239.《ネタバレ》 ●2007年の投稿はこのような事を書いていた 先日の兵庫県生野での「志村喬展」での地方公会堂での6回目鑑賞。 見る前に関係者のトークショーが印所に残ってしまったので書いちゃいます。 といってもどこかにかかれているかもしれないので2度目の方はご容赦。 この映画の撮影をはじめる前に志村さんは盲腸を患ってしまったそうです。あのぽつりぽつりセリフを話すのは最初腹に力が入らなかったためとも言われてます。 昭和20年代の盲腸だから併発症などが怖い時代ですけど、カメラマンと監督とで志村さんの家にお見舞いに行ったそうです。ところがいろいろと話し込んでいるうちに時間も遅くなっったのでこれでとどめということで、志村さんの奥さんがウイスキーをだしたんだけどこれがまた火をつけてしまったようで、志村さんを含めて大いに話が盛り上がったそうな。奥さんは盲腸の傷が心配でしょうがなっかたとのこと。そこにだれかが三船敏郎に電話して、呼んでもいないのに三船さんが大きな風呂敷を抱えてきたそうです。 その風呂敷には、長男の三船史郎さんが入っていたそうで、三船さんは長男を酒の肴に持ってきたという良くわからない話。 史郎さんがあとから聞いたことには、「あれは志村さんの映画でボクの入る隙が無い」とのことを言っていたそうです。完成度の高い映画は何時見てもOK。小田切みきさんとの演技打ち合わせは(監督の)熱の入った話が長く、志村さんがそれをかいつまんで説明していたとの話でした。 ●2023年DVDでの7回目鑑賞での追加コメント 目、とにかく志村さんの目 映画冒頭での市役所での気合の入らない仕事中の目 若い女性を見る目 がんとわかった時の目 ブランコに乗っている時の目 公園を作ろうと決意する目 自分の身内でがん患者が出ることを知っていたら、こんな見方はしなかったであろう 人間の生き方って「目」に出るんだ そう思いこそすれこの映画の志村さんの目に注目して見たら、 ああ、さすがにクロサワだ 生きるとは目の輝きなんだ そう思いました 【亜輪蔵】さん [映画館(邦画)] 8点(2023-05-23 15:01:11) |
238.現代では風俗こそすっかり様変わりしてしまいましたが、根本的な人間の姿はほとんど古びていないのには驚きました。無意味で空虚な仕事がもたらす精神の荒廃、お役所仕事の弊害(序盤はシン・ゴジラにもそっくり)、肉親の間ですらどこかよそよそしさが付きまとう人間関係、うちの中もおもてもおんなじ寒さという日本の住宅事情への愚痴まで現代と変わらない(笑)。日本社会の本質がこの時代から大して変化していないというだけかもしれませんが、これは人間への真摯な観察の賜物でしょう。しかし細部の描写はいいのですが演出や脚本がそれほどうまいとは思えません。志村喬が病院待合室で診察を受ける前の会話では他の患者が胃がんなのに胃潰瘍と言われたと語られ、後の場面で医者に同じことを言われるんだろうなと簡単に推測できてしまいます。酒場での小説家との会話では胃がんが人生に対する目を開かせたなんて作品のプロットを全部台詞で説明しちゃってます。小田切みきとの交流は今見るとパパ活みたいで真面目に見るべきなのか笑えばいいのか…。有名なハッピーバースデーのシーンも分かり易すぎていかにも演出の作為が見えてしまいます。葬式のシーン以降はやっぱり長すぎますし、社会批判というよりは主人公をひたすら賞賛しているだけのように見えてしまいます。本来は社会風刺喜劇になるべきところにヒューマニズムドラマまでつぎ込んでいるのでどうにもバランスが悪いです。しかしバランスが悪かろうと語り方が下手だろうと伝えたいテーマを何としてでも伝えようとする姿勢は立派だと思います。「わしは人を憎んでなんかいられない、わしにはそんな暇はない」こういう心を揺さぶる台詞が出てくるのはやはり小手先の技術ではないと思います。ダメなところもたくさんあるとは思いますが、黒澤明はやっぱり偉大な監督です。 |
