17.《ネタバレ》 秀子ちゃん姑と文ちゃん嫁(実は役者は9歳しか違わない)は、ギャーギャー対立するわけではなく、微妙な距離感を保ちながら、反発したり、時にはひっそり共感したりする。こういうところは、今日の映画制作でも見習ってほしいところです。そして雷蔵の青洲は、妻と母から「是非私で実験を!」と迫られると、断固拒否するかと思いきや、あるは深く思い悩むかと思いきや、ちょっとくらい駄目とは言うものの、割とあっさり了解している(この押し引きの呼吸が絶妙)。こういうところは、今日の映画制作でも見習ってほしいところです。安直な演出だったら、ここぞとばかりに言い合いが展開したり、青洲の種々のアクションを入れてみたりするはず。そうじゃないからいいのです。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-04-16 01:21:29) |
16.個人的には、日本映画で大好きな役者三人(雷蔵、秀子、あやや)が、出てるので、評価点はもう少し上になるはずなのだが、もう一歩ダメだった。各人、演技は申し分ないのだが、何かなあ。アンサンブルが悪いのか。テーマが好みでないのか。映画としては、嫁姑問題というより、一人の男を争う女二人と見ていた。まるで、フランス映画(トリフォーの映画)みたいに。そう思いません? 【にけ】さん [映画館(邦画)] 6点(2018-12-22 23:31:39) |
15.《ネタバレ》 傍目には良好な関係を築いていたように見えた於継と加恵が、映画が始まって30分近くなってようやく青洲が登場した途端に息が詰まるようなバトルを始めるところがまた強烈。雷蔵・若尾文子・高峰秀子の壮絶な演技合戦は、もうこれは必見としか言いようがありません。高峰秀子がこんなに怖い女を演じてたなんて今まで知りませんでした、ほんと迂闊でした。華岡青洲という人は努力の天才でエゴイスト、そしてマッドサイエンティストだったんだなと言うことが良く判ります。 新藤兼人の脚本に冷徹な増村保造の演出なんだから、そりゃあ凡庸な映画になるわけがありません。麻酔が効き始めて悶え苦しむさまや二度の出産シーンなど、こういう題材でもきちんと若尾文子のエロティシズムを見せてくれるところは増村保造ならではです。そしてマンダラゲの畑の中に若尾がすうっと姿を消してゆくラストカットがまた素晴らしいんです。 昭和の女優の底力を堪能させてくれる一本です。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2014-10-24 22:29:22) |
14.《ネタバレ》 市川雷蔵、高峰秀子、若尾文子、伊藤雄之助、浪花千栄子と、名前をながめているだけで気持ちよくなってくるような豪華キャスト。 見所の一つはやはり高峰秀子さんと若尾文子さんの関係性。 これは中々一口で語るわけにはいかないものでして。 尊敬もありお互いに愛情もありつつ、医者の家の女として争い、嫁と姑としても争い…。 一筋縄ではいかない人間模様を描いています。 冒頭しばらくは本当に幸せな世界なのに、市川雷蔵が家に帰って来ると同時に、よーいドンという感じでねちねちワールドが始まります。 中盤、一つのクライマックスとも言える人体実験を申し出る妻と母の激しい争いのシーンで。 それを仲裁する市川雷蔵扮する華岡青洲が怒る理由が、自分の麻酔薬に対する信頼性のなさからのものだったり。 後半、妻の出産と手術が重なって、どっちも無事に成功するのですが、出産後の妻にひたすら自分の手術の成功だけを喜び、語っていたり。 そういった「初めて全身麻酔による手術を成功させた医者」としての人物造形も面白いです。 冒頭ですが人生二度目となる於継(高峰秀子)と加恵の出会いのシーンの演出がまるで運命の出会いのようで大好きです。そのシーンの音楽が特に素晴らしい。 そしてこの作品における美術。これは溝口健二監督の後期の傑作郡を助監督として支えた宮嶋八蔵さんの仕事。その徹底した仕事ぶりが素晴らしいです。髪型から小道具から生活用具から嘘のない世界を作り上げています。 助監督としてクレジットされています。 それにしてもあの猫ちゃんたちはどうしたんでしょう… 【大経師】さん [DVD(邦画)] 9点(2014-08-14 13:20:51) |
