17.《ネタバレ》 実在したらしい稀代の殺人鬼エミール・ビュイッソンを演じるトランティニャン。自分の中で最高のトランティニャンです。視線で人を殺せる事が出来る様な凄み、躊躇するという事を知らない冷酷無比な所業と、その際の能面の様な表情はエミールそのもののように感じて、底冷えのする怖さでした。一方で、ピアノに聴き入る姿は人間の血が僅かながらも通っているようで奥深さを感じました。したたかで理詰めにエミールを追ってゆくロジェを演じるアラン・ドロンの抑えた演技も良かったです。レストランでの逮捕までの一連のシーンは、ピリピリした空気で脈拍が早まり耐えられない程の緊張感でした。 2022年6月17日没 合掌 |
16.《ネタバレ》 70年代の映画の良いところが全部詰まってる一本。生活感と建築美の合わさったパリの小路がくすんだ色味に沈み、その中に置かれた演者らの陰影深い佇まい。80年バブルに入って一掃されてしまうこれらの情感が隅々まで漂っていて、陶然とします。 男たちが渋いもんね。モスグリーンのトレンチを着たアラン・ドロンはヘビー・スモーカー。官僚的な上司に意見しつつ参考人らには硬軟取り混ぜて証言を引き出す、絵になる男。やっぱりかっこいいなー。ところがジャン・ルイ・トランティニヤンの露出が多くなるにつれ、さしものドロンが食われてゆくのです。 ジャン・ルイ・トランティニヤン!「男と女」での印象薄とは打って変わって、映画史に残る冷酷な殺人者ぶりでした。 薄青の瞳は常に座っていて、一切躊躇せず引き金を引き、出過ぎた小娘は横っ面を張り倒す。彼とドロンがついに邂逅する食堂のクライマックスの緊張感ときたら。何度もトランティニヤンの目線をカメラが捉えるんですよね。考えが読めないその瞳に、バレたのかしら?と冷や冷やさせられる名場面です。 この頃の映画は煙草が本当に粋な小道具として機能しているなあ、と強く思わされる作品でもあります。格好良い俳優は皆タバコを手にしていた。火を点ける仕草も口にくわえた姿も素敵に超がつくほどで、彼らのタバコの吸い方は世の男性諸氏のお手本だったのですけどねえ。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-03 22:29:10) |
15.《ネタバレ》 主演のアラン・ドロン。個人的には世界一美しい俳優だと思っています。その翳りを帯びた暗い表情の中に見せる刹那的な狂気と死の匂い、そして冷酷さとニヒリズム------。彼の素晴らしさは例えようもありません。俳優に陽と陰のタイプがあるとすれば、まさしく彼は陰のタイプ。そのため、彼はジャン・ピエール・メルヴィル監督と組んだ「サムライ」「仁義」などのフィルム・ノワールの世界でのストイックなムードがよく似合いますし、ジョセフ・ロージー監督と組んだ「パリの灯は遠く」「暗殺者のメロディ」でのクールで死の匂いを漂わせるムードも素晴らしい。 この「フリック・ストーリー」は、彼の盟友とも言うべき、また一部では彼の御用監督とも揶揄されているジャック・ドレー監督が撮った映画ですが、アラン・ドロンという俳優は、本質的に犯罪者、アウトローの役がよく似合うのですが、この作品は彼がフランスでミリオン・セラーとなったロジェ・ボルニッシュという元刑事が書いた自伝的な実録小説に惚れ込み、敏腕プロデューサーでもある彼が映画化権を買って製作した作品なんですね。 だから、ロジェ・ボルニッシュという人間に惚れ込み、シンパシーを感じたこの刑事役を、どうしてもやりたかったんでしょうね。確か、この時点で刑事役を演じるのは「リスボン特急」以来ではなかったかと思います。それほど、彼の刑事役は珍しいんですね。 そのため、本来であれば、彼が演じるべきだった冷酷で凶悪な犯人エミール・ビュイッソン役に名優のジャン=ルイ・トランティニャンをドロンは指名したんですね。つまり、悪役が引き立つことで、主役のドロンもその化学反応で相乗効果としてより輝いて見えるという事を知り尽くしているんでしょうね。とにかく、この映画でのトランティニャンの冷酷無比な背筋も凍るようなゾッとする犯人像は鮮烈で、法律家志望だったという彼は政治映画「Z」で製作者の一員に名を連ね、この映画の演技でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞している名優で、特に私の心に鮮烈な印象として残っているのは、やはり「男と女」ですね。 ドロンは相手役に「さらば友よ」でチャールズ・ブロンソン、「ボルサリーノ」でジャン・ポール・ベルモンドと競演したりと、自身の美貌をより引き出す術をよく心得ているんですね。そして、そのような大物俳優と競演する時のドロンは、相手役の俳優に必ず華を持たせて、自分は若干引いた感じの演技をするところが、またドロンの凄いところだと思いますね。 