3.冒頭、屋根裏部屋の窓から男女が顔を出していて、そこからカメラがズンズンと横に移動して、屋根が連なる夜の街並みを映し出す。こんな高所でこんな横移動、どうやって撮影したんだろう、と思っているうちにだんだん、この屋根が連なる光景が、ミニチュアのように見えてくる。ワンショットで撮ってるんだからミニチュアのはずはないのに、と思いつつ、それでも何だかオモチャみたいな景色が、広がっていきます。
とか思ってたらやがて画面にオッサン2人が顔を出す。やっぱりこれはオモチャではなく、実際の街並みの光景だったのか? ちょっと不思議な感覚に陥ります。
で、このオッサンたち、何やら喧しいわい、と、とある建物の屋根の窓から中を覗くと、そこではドンチャン騒ぎ。覗かれようが、そこから口を挟まれようが、誰も気にせず陽気に騒いで、無防備というか適当というか。しかしこれ、見ようによっては「長屋モノ」の風情もあって、フランスだとこんな感じになるのね。
で、なんでそんな騒いでいたのか、そこに至るまでのドタバタを描いたミュージカル。登場人物はだいたい、適当な連中ばかりで、中でも主人公は実にいいかげんなヤツ。しかしこの文無し男が宝くじにあたって、ひと騒動、しかししかし、その宝くじが行方不明となって、ふた騒動。
ミュージカルですからトーキー作品ですが、まだまだサイレントの味わいが多分に残っていて、迷路のような屋根裏の通路でも追いかけ合いなどでも、サイレント映画風のドタバタが展開されます。これが実に楽しいんです。
オハナシもバカバカしいんですが、二転三転の楽しさ。もう宝くじは手の届かないところに行ってしまったのか、と思いきや、意外な形で帰ってきて、これもバカバカしいギャグと言えばギャグなんですが、ドタバタの後ゆえの、不思議な感動があります。一種の、緊張と緩和。
だけどだけど、それでもまだ終わらないのがこの映画。最後までツイストをかけてきます。
これ、楽しいですよ!