13.《ネタバレ》 世界初の全身麻酔手術の成功を支えた嫁姑の物語=それは女としての確執から生まれた偽りの「美談」であった。監督増村・脚本新藤なので高峰秀子と若尾文子(様)のバトルはもちろん凄まじい。ただそれ以上に私には華岡青洲を演じた市川雷蔵が印象に残り、極私的彼の演技ベストファイブに入れても良いと思う。『夫に尽くすという事・理想的な妻/母であるという事は時として夫の「我が侭/エゴイズム」に女性がしたがっているだけであって、そこには女性としての幸せや生きる意味はない=女性に隷属を強いる男の狡賢さ』という(私Nbu2が考える)有吉佐和子原作小説の主題を見事に体現している演技だから。リメイクにおける竹脇無我や三浦友和、最近の谷原章介は単に「麻酔研究に情熱を燃やす医学者」華岡青洲であって、そこに雷蔵が示した「理想や成功の為に妻や母を犠牲にしたエゴイスト(しかもそういった嫁姑の協力に甘えている?という感を出すのがまた凄い)」華岡青洲は、見えない。母親於継の死がナレーション(補足:杉村春子は文芸座でこの於継役をもち役としてます。)のみで片づけられたのも青洲の名声にとっては小事でしかない+女主人の座を得た様に見える加恵も最終的にはそんな小さな扱いで終わってしまう、という意図を込めてるのでしょう。うだうだと書いてしまいましたが少なくとも最近のリメイクよりはこっちの方が迫力等上。機会があればぜひ堪能してほしいのし! 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-06-13 21:39:33) (良:2票) |
12.《ネタバレ》 何年も前に新薬被験者の登録をした時に、随分といろいろな妄想と、戦ったことを思い出す。もちろん、現在の試験は安全なのだろうけれど。 そう考えると、麻酔という技術が、半ば伝説としてしか無かった頃に、失敗したら死ぬかもしれない実験に、体を提供するのは、並の精神力ではない。 世界初の全身麻酔、と言う部分にはもちろん興味深さはある。しかし、スゴイと思うのは、母と嫁の被験者競争だ。子を溺愛して嫁に意地悪をする母、というのは、物語や幾人かの知り合いの話などで、聞くことはあるが、その張り合いが人体実験にまで及ぶというのは、大した狂気だ。 この部分の、二人の狂気的な張りあいを見ると、人間の一念、思いの強さ、を恐ろしい思いを持って観てしまう。と、同時に、顔も見ずに嫁入りし、新婚生活をも姑にコントロールされてなお、人体実験を申し出る、お武家さんとは、大したものだとも思う。 その人は、医者の家の美しい女将さんに憧れて、そこに嫁入りし、その美しい姑にいじめられ、さやあてのように被験を申し出る。まさしく「美しい花には毒があ」ったけど、そのおかげで「毒薬変じて薬とな」ったという、ことわざ通りのお話なわけだ。そういう意味では、これは『華岡青洲の母』でもあった話かもしれない。 【Tolbie】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-10-22 22:59:56) |
【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-02-04 22:44:01) |
10.見応えありましたのし!!今では当たり前のように、あらゆる治療に用いられる麻酔薬ですが、身内による決死の覚悟での人体実験あっての賜物で、この時代の医学においては画期的な発明でありました。テーマとなっている嫁と姑の関係ですが、これだけは今も昔も同じで仕方のないことです。 【白い男】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-09-21 00:09:22) |
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9.《ネタバレ》 華岡青洲という人は知れば知るほどすごい医学者だ。なぜこれほどまでの人の存在を、学校で教えられなかったのだろうかと不思議に思う。 いくら医学を学び、手術をするのに麻酔が必要だとしても、「麻酔」という言葉すらなかった時代である。麻酔薬を調合して作ってみたところで、人体で実際に使ってみなければ効果はわからない。それを嫁が、母が、「是非私に」にと申し出て競い合う。一つ間違えば命すら保証できないというのに・・・。 このあたりの感動というか、感想というか、私は言葉でうまく表現できない。それほど強烈である。何事も初めて物事を成し遂げるということは、とても勇気が必要とされよう。手術を行った青洲も、実験台になった嫁も母も・・・。 じつに見応えのある映画だと思う。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 8点(2011-05-08 12:53:51) |
