56.《ネタバレ》 今見終わりました。
お恥ずかしい事に私もこの監督の事を色眼鏡で見ていた1人でした。
しかしこの作品は文句無しに素晴らしい。医療ドキュメンタリーとしては傑作の部類です。
アメリカにおける医療問題の歴史を細部に至るまで詳しくリサーチして
彼独特の表現方法で作品にしています。
彼の作品は全般にどれもシニカルです。
だがこの作品は、そう、確かにシニカルでは有りますが
同時に暖かいヒューマ二ズムにも溢れている。
突き詰めれば結局、アメリカは資本主義がトコトン行き着いた国だと言う事なのでしょう。
政治が1部大企業の言い成りに政治を進め
それが医療に関してまでクチバシを入れると、どういう事態に成るのか?
それを年代も踏まえ、赤裸々に暴露しています。
政治家は皆、金を掴まされ製薬会社の代弁者となり
ごく限られた金持ちだけしか正当な医療を受けられない。
貧乏人は文字通り、身ぐるみ剥がれる様に、有り金を全部医療費に巻き上げられ
必要な医療を途中で打ち切られ、そのままガンが進行して死んだり
カネが無くなったと見るや、路傍へ打ち捨てられてしまう。
文字通り、「文無しは死ね!うせろ!」と、こうです。
私は目を疑いましたが、今やアメリカではそんな事が日常茶飯事に行われて居る。
はた、と、考え直すと日本でも現在、特別養護老人ホームに申し込んでも
全国で42万人の待機者が居て、仕方なく劣悪で小規模な介護ホームへ押し込まれた
寝たきり老人が火災で7人焼死したというニュースや
他にも収入が無く、健康保険料が払えないからと言って自治体に保険証を取り上げられ
医療を受けられない人々も増えていると聞きます。
その一方で大規模外食チェーンのオーナーが病院経営の規制緩和を求め
病院事業の株式化を政府に働きかけていたりしている。
つまりわが国も決して「対岸の火事」では無いと言う事なのです。
作品の後半に呼吸器の薬がアメリカ本土で買えば120ドルもするのに
キューバでは僅か5セントで手に入る事を知り、女性が号泣していた場面が有りますが
「日本では絶対その様な事態に成らない」と言えるのでしょうか?
私は今の日本医療の現状を考えると空恐ろしく成ります。
また同時に、オバマ大統領の成立させた皆保険制度が早晩覆らない事も祈ります。。。