けた映画。黒澤明の「影武者」と同じ年に封切られ、自主映画ながら国内の映画賞を総ナメした。 今回懐かしく何十年振りかで再鑑賞。 あの世と現生、夢と現実を行ったり来たりしている様な不条理で幻想的な世界。 主要な登場人物は4人で、藤田敏也演ずる青地以外は全て常軌を逸した人物。 この奇妙な世界に訳のわからないまま魅せられていくだが、中砂孔が死んでから急に話が退屈になってしまうのが残念。 やはり原田芳雄の印象は強烈で、この人以外にこの役は考えられない。大谷直子は幻想的な一人二役を好演、安田道代は強烈なエロスを魅せた。 【とれびやん】さん [インターネット(邦画)] 7点(2022-03-27 19:54:34) |
55.鎌倉妙本寺の総門と二天門の間には,ひとを正気に戻させる何かがある。ツィゴイネルワイゼンの豆まきのシーンでこのお寺が映るから言ってるのではない。 磁場,石や苔,樹木や葉,塗られたペンキ,コンビニ袋。それらを包む空気。「精神」という抽象的なものではなく,それらの物質がヒトに超好ましい影響を与える、その場所の一つが妙本寺なのだ。と,久しぶりに行って体感したのである。 そしてその「正気」とは残念ながら決して「善き現実」だけを見せるわけではない。可能なら遠ざけたい「死」や「理解が非常に難しいモノ」なども直視させ(確実に存在する!),それを鈴木清順は映画ツィゴイネルワイゼン中に結晶化したのであります。これ以上冷徹な映画は他にないだろう。何度も観たくなる。 この映画を観るのは今日でたぶん8回目だ。今回も非常に良かった。ヘルメットを被り,スポーツタイプの自転車で妙本寺に行ったのが再再再再再再再鑑賞のきっかけ。ツィゴイネルワイゼン現代版の撮影で,二天門からヘルメットをかぶって自転車で滑走する場違いで理解不能な異物として自分が参加しているような錯覚を覚えた。 清順ワールド恐るべし。10,10,10,10,10点!! |
54.《ネタバレ》 初めての清順映画。絢爛たる映像=清順歌舞伎に酔う映画。意味は何もわからなかったが、堪能した。大谷直子がセクシー。でも、原作もあのような作品。幻想的な映画。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 9点(2019-01-07 12:52:10) |
53.《ネタバレ》 何の予備知識なく鑑賞。 最初は、ボーっと見るともなく見る感じでしたが、 大谷直子が半裸で指パッチンして振り向いたあたりから覚醒。 何の話か、よりも、前後関連性無さそうに挿入される画の美しさに釘付けになりました。 中砂夫婦は和服で住居は日本家屋。 青池はビシっと決めたスーツ姿で洋館に住んでいる。 妻の周子はいつも昔の「モダンガール」のようなファッションで、和服の時も明るく斬新なデザインで 園や小稲の地味な着物と対照的。 洋館のインテリアや小物、周子のファッションは見てて楽しかったです。 生の証のように食事や情事のシーンがあり、その他は死を思わせる暗い画面と不安を煽るような雑音。 2軒の間にある切通しは、いかにもこの世とあの世の通り道のよう。 悲哀と滑稽さを見せ、度々挿入される盲目の門付達の話。 三角関係という不安定な人間関係。 次第に、誰がいつ死んだのかは曖昧になっていきます。 それは、ずっと死の床にある妙子だけが知っているような気がしていました。 もしかしたら、すべて妙子の夢なのではないかと。 最後は、実は死んでいるのは青池のほうだと思わせますが、この点については、もっと昔に、 できれば公開当事に見ていれば衝撃を受けただろうと思えて残念です。 この手のラストの映画やドラマをたくさん見てしまったせいです。 こちらの作品の方が早いのに。 とはいえ、いつもは物語の整合性や構成を見てしまうけど、この作品に限っては、 それよりも感じたまま受け取っておいて良いと思えたのは自分でも不思議でした。 録画すれば良かった。 もう一度見たいと思います。 【nanapino】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-06-25 22:30:00) |
