162.《ネタバレ》 「去年の夏」に関する手紙が届く序盤までは、かなり良い感じ。
これはヒット作となったのも納得だなと思えたのですが……
中盤以降は失速というか、どうも着地が拙かった気がしますね。
まず、ジャンルとして「犯人探しのミステリー物」とも「殺人鬼が暴れるスラッシャー物」とも言えないような、中途半端な内容だったのが痛い。
両方の魅力の良いとこ取りが出来ている訳でもないし、観ている間(……で、どっちにするの?)と、観客としてはもどかしく思えちゃうんですよね。
鑑賞後に結論を下すとすれば「スラッシャー物」って事になるんでしょうけど、それにしたって殺人鬼となるフィッシャーマンに魅力を感じなくて、ノリ切れないんです。
無関係の人間も色々殺しまくってるから「怒りに燃える復讐者」って感じもしないし「車のトランクにあった死体」が消えちゃう件とか(この殺人鬼は現実的な存在ではなく、ファンタジーで何でも出来ちゃう系なの?)と気になっちゃうのも難点。
話の主筋はシンプルで分かり易いのに、こういう細部が曖昧で分かり難いって形なのは、ちょっとチグハグでバランス悪いんじゃないかと。
あと、キャラの使い方も勿体無い感じなんですよね。
アン・ヘッシュ演じるミッシーとか「犯人候補であり、主人公カップルと三角関係に成り得る存在」なのに、途中から全然出てこなくなって戸惑いますし。
シバース姉妹の確執が伏線っぽく描かれていたのに、姉がアッサリ殺されて終わりってのも吃驚です。
ベタではありますが、姉が殺される直前に妹を庇い「逃げなさい!」と言ったりして、喧嘩しがちでも姉妹の絆は確かにあったって展開にしても良かったと思うんですよね。
魅惑的な要素が色々散りばめられていたのに、それらを活かしきれてない気がします。
無事に殺人鬼を撃退した後「命を狙われた原因に心当たりは無いか?」と問われて「いいえ」と答える展開にも、心底ガッカリ。
(こいつら結局、何も反省してねぇな!)と呆れちゃうし「比較的善人と思われた主人公カップルも、結局は嫌な奴らだった」ってオチになっちゃう訳で、凄く後味悪いんですよね。
「殺人鬼は、実は生きていた」というお約束エンド迎えるのも、好みとは言えないです。
冒頭にて述べた通り、序盤の展開というか「話の掴み」は上手いと思うし、カメラワークや音楽のチョイスなども良いので、観ていて退屈するって事は無いんですけどね。
夜の浜辺で「高校最後の夏」を楽しむ様には、青春映画としての魅力が確かにあったと思うし……
事件から一年後、かつて抱いていた夢が嘘のように冴えない日々を送ってる仲間達と再会する流れも、切なさがあって好きです。
エンディング曲もかなり良い感じで、映画本編に対する不満を忘れさせる効果がありましたね。
商業的に成功したのは納得だし、90年代を代表する品なのは間違いないと思いますが……
名作や傑作とは評し難い。
でも、粗削りな魅力は確かにあるという「青春映画」という以上に「若者映画」って感じの一品でした。