237.《ネタバレ》 とある役所の寡黙な市民課長が主人公。癌で余命幾ばくもないことを悟り、これまで何も為し得ていない自分の人生を振り返り狼狽したり、無断欠勤して遊び歩いたり、心を入れ替えて市民のために仕事をしたりという話。お役所仕事(仕事のたらい回し)の風刺になっていて、時代劇が多い黒澤明の作品の中では異色の部類だと思います。しかしながら、時代を経て労働の質が大きく変化している中、さすがに今の時代では通用しないテーマだなと思ってしまいました(縦割りと責任回避はいまだにどこにでもありますが)。本来的には、喜劇的な要素をちりばめつつ、余命の限り市民のために奔走して仕事を為した男の生き様を示し、そういった仕事ができない現状(当時)に一石を投じているのだと思います。ですが、今になっては、単純化、戯画化が過ぎていて、わかりやすいのだけど、深みやリアリティがなく、なんか、すべてが喜劇に見えてしまいました。主人公以外の登場人物に苦悩がまったくなく、深く考えない大衆役を演じさせているのも、通り一辺倒でダイナミズムを感じさせません。結果、ちょっと説教臭い感じが目立ってしまいます。なぜ、主人公が人が変わったように仕事に打ち込むようになったかを、葬式の参列者が議論するくだりも、すべてが説明台詞になっていて、「癌であることを知らないはずなのに、なぜだろう?」などと延々とやってるのも、そらぞらしくて、何だかなと。映像作品としては丁寧につくられているので、昔の繁華街はこんな感じだったのねとか、飽きることなく楽しく見られました。 【camuson】さん [DVD(字幕)] 4点(2023-03-01 19:05:19) (良:1票) |
236.久し振りに‥‥本当に久し振りに鑑賞しました。 以前観てから、恐らく40年前後経っていると思います。 観る方が年をとっても、良質な映画は古くならず、我々に感動を与えてくれます。 何より、あの志村喬の演技力の素晴らしさ 殆んど、まばたきをせず、目力で観る人に訴えて来る‥‥ 観終わった後、暫く涙が止まりませんでした。 現在、リメイク版(タイトルは「Living」)を英国で製作中と聞いています。 どんな作品になるのか、楽しみです。 【TerenParen】さん [DVD(字幕)] 9点(2020-09-11 22:47:53) (良:1票) |
235.《ネタバレ》 昔の映画を見るときは覚悟しないといけないとつくづく思った映画でした。 ストーリーは知っていたしブランコのシーンも知っていましたが、終始一貫して退屈に思えてしまいました。 役者たちの演技がオーバーすぎるのと、死期迫って自分の働いている職場で正義に目覚めストーリーも、亡くなった時のお葬式で他の人の手柄になっている彼の善行をみんなが訴えるシーンも、また同じパターンと思えます。 今見ると手あかがついてるのも否めません。 笑いのシーンも笑えず怒りのシーンもそんなものとしか思えず、ブランコのシーンさえも単なる自己憐憫にしか思えませんでした。 【omut】さん [試写会(邦画)] 3点(2019-10-20 05:55:51) (良:1票) |
234.《ネタバレ》 約4年ぶり2度目観賞。リメイク版公開に向けての復習。黒澤明監督の代表作。瞳をギョロつかせるミイラ面の廃人。タカシくん渾身の名演。胃がんで余命半年、マジメだけど生きた化石のような市民課長が「ハッピバースデー」を境にシャキーーン。やる気があれば何でもできーるっ。廃人をやめて、市民が要望する公園作りに瞳を白黒させながら奔走。だけど最期のブランコで唄うシーンはやっぱり不気味ですな。 【獅子-平常心】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-06-30 20:36:27) |
