31.《ネタバレ》 寅さんシリーズ、鑑賞3本目です。
寅さんのお母さんが出てくることで、今回は少し違う寅さんを見れるのが嬉しいところ。
母親役にミヤコ蝶々とは、なんとも絶妙なキャスティング!これ以上は無いんじゃないかと思うほどピッタリです。
元芸妓なだけに粋で少し蓮っ葉な雰囲気、気の強い顔つき、口から生まれたかのような早口でキレのいい口上。すべて想像どおりの「寅さんのおっかさん」で、大いに満足です。
性格も「この親にしてこの子あり」です。口は悪いが人は良く、顔で笑って心で泣いて、照れ屋で自分の弱みは見せんとする。
だから揉めた時は大変!二人ともトコトンやり合ってしまうタイプです。
けれど、二人とも「罪を憎んで人を憎まず」が根底にあるから、あっけらかんとしていて引きずらない。そしていつの間にかまた仲良くなっている。良い親子関係ですね。
唯一違うのが、二人の金銭感覚でしょうか?(笑)
母上は、さすが女一人で酸いも甘いも噛み分けて生きてきただけあって、財布の紐は固い。
対する寅さんは、生粋の江戸っ子で「宵越しの金は持たねえ」タイプ。
そして私が大好きなのも、この二人の金銭感覚が垣間見えるラストシーンです。
寅さんは、たかが靴磨きの小銭代さえ母親にねだります。
母の口ぶりからすると、どうやらその前から何かと理由をつけては、チョイチョイ母上に支払いを頼っている様子。
さすがにその靴磨き代は母上も出さなかったようですが、結局、その前まではそれなりに寅さんの代わりに支払いをしていたのです。
そう、息子の甘えを許容しているのです。
そして、誰に対しても大盤振る舞いする気っ風のいい寅さんでも、母親の前では甘えん坊の一人の子供に戻ってしまっているのです。
意地っ張りで素直じゃない二人の、ちょっと分かりにくい親子関係と愛情を上手に描いていて、とても良いシーンだなぁと思いました。
何より私が心に残っているのは、母上が寅さんに放ったセリフです。
「どこぞの世界に自分の子どもを喜んでほうる親がいるんじゃ!!」
この言葉の裏には、たくさんの想いや葛藤が募っているのだと思います。
子どもからすれば親の勝手と思ってしまい、理不尽に感じるのは当然のことです。
けれど、さまざまな事情があった上での決断であること、その決断の礎となるものは母親の愛であること。
こういったことに想いを馳せられるようになったのは、私も子を産んだからなのかもしれません。
寅さんの母上の心中を思い、涙がほろりとこぼれました。