14.《ネタバレ》 これは……判断に困る一本ですね。
まず、面白いか否かで言えば面白いです。
音楽の使い方やカメラワークなども洗練されているし「夜中に二人きりでブランコを漕ぐ場面」など、ロマンティックな要素もしっかり備えているしで、ラブコメ映画としてのクオリティは高かったと思います。
でも、脚本に納得がいかないというか……ハッピーエンドなんだけど(本当にハッピーエンドで終わって良いのか?)っていう疑問符が浮かんできちゃったんですよね。
ラストにて、主人公のジェナは「悲惨な三十歳」の世界から「可能性に満ちた十三歳」の世界に戻り、親友のマットと結婚して「幸せな三十歳」になる事に成功する。
けれど「悲惨な三十歳」の世界でも、ジェナとマットには恋人がいた訳で……彼ら二人が完全に放ったらかしなのが、どうも落ち着かない。
彼らが「嫌な奴」だったとか、彼らのせいでジェナ達は不幸になるとか、別にそういう訳でも無かったので(あの二人が可哀想だなぁ……)と思えちゃって、結婚した主人公達を素直に祝福出来なかったんです。
そもそも、本作において自分が一番好きなのは「過去に戻ってやり直したいと訴える主人公に対し、母親が優しく諭す」場面であっただけに、あのラストには本当にガッカリしちゃったんですよね。
「沢山の間違いを犯してきたけど、一つも後悔はしていない」
「間違いを犯さなきゃ、それを正す術も学べなかった」
という母の台詞は本当に良かったですし、主人公も「今の自分」を受け入れて、そこから前に進む話になるんじゃないかと予想していたんですが……
観賞後は(結局、元に戻ってやり直すのかよ!)とツッコむしか無かったです。
ストーリー上、元いた十三歳の世界に戻るのは止むを得ないにしても、そこはせめて三十歳の世界である程度の決着を付けてから戻るべきなんじゃないかと。
他にも「主人公が三十歳になりたがる動機が弱い」「同僚の旦那と不倫していたんだから、その事を謝罪する場面も欲しかった」とか、細かい不満点も多いんですよね。
マットに酷い態度を取るシーンなどが原因で、序盤から主人公に感情移入しきれなかったのも痛かったです。
十三歳のベッキーと友達になってパジャマパーティーを開いたり、十代の男の子にときめいて誘ってみせたりと「見た目は三十歳だが、中身は十三歳」という設定ならではの面白さを感じる場面が、ちゃんとあった事。
見た目が冴えなくて、ラブコメの彼氏役にしては華が無いマットを、ちゃんと魅力的に描いている事など、要点は押さえた作りになっているだけに、勿体無かったですね。
面白いし、楽しい映画ではあるんですが、それ以上に色んなモヤモヤが残ってしまう映画でありました。