233.《ネタバレ》 かの黒澤監督の代表作であり、そのあらすじから、ずっしりと重たい内容の映画と思っていたが、意外と喜劇調にできていて驚きました。これは余命を覚悟した男が、悩み、迷い、奔走し、最終的には死ぬまでに何か自分が生きた功績を残そう、と決意し実行に至る物語です。しかし人間遅かれ早かれ死ぬのだから、これはある意味で誰にとってもの物語と思う。言わんとしていることは、必ずしも余命宣告されてからどうこう、ではなくて、常日頃からただ毎日を生きるな、活きろ、ということであり、使命とは与えられるものではなく、自分で決めろということではないかな。公務員はただ座ってるだけで給料がもらえるような描写がありますが、それは公務員に対する風刺でも揶揄でもなく、本作のテーマ上、職業も給料も安泰な人間を主人公にすえることが何より重要だったように思います。私としては、四十半ばでいろいろと人生を振り返り、残りの人生をどう生きるか、じっくりと考えるいい機会になりました。志村喬さんの大きな黒目の澄んだ瞳がとても心に残ります。日本が誇る名監督、名優の仕事をこの目に観ることができてよかったと思う。 【タケノコ】さん [DVD(邦画)] 8点(2019-01-07 22:42:26) |
232.《ネタバレ》 伊藤雄之助がまるでメフィストのように、この世の快楽地獄を連れ回すシーンが好き。そして、ファーストシーン。いきなり胃カメラからの独白。ただ、志村が、少し熱演過ぎてくどい。 【にけ】さん [映画館(邦画)] 7点(2018-12-27 18:57:15) |
231.素晴らしいドラマです。ハッピーバースデーのシーンは何と優れた演出でしょうか。やられました。ただしそこに至るまでのシーンが長いですが。自分の人生について考えるためにも、一度は見ておくべき映画だと思います。 【alian】さん [DVD(邦画)] 8点(2018-08-25 16:33:17) |
230.説教くさいとか、展開が遅いとか、喋りが聞き取りづらいとか、現代から観ると色々と難癖をつけたくなる。 しかし、それでもあのブランコのシーンの感動が、最後の夕焼けの美しさが、そうした難癖も吹き飛ばしてしまう。 主人公は安定した職があっても、家族がいても、世間的には立派な人であっても、生きるということの意味や意義を見出せていない。 むしろ日々を生きるのではなくやり過ごしてきただけで、まるで死人のようだと自嘲している。 そんな主人公が死の淵に立ったとき、初めて生きることの意味や意義を見出して奔走を始める。 冬の夜のブランコ。それを満足げに漕ぎ、歌を口ずさむ主人公。 本当に良いシーンだ。生きる意味を見出し、精一杯生き抜いたのだから。 ヤクザと対峙するシーンも涙を誘う。 主人公のように”生きる”ということが自分にもできるだろうか。 いつもこの映画は冬の夜のように深々と、しかし夕焼けのように暖かく問いかけてくる。 【nakashi】さん [DVD(邦画)] 10点(2018-08-25 15:54:32) (良:1票) |
|
229.《ネタバレ》 かつては「遅れず休まず働かず」、これ小役人の鉄則。プラス「大過なく過ごして定年退職」。「デカンショ役人」「○○一暇な役所」なんて言葉もあったな。 公務員の仕事は文書のひと文字ひと文字、数字のひとつひとつがその証となる(だから改ざんなんかいけねえよ)。こつこつ働いて課長になり、稟議で「ハンコ押すだけ」の役割も仕事の一つ。生活のためもあり割り切れるかどうかだが、役人は組織で仕事をするものだから、主人公の無気力は一面的であり説得力をあまり感じない。とはいえ通夜の席での同僚たちによる会話は、勤め人の本質を突く優れた展開。 余命宣告を受けた後、主人公のはじけっぷりが尋常でない。「それほど変わるか?」が素直な感想。役所の部下だった女性の若さを吸