8.《ネタバレ》 先日観た成瀬の「娘・妻・母」での高峰秀子VS原節子のバトルは、自分としてはかなり消化不足だったので、今回は若尾文子との唯一のバトル作品をチョイス。こりゃ凄いわ・・・全編息をつかせる暇もなく、堪能させてもらいました。両実力派女優二人が、それぞれ受けの芝居、攻めの芝居を攻守交替しつつ、存分に演技合戦を楽しんでいるっていう感じ。このお二人にかかっては流石の青洲=雷蔵氏も影が薄い。初めて息子青洲と寝床を共にする嫁加恵(若尾)を見送る、横たわる母於継(高峰)の嫉妬の視線の怖い事怖い事・・・。基本的にエゴイストなこの息子を間に挟みさえしなければ、この嫁姑二人結構ウマがあったんじゃないかと思わせるところに宿命的な悲劇を感じますね。少女時代からの憧れの人に見込まれた時の歓び、やがて嫁として肩を並べ、追いつき追い越していく女の成長を的確に演じる若尾文子ももちろん申し分ない。後半の「私を、いいえ私を使って!!」と人体実験を雷蔵氏に二人が申し出るシーンがこの映画のクライマックス。その後の於継の慟哭も含め、凄まじい葛藤シーンの連続。ひとつだけ残念だったのは、於継が亡くなるシーンがなく、何故かナレーションだけで済ませてしまった事。これを描かなかったのは片手落ちだったのでは?於継臨終シーンでの加恵との最期のやり取りが観たかった。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-03-01 11:04:52) (良:1票) |
7.出だしからいかにも文芸作品!って感じがして、なんとなーく重ーい空気が最初から最期まで充満してて好みではないのだが、屋内シーンがほとんどの中、登場人物それぞれの顔に当てられる照明が抜群に良く、とくに高峰秀子と若尾文子のツーショット時のそれは白眉。モノクロだからこの強い光が映えるわけだが、増村監督のモノクロ作品の中でも随一ではあるまいか。嫁姑のけしてあからさまではない激しい戦いは市川雷蔵と同様に見て見ぬふりをしたいのだが、一種崇高さをも漂わすその戦いぶりと、その時代の女たちの悲しすぎる宿命には目を見張らずにはおれない。増村に抱く勝手なイメージだともっと泥臭いドラマ(良い悪いは別にして)を想像してしまうのだが、この作品でちょっとイメージが変わった。ちょっとだけね。 【R&A】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2007-11-01 13:41:52) |
6.高峰秀子と若尾文子のバトルは、聞きしに勝る壮絶なものでした。 市川雷蔵はトップクレジットながらやや控えめな役どころを巧く演じていました。 ただ、他の作品で見られた様な雷蔵のかっこよさは本作では観ることができませんでした。 そこが残念です。 どうしてなんでしょうか。 髪の毛がボサボサという設定が悪かったのか、それとも役どころが地味過ぎたのか?! 雷蔵ファンの私としては、理由はともかく残念で仕方ありません。 しかし若尾文子は、やはり健気に尽くす妻役を演じると、右に出るものはいませんね。 ただ真面目な妻になるのではなく、そこにエロティシズムまで浮かばせるのが凄いの一言です。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-10-23 22:43:15) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 もう直ぐ10月2日、世界で最初に全身麻酔の薬を作り、乳がんの手術を成功させた一人の男、華岡青洲の命日てことらしいけど、そんな訳で借りてきた。これは本当に物凄い女と女の戦いだのし!我が息子を愛するためにと息子の実験台になろうとする母、そんな母に対して自分こそ実験台にと訴える嫁、この二人の戦いが壮絶!の一言ではとても済まされないのし!とにかく主演の二人の女優、高峰秀子と若尾文子の演技が凄いでのし!大石先生とはまるで別人の如く、どこまでも嫁に対して厳しく接する姿には人間として、母親としてのプライド、嫁の加恵(若尾文子)への嫉妬、これは間違いなく女同士のバトル!しかし、そこにあるのは単なる嫉妬を超えた愛情の裏返しとでも言うべきか?二人の演技の凄さも当然のことながら市川雷蔵もこれまた素晴らしでのし!すいません!のしって言葉が頭から離れなくなりそうです。ひたすら医者としての使命を全うし、目的のためなら容赦なしに二人に薬を飲ませて実験を行なうというその凄まじさ、冷酷さ、こういう冷酷な人間こそまるで男の身勝手さを表しているようで、女の愛情だけでなく男の身勝手な部分まで同時に描ききるという恐るべき演出、それにしてもあの薬の実験によって、酔っ払ってしまった猫、あんな映像を容赦なしに描く。それこそ増村保造っていうこの監督の凄まじさを感じる。好き嫌いはともかく人間の持っている悲しさ、身勝手さというものを何だか見せつけられてしまったみたいで、とにかく色々と考えさせらる凄い映画だ!一度は見て損のないそんな作品だと思います。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-09-28 21:53:55) (良:3票) |
4.10月2日は青洲氏の命日である、とパネルクイズぅ25ぉ~で出題されてて思い出しました。 200年近く?も前に麻酔薬の研究開発がされていたとは、もう驚きやのしぃ・・・(←エセ紀州弁)。 嫁姑、そして妹たちまでもが青洲の為、お家の為に自ら尽くす姿には同性として実に 共感が持てます。目的を果たせるなら他の何かを失ってもいい!という気持ちはよくわかりますんやよし。(←エセ紀州弁) 姑(高峰)が息子夫婦に対して、静かに嫉妬泣きするところ、激しく悔し泣きするところ、この2つの泣き場面がもっとも印象に残っています。 でも私が一番上手いんじゃ?と思たのは役得:妹の渡辺美佐子でして、兄嫁(若尾)に投げかけるセリフが冷静なようで実は青臭く、負け惜しみの哀れさが伝わってきたように記憶しております。 雷蔵氏は・・どうやったかなァ? 居並ぶ演技派女優陣に若干圧されていたような、、 でも言い換えれば研究一途な学者を嫌味なく演じてた?かも・・(忘れた)。 いや、ちょっとイマイチやったかな、、ファンの人いてはったらごめん、、いるの? あ、確か、、(笑)。 新妻の感部(=ちぶさ)を掴んでいた青洲が、クライマックスでは患者の患部(=にゅうぼう)に挑んでいるというところがいいですねっ。 嫁姑バトルは一見嫁の勝ちに見せかけて実はほぼ互角だと思うけど、 興味あるおなごはんはぜひ観よしー。 【かーすけ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2005-10-03 00:18:18) (良:3票) |
3.市川雷蔵が主役の映画かと思いきや、嫁(若尾文子)と姑(高峰秀子)のドロドロしたバトルが中心で、雷蔵はあくまでも重要な脇役という位置づけ。(一応、クレジットではトップだけど。)でもなかなか見応えのある内容で満足することができた。最初のシーンで手術を受ける患者のあまりにも痛そうな絶叫が忘れられない。 【イニシャルK】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2005-08-08 23:31:28) (良:2票) |
2.奥に若尾、手前に高峰が枕を並べるシーン、パンフォーカスで撮られた二人の表情、その冷ややかさには一瞬フィルムが凍りついたような錯覚を受ける。背を向ける高峰を射抜くほどの若尾の視線、若尾には一切目をやろうとしない高峰の視線、この視線の交わらなさがセンチメンタルを排除し、嫁と姑の底流に流る意地を謳いあげる。白く美しくも毒のあるマンダラゲの花畑を、嫁にとっては美しくあこがれの人であった母になぞらえ、好評や美談の危うい脆さを画面に露呈させながら人間の本質へ迫る増村保造の渇いたタッチはここでも健在である。 【彦馬】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-04-14 00:37:21) (良:3票) |
1.今まで息子を思うあまり自らの体を差し出す母、愛するあまり体を捧げる妻という単純な思いを描いていたが、そんな生半可なものではない本物の嫁姑バトルでした。その根底は家名を守るための保身であり、家名を上げるための名誉であり、全ては”家”のためという世間体を重んじる日本古来の封建的な一家のまさに血みどろの戦い。妹・小陸が兄・雲平を激しくなじる言葉が全てであり、男のズルさを端的に現している。見るからに気の強そうな若尾文子がぐっと堪えて耐える様、一見温和そうな高峰秀子が厳しく嫁に当たる様は身震いするほどの迫力がありました。 【亜流派 十五郎】さん [ビデオ(吹替)] 9点(2005-04-05 22:32:40) (良:3票) |