52.鑑賞後、感想を形容する言葉がしばらく思いつきませんでした。で、結局出てきた言葉は「わからない」です。見て不快な気分にはなりませんでしたが、見た価値があったとはとうてい思えません。なんかよくわからないけど、凄いものを見たという気持ちにもなりませんでした。優れた芸術品は、人によく理解されなかったとしても、そう思わせるパワーがあるものです。この作品は、本当に人を選ぶと思います。 【川本知佳】さん [DVD(邦画)] 3点(2015-02-09 00:41:40) |
51.ちょっと変な話。赤く染まる骨、夫婦の会話の途中に聞こえる何かの声、娘の夢を頼りに本を返してもらいにくる女、屋根瓦にどこかから落ちてくる小石の音。はっきりとした「怪談」ではなく、ちょっと変という程度の「怪異」。この雰囲気がいい。サラサーテの呟き。あきらかに何か語っているのだが、よく聞き取れない、もしかするとよく聞き取れないように呟いているのかも知れず、自尊心がハッキリ語らせようとしないが、心の中にしまい続けているのもつらい、という想い。それが次第に嫉妬とか怨みとかに固まっていく。内にこもって骨を血で染めたり、ちぎりコンニャクの山を作ったりする。生きていると勘違いしている者の夢なのか、ストーリーは次第に曖昧になっていくのだが、画面は実に明晰なのだ。おどろおどろしさよりも、カラッとしたユーモアが漂ってくる(たとえば盲人三人の決闘シーン)。清順の世界とは、これだったんだ、あまりに明晰なゆえに掴み切れた気になれない夢魔。そして男2女1の三角形が繰り返されていく。嫉妬。外れた1が怨みを抱きながら2と並んでいる怖さ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2012-08-23 10:01:37) |
50.見世物小屋のような得体の知れない異様な気持ち悪さ、苦手です。観る人を選ぶけど好きな人はそうとう嵌るんでしょう。 |
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49.鈴木清順監督の映画は今まで観たことありませんでした。各場面の繋がりは難解で、意味の分からないシーンもたくさんありますが、それがとても新鮮に感じました。意外とストーリーはしっかり出来上がっており、ただ難解な作品というだけではなかったので、予想以上に楽しめました。予備知識がある上で見ましたが、それでも衝撃的な映画でした。CSでは監督のインタビューも合わせて放送されており、「映画なんて形に捕らわれず、みんな自由に撮ればいいじゃない」と仰っていました。これはまさに監督の頭の中を映画化した作品なんだと思います。 【たけたん】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-02-15 18:40:14) |
48.ワケわかんないのに退屈せず、最後まで見られた。骨はたしかに美しいなと思ってしまう。人間が誰しも内包している美と死。考えると怖くなる。全く関係ないが中原中也の「骨」も思い出す。ものすごく怖い映画なので今後おいそれとは見られないが、強烈に印象に残った。それと、藤田さんが時たまハーヴェイ・カイテルに見えたのも、どうでもいいが印象的。 【ジェイムズ・ギャッツ】さん [レーザーディスク(邦画)] 9点(2010-05-27 21:43:18) |
47.青地さんが中砂家を訪ねるシーンで、暗闇の中を手探りで進んでいく場面が好きです。 全体的に雰囲気は楽しめましたが、145分はちょっと長かったかも。 【TAKI】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-11-25 22:22:09) |
46.《ネタバレ》 繰り返し現れる記号を元に解読してみます。①骨。骨=美と死の象徴。中砂は、赤い骨の話をした芸者小稲の美しい骨格を愛する。妻園も小稲そっくり。青地と先に死んだ方が骨を与える約束をする。中砂は死の観念に取り付かれている。②不幸。中砂に捨てられ溺れ死んだ女。盲目の門付け、肺病の夫をもつ女、弟が自殺した小稲、死の床にある青地の義妹。精神に安らぎのない中砂も不幸。③熟れる。死の一歩手前の状態。中砂はその時が最も美しいと感じる。青地の妻周子が”熟れた”花の花粉で”熟れる”と抱く。抱かれた周子は以前は食べなかった熟れた桃が好きになる。こんにゃくも、周子の舌も”熟れて”いる。桜が満開に”熟れた”下で、中砂は自殺する。最も美しいときに死にたいという美学。④三角関係。門付けの三人組。この人間関係が二転、三転する。