1.パリを舞台に、アメリカの外交官の娘とGIのロマンスを描くラブ・コメディ。オリビア・デ・ハヴィランドは、“娘”というにはトウがたち過ぎている感もあるけれど、なんの十分チャーミングです。お相手のジョン・フォーサイスも、無骨だが純情な兵士にハマっているし。そして、いささか地味なこの2人をもり立てるマーナ・ロイやアドルフ・マンジューほか、名優を揃えた助演陣がなかなかの充実ぶり。ああ、ハリウッド黄金時代の息吹きを伝えてくれる、小品ながら「贅沢感」を与えてくれる作品といえましょう。…ヒロインは、自分をパリの売れないモデルと偽り(それにはちょっとした理由があり…)、そのため、彼女が父親の知り合いの上院議員と一緒にいるところを目撃したGIは、彼女のことを“金持ちのジジイに取り入るとんだ食わせ者”と勘違い。このあたりのスッタモンダも、今の眼で見たなら馬鹿馬鹿しいほどたわい無いと映るんでしょう。が、ここにはまだ世界も映画も今より“単純”だった時代の「幸福感」が、香っている。まだまだたわい無いことで笑ったり泣いたりできた頃の、まったりとした「空気」に満ちている。たぶん、本作が作られた1956年当時にあっても、そういった「幸福感」や「空気」は、もはや“時代おくれ”になりつつあったのでしょう。しかし、脚本・監督の大ベテラン、ノーマン・クラスナー(『ホワイト・クリスマス』などの脚本家として著名)はあえてそういったアナクロニズムを恐れることなく、この、ただただ上品でアンティーク(骨董品的)な、言葉の正しい意味での「恋愛喜劇」を作り上げた…。確かに『ローマの休日』や『麗しのサブリナ』等の名作とは比べるべくもない映画だけど、こんな現代を生きざるを得ないぼくという人間に、つかの間の“古き良き”慰安を与えてくれました。点数は「7」だけど、ぼくはこの映画を愛しています。