そして、この映画の最大の見どころは、やはりラストのクライマックスのシーンですね。郊外のレストランを舞台にした逮捕のシーンは、まさにピーンと張りつめた緊張感の中で繰り広げられ、意外やジャック・ドレー監督の抑制した演出が際立っていたと思います。 それにしても、1940年代のパリの街のたたずまい、クラシック調の車、トレンチコートを着た粋な男たち。フランス映画らしい雰囲気も漂わせ、何かレトロな雰囲気も味わえるんですね。このあたりは、やはりハリウッド映画とはちょっと違うフランス映画らしいエスプリ、お洒落な感覚もあり、実にいいムードなんですね。 【dreamer】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-08-11 09:34:08) |
14.実話感があまりなかったですがそれなりに面白い映画でした。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-10-01 20:11:54) |
13.この悪役はどうみても冷酷で格好良いはずなんですが、どうして作品自体はこうも単調で面白くないんだろうか?まあ、見せ場の犯行シーンも、繰り返されると新鮮味がなくなるのと、あと、肝心の刑事の方が、それを上回るべき知能や戦略や努力の跡を見せていない(見せるように作られていない)んですよね。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 3点(2014-07-11 02:20:45) |
12.凶悪犯ビュイッソンを追うボルニッシュ刑事の姿を描いた作品、とくればいかにも典型的な刑事モノを想像しますが、実際に観て受ける印象は、ちょっと異質。犯人側と刑事側がほぼ均等に描かれていて、とは言っても『ダーティハリー』で映画の視点がハリー側になったりスコルピオ側になったりしたのがストーリー上の要請(要するになるべく盛り上がる描き方をしたらそうなった)だったのに対し、本作では、両者を並行して描くことそのものを主眼においています。で、ボルニッシュ刑事はあくまで常識人で、普通の人間らしく様々な感情を持ちつつもそれを抑制している。演ずるアラン・ドロンも比較的抑え気味で、どちらかというと彼を取り巻く人々との関係を主体的に描きながら、ボルニッシュ刑事自身の苦悩をジワリと表現してます。その一方で、ジャン=ルイ・トランティニャン演じるビュイッソンの、トンデモない冷酷さ。この男、殺人鬼としかいいようのない容赦の無さで、しかもただの無謀な乱暴者という訳ではなく、独自の行動規範と冷静さを持った男、要するに社会一般通念から見れば、規格外の怪物。身近にこんなヤツがいたら困りますが、映画として見れば、カッコいいのはボルニッシュよりもビュイッソン。そんな常識人と非常識人が対決するクライマックス、地味だけどシビレます。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-06-30 23:05:40) |
11.みとれてまうわぁ、ストーリーがきちんと入ってこーへん。。たばこ吸いすぎと思うけどな、いまやと考えられへんやろな。余談はここまでにして、実話いうからには驚きました、冷静に考えると警察も危ない橋渡っていますね。 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-01-04 17:27:27) (笑:1票) |
10.《ネタバレ》 カタギの仕事についてるアラン・ドロンは少なく、しかも刑事。 緑色のコートをまとうロジェ・ボルニッシュは刑事にしては穏やかな人、兄をゲシュタポの拷問で失ったため部下が容疑者を痛めつけるのを許さぬ寛容さをもつ。 だが連続強盗犯エミール・ビュイッソン(ジャン=ルイ・トランティニャン)逮捕には静かなる闘志を燃やす。 起伏の少ない作りだが、犯人逮捕の遅延に業を煮やし部下を焚きつける部長がアクサン。 無闇に人を殺しまくるビュイッソンにはとても同情できないけれども、彼にも音楽を愛する心があってそれが命取りとなるのが僅かばかり人間味を感じさせる。 取り押さえられた時、反射的にカトリーヌ(クローディーヌ・オージェ)を見やるビュイッソン。 「お前もか」という眼差しが痛い。 凶悪殺人犯の警戒心を解く役を自ら買って出るほど度胸のあるボルニッシュ夫人は眉一つ動かさないが、内心まではわからない。 弱みにつけこみ騙したとの良心の咎を微塵も感じなかったならば、彼女もまた冷血ではあるまいか。 逮捕後1年余に及ぶ聴取でも犯人を人間らしく扱う刑事に捕らえられたビュイッソンは幸運な男かもしれない。 パジャマにスリッパのドロン、美しきオージェ、そしてピアノに耳を傾けるトランティニャン。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-08-15 09:01:38) (良:1票) |
|
9.主演のアラン・ドロンの聴取担当刑事の力演を互角以上に渡り合ったジャン・ルイ・トランティニアン。「男と女」で見せた優しさのかけらの微塵もないほどの情け容赦のない冷血犯をが好演。この男ピアフの曲が好きというところはフランス映画らしくて面白い。 【白い男】さん [地上波(字幕)] 8点(2011-08-02 12:07:34) |
8.《ネタバレ》 刑事ものとしては面白みに欠ける。悪者の方がドラマがあった気がしたのでトランティニャンにスポットを当てたマフィアものの方が面白そうだ。ビュイッソンはあれほど無慈悲で残酷な救いようがないワルだったのに、捕まって死刑になったときどこか物寂しい感じが残ったのは意外だった。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-08-02 00:30:51) |
7.《ネタバレ》 昔、試写会で鑑賞しました。当時の印象はけして良いものではありませんでした。ドロンに老いを感じたことや、激しい銃撃戦を期待したのに地味な内容だったとか、逮捕シーンが盛り上がらなかったとか、マイナスの理由がいろいろあったからです。この度テレビで再度鑑賞しましたが、腰を落ち着けてじっくりと見たところ、なかなか良い映画だと思い直した次第です。時代背景を含めて、作品をしっかり作り込んであることに改めて気付かされました。ジャン・ルイ・トランティニャンの悪党ぶりが素晴らしいですね。 【ジャッカルの目】さん [試写会(字幕)] 7点(2011-07-16 00:40:45) |
6.数十年ぶりにDVDで観ました。 ずーっと心に残っていた映画ですが今観てみるとそれほどでもなかったです。 でも思い出こめて7点! 【KINKIN】さん [DVD(字幕)] 7点(2009-05-31 19:48:57) |
5.盛り上がりのない映画ですね。みなさん おっしゃる通りトランティニャン氏の演技が光りますが、それだけという印象。 【くろゆり】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-03-31 10:17:03) |
4.アラン・ドロンは私にとってやっぱり特別な人。いちばん最初に覚えた海外のスターです。中年になり渋さを増したこのころのドロンは最高。これは中学の時、友だちと見に行きました。当時はジャン・ルイ・トランティニャンのことは知らなかったけれど、印象に残りましたねえ。やはり潜伏先の食堂のシーンでは盛り上がりました。ピアノを弾くクローディーヌ・オージェの横に立ち、じっと聴き入るトランティニャン。たしか何か言葉を交わしたと記憶してます。一瞬人間らしさを取り戻したようないいシーンでした。昔は民放の洋画番組で、よくアラン・ドロンの特集をやってたっけ。BSあたりでそろそろこれを放送してほしいなあ。 【envy】さん 8点(2004-09-09 00:45:26) (良:1票) |
3.今どきの映画に比べると、テンポはゆっくりだし過激な描写が無いので退屈する人もいるかも知れない。私はアランドロンのファンなので、彼が出てるというだけで高得点です。この作品では、悩める刑事役を演じているが、さすがアランドロンといった感じでかっこ良い。画面に映ってるだけで、絵が締まる。こういった俳優、もう出てこないんですかねぇ。 【べんちゃんず】さん 8点(2004-04-20 02:10:03) (良:1票) |
2.「ドロンって本当に学習能力に欠ける俳優だナァ…」とつくづく痛感させられる作品。何がかって?勿論、共演俳優にオイシイとこ総取りされて喰われまくりってトコ。過去に「さらば友よ」「ボルサリーノ」「レッド・サン」等々のイタイ例があるにもかかわらず、だ。本作では選りによってバリバリの演技派男優ジャン・ルイ・トランティニャンを共演に迎えた。「地味なコイツになら勝てる!」とでも踏んだのだろうが、生憎そうは問屋が卸さなかった。この勝負、どう見てもビュイッソン役のトランティニャンがボルニッシュ役のドロンを圧倒している。凡庸な職人ドレーの演出は愚直に(プロデューサーの)ドロンを贔屓しまくっていても尚、こうなのだから相手が悪過ぎたのだろう。得点の殆どもトランティニャンの静かな凄味がもたらしたものと思って頂いて差し支えない。 【へちょちょ】さん 7点(2004-01-20 01:11:19) (良:1票)(笑:1票) |
1.物悲しい雰囲気で物語が進んでいき、戦争の影が作品自体に重い印象を与えていました。彼の作品では「殺しが静かにやってくる」を見た後だったので、少し寡黙な彼に好印象を覚えました。 【あつお】さん 9点(2003-12-31 11:10:23) |