中砂と青地と小稲。中砂と青地と園。中砂と青地と周子。周子の妹の妙子と青地と中砂。中砂の娘豊子と園と小稲。人間関係はつねに三角関係。人生の象徴であり、不幸の原因でもある。⑤トンネル。これは異界への入口。何度も繰り返し出てくる。中砂の家へは切り通しを通らないと行けない。中砂=異界といってもいいほどで、不思議なことは全て彼を通して起る。⑥幻聴。ツィゴイネルワイゼンの聞き取れない言葉が発端。生きていることの違和感、住み難さの象徴であり、死への入口でもある。最後レコードが鳴っているときの青地の言葉は聞こえなくなる。死の世界へ同化してしまったから。⑦類似性。小稲と園がそっくり。門付けの三人組と子供の門付け三人組も類似している。妙子は生死を彷徨いつつ、現実か幻覚かわからない話をする。この妙子がこの映画の世界観と類似。青地と中砂は合わせ鏡の関係。⑧交換。中砂は青地に妻を取り替えようと提案。又先に死んだ方が骨を与えようと言う。生と死、この世とあの世は交換可能。⑨食事。生の象徴で、何度も登場する。葬式など死を連想する場面には必ず食事シーンが出る。生を強調することにより、逆に死を強調している。⑩あの世。ラストの豊子の足跡は六文銭で、これは三途の川の渡し賃。死んだのは中砂ではなく、青地の方だった。逆もまた真実。何故ならこの世とあの世は交換可能だから。主題は「この世に確かなものは何もなく、生と死の区別でさえも曖昧である」ということ。そして「その曖昧さこそが生きていることの証しでもある」。 【よしのぶ】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2009-10-13 17:56:08) (良:1票) |
45.まるで夢のような無秩序をひとつひとつ絵のつながりだけを見ているようだった。 理解しがたい絵もあれば、見惚れる絵もあった。 【michell】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-07-07 21:23:57) |
44.映画監督を語る時に、その監督独自の世界観~などということはよく言うものだけれど、鈴木清順のそれほど独自性に溢れたものはないのではないか。世の多くの映画監督がそれぞれの世界観たるものを表現しているが、やはり多かれ少なかれ何かのマネである部分があることは否定できないはずだ。しかし鈴木清順は違う。彼の映画世界はそういうレベルではない。誰のマネでもないし、誰も正面きってマネできるものではない。もちろんそれが面白いか面白くないかは観る者の感性しだいであり、何が正しいということはないが、まずはその絶大なオリジナリティだけでも見る価値はある。 【鉄腕麗人】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2009-06-20 17:41:13) |
43.凡人の僕は、ただただ「大谷直子がかわいいなあ」と、そればかり思っているうちに見終わってしまいました。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-02-02 21:46:47) |
42.雰囲気を楽しむ映画なんでしょうね。自分にはマッチしませんでしたが。蟹・盲目の三人・蒟蒻・目な舐め等の発想は評価に値します。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-02-11 14:53:56) |
41.第一に面白くない。 そしていかにもな映像センスが自分とは合わない。 更に、原田芳雄が苦手。 大楠道代も楠田枝里子の様で気持ちが悪い。 だけど、不思議と印象に残る作品だ。 この特別な印象こそが、本作が高く評価される源なのかもしれないが、その良さを十分には理解できなかった。 【にじばぶ】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-02-05 19:03:37) |
40.グロテスクなのに美しい。意味不明なのに胸に響く。下手なのに魅惑的な藤田敏八。そんな様々な矛盾が絶妙に織りなす奇跡の怪作。 【丹羽飄逸】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2007-08-10 21:29:22) |