1.《ネタバレ》 冒頭、田宮二郎扮する桔梗というこれまた頭の中は金儲けのことしかないようなこの男に対して(何故、この男、田宮二郎の桔梗という男が金儲けのことしか頭にないか?てのは見れば解るし、最後に明らかになります。)買収を持ちかける腹黒い性格の持ち主である加東大介(中江)の何とも金に埋もれた人間の欲望丸出しの男と男の会話、やりとり、買収を持ちかけられた方の男が一人の若い美人秘書であり、船越英二扮する公団専務理事(財津)の二号さん(愛人とでも言うべきか?)の藤由紀子(田丸陽子)と組んで加東大介を主とする他の男、船越英二とその父親というべき存在の石黒達也(工藤)の三人に対して逆にゆすってやろうと色々なことをするのだが、お金の為なら初めて会ったばかりの男とも女はベッドを共にさせるという何ともこれまた如何にも増村監督らしい演出が所々に見られる。増村映画に出てくる女は何を考えてるのか全く読めない。解らない。この映画でも藤由紀子の田丸という女の正体、本心がなかなか読めないのである。どこまでもえげつなく腹黒い加東大介と田宮二郎の対決は金と地位の為に犯罪を隠す為に女を殺す加東大介の中江の逮捕により田宮二郎(桔梗)の勝利というように描かれてはいるが、田宮二郎の桔梗にとっては本心から愛した女(田丸)の死によっていったい何を得ることが出来たのか?金よりも大切なもの、それは金よりも愛であるというようなことを増村監督がこの作品を通して語ってるのかもしれないし、言いたかったのかもしれない。それにしても加東大介が放ったあの台詞「人生、失敗するのはみんな女ですわ」て、あぁぁぁ~こんな台詞を堂々と言わせる所などは増村監督らしいし、この台詞を聞いて女で失敗している世の駄目な男達全員に聞かせてみたら、どう思うだろうか?最後はあまりにもあっけなく終わってしまったのと加東大介以外の悪い奴ら、あの暴力団連中を刑務所にというものがなかったので物足りないけれど、これもまたこの監督らしいシャープな映像と個性派の俳優勢揃いでなかなか面白く見ることが出来た。「黒」シリーズの3本の中ではこの作品が一番、面白かった。