7.《ネタバレ》 パゾリーニだが、この『カンタベリー物語』を観るまでは、イマイチ好きになれなかった。
この作品もいわば「義務的」にやっつけるつもりだったのだ。
しか~し、これが何とも面白い作品で、見事にハマってしまった。
この作品は『デカメロン』『アラビアンナイト』と並ぶ、P.P.パゾリーニ“艶笑三部作”の一つでもある。
何個もの挿話から成り立っており、オムニバス作品の様な形式で話が進んでいく。
つまらない挿話もあるにはあったが、これがなかなかの粒揃い。
基本的に映画で笑わない(笑えない)この私が、思わず吹出してしまう挿話が何個もあった。
その中でも笑いまくってしまったのが、ニネット・ダヴォリがちゃらんぽらんな主人公を演じた三番目の挿話である。
ニネット・ダヴォリは、P.P.パゾリーニの作品では常連の俳優だ。
いつも訳のわからん役ばかりだが。
でも、今回の作品における彼の演じる青年は、殊のほかオカシイ。
なんだか分からないけど、常に“ニヤニヤ”しているのだ。
あげくの果てに、そのちゃらんぽらんさが災いして、“ギロチンの刑”に処されることとなるのだが、首を板にはめ込まれた後でも“ニヤニヤ”である。
この終始馬鹿にした様な彼の振る舞いに、見事に引き込まれてしまった。
処刑されるわけだから、かなりシビアなストーリーであるはずだ。
だのに、それだのに・・・
それを微塵も感じさせない彼の“ニヤニヤ”は、もはや神がかり的でさえある。
この挿話によって、ニネット・ダヴォリ、そしてP.P.パゾリーニにハマってしまいそうだ・・・
そして、この作品が、ベルリン映画祭の最高賞(金熊賞)を獲っているのだから凄い。
何たることだ。