8.《ネタバレ》 「もっと上手くできたんじゃないのかなぁ」というのが率直な感想。戦没兵の遺書を遺族へ届ける為、日本各地を旅する男を渥美清が演じたロードムービー。役者渥美清が映画化を熱望し、個人プロダクションを立ち上げてまで作品化した意図は明白。復興に沸く社会の光が届かない、戦争の影や闇に未だ苦しみもがいている人達に焦点を当てるなんて題材は戦後四半世紀が経ち、少しずつ記憶が薄れつつあるこの時期だったからこその上映だったんだろうな。がこの作品、評論家からは酷評・興行的にも失敗。渥美清にとってはこの映画の失敗によって、役者スケジュールを「年2回の寅さんと松竹大作へのゲスト出演」にシフトし、観客の求める「寅さん(もしくはそれに近いキャラクター)」に専念する事を決定づけた1本になっちゃったと自分は思ってる。70年代は戦争体験者が社会構成上まだ多かったであろう時期、「戦争がもたらす悲劇」を描くのはリアル過ぎると不快を覚える観客もいたろうし、といって現実から離れた絵空事みたいに描けば作品を世に出す意味は薄れる。個人的には最近の調査で「太平洋戦争下における兵士の死亡原因の6割は飢餓・もしくはそれに伴う戦病死である」旨を知っている分だけ、その背景にはもっと奥深い、闇の深淵が広がってる題材と思うのだけどすべてを映すのには限界があり、その点が自分の感じる「もっと上手くできなかったのか」につながる。(同じ1972年に深作欣二が東宝で「軍旗はためく下に」を先に上映してるのも大きい)NHK等のドキュメンタリーでも「届かなかった兵隊の遺書」テーマは扱う様になってはいるがそれでも90〜2000年代。やはり早すぎた企画だったんだろう。この映画のポイントは「渥美清の役歴上、もっとも陰のある役柄」。世評では「拝啓天皇陛下様(’63)」などが挙げられるが個人的にはこっち。この題材こそ現在リメイクしてあげるべき、なんだろうな。機会が有れば。 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 7点(2023-01-28 12:25:06) (良:1票) |
7.《ネタバレ》 復員兵が戦友の遺書を配って歩く話なのだろうな、と思いながら見始めたら、最初の小川真由美との絡みが妙に長い。何だこれは、と思っていたら、それが本筋にすっと絡んでくるトリッキーさ。そして本題の遺書配達では、一番ぞくっとしたのは、倍賞千恵子や市原悦子のパートのように、「結局たどり着けない」部分をきちんと盛り込んでいること。そう、全部が全部たどり着けたら、それはおかしいというか、都合良すぎるよね。それから例えば、いざ配達できても、相手先からは感動とか涙とか感謝のリアクションは全然ない。このトーンの統一も、作品に気品と節度をもたらしています。一方で、最初は進駐軍放出鍋の街頭販売を一緒にやっていながらその後着実に出世していく財津一郎が、いい感じのアクセントになっています。●作品としてのキズは、輪島のパートで主人公が突然正義の味方になってしまう点かなあ。この部分だけ、急にテンションが高くなって浮いています。ここは、真実はあくまでも灰色の向こう側にしておいて、それでも長山藍子はすべてを飲み込んで江原に寄り添っていく、とかの方が心理の綾が出たのではないかと思います。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 7点(2021-05-12 00:34:33) |
6.これといったドラマはないけど、「手紙が重い」とか、終戦後の残された家族の様子が生々しく描かれていて印象的。渥美清の誠実な役柄も良かった。 【noji】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2014-12-31 11:38:30) |
5.《ネタバレ》 所属していた部隊でただ一人生き残った男が、復員後、亡き戦友たちが書いた最後の手紙をその親族に渡すために全国を渡り歩く姿を描いた今井正監督の反戦映画。今井監督の「喜劇 にっぽんのお婆ちゃん」に脇役で出演していた渥美清が企画の段階からかかわり、主演した作品で、この頃、「男はつらいよ」シリーズで人気を得ていた彼の寅さんだけではなく俳優としてもっといろんな役を演じてみたいという意欲が感じられる作品となっていて、コメディータッチのシーンは一切なく、非常にシリアスな展開で、今井監督らしいメッセージ性の強い力作で、映画としては佳作といっていい出来。しかし、春川ますみや財津一郎、松村達雄など「男はつらいよ」シリーズでも何度か見かける面々が何人か出ている(倍賞千恵子も出てるし。)こともあってか、渥美清のシリアスな演技に妙な違和感を感じてしまうのも事実。確かに今井監督はこういうテーマの映画にはうってつけの監督で、さっきも書いたように見ごたえのある力作に仕上げているし、これも繰り返しになるかもしれないが、寅さんのイメージを打破したかった渥美清の意欲も分かる。だがもし、今井監督でなく、野村芳太郎監督や山田洋次監督など渥美清と付き合いの深い監督がこの映画の監督だったら、この映画の印象はまったく違うものになっていたかもしれないし、なによりも渥美清という俳優の持ち味がもっと発揮される映画になったかもしれない。見終わってついそんなことを考えてしまった。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-03-14 14:00:31) (良:1票) |
4.寅ちゃんにしては、えらいシリアスやなあ・・・。 【ケンジ】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-01-26 22:42:37) |
3.寅さんシリーズを見始めた頃、この映画と出会った。「家族」「故郷」などの映画にも出ていた渥美さんだが、これらの映画は倍賞さんが主役で渥美さんはちょい役だった。 しかしこの映画は渥美さんが主役、寅さんのイメージしかなかった私には、新鮮だった。 映画は渥美さんが、戦友の遺書を届けてまわる物語だが、実にシリアスだった。託された思いもさまざまであれば、受け取る側の境遇もさまざま、喜ばれたりありがたがられたりするものばかりではなかった。そのあたりに戦争の残した傷跡を見ることができる。戦争は人の運命を大きく変えてしまうものだった。 【ESPERANZA】さん [映画館(邦画)] 7点(2011-09-29 09:17:34) |
2.寅さんこと渥美清の命日にあたる2012年8月4日の昨日改めて再見!以前観た時はあまり面白く感じられなかった。今回再び観てもそれほど面白いとは感じない。しかし、何だろう?俳優渥美清という人の演技を観るとこの人の演技は演技というよりもまるで渥美清そのものが映画の主人公のように思えてきてならないのである。要するに演技していても演技していないような錯覚を覚えずにはいられなくなる。この映画の渥美清演じる男には他の渥美清、寅さんで見られるような哀愁漂うものが感じられない。それだけに何か歯痒い。それは監督が山田洋次監督でないからかもしれないし、喜劇と悲劇は紙一重という言葉があるとすればこの映画には悲劇的要素はあっても喜劇的な要素なんて全くない。だって監督がシリアスな映画ばかりの今井正監督だからというのもあるであろう。「青い山脈」というユーモアの効いた青春映画も撮ってはいても今井正監督と言えばどうしてもシリアスな映画というイメージが離れない。イメージという意味では渥美清の持つイメージからは想像出来ない映画として印象に残る映画です。好きとか嫌いとか面白いとか泣けるとかいうような映画ではないけど、それでも一流の監督によって一流の俳優が一流の演技によって見応えある映画になっている。改めて渥美清がいない現在の日本映画における大きな損失を感じたまま観終わった。寅さんのようにまた見たい。何度も見ては笑い、泣き、共感出来る映画でないけど観るに値する映画としていつまでも心に残りそうなほどの映画です。もし、この脚本のまま山田洋次監督が撮っていたらどうなったかなあ?全く違う映画、良い意味での別の映画になっていたかもしれないし、いやいや、やっぱり今井正監督で良いのかもというような気持ちにもさせられる。 (2012年8月4日再見) 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-09-21 11:54:41) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 戦争に翻弄される人たちの姿を、遺書を配達する男を通して描いている作品です。渥美清主演ですが、喜劇では無く非常にシリアスな作品になっています。 何というか、一つ一つのエピソードが非常に物悲しく、そこに小室等の哀愁漂う音楽が上手くマッチしてるんですよね・・・・・・。 声高に反戦メッセージを叫んでいるわけではありませんが、非常に戦争とは何かということを考えさせられる作品でした。 【TM】さん [地上波(邦画)] 8点(2007-01-10 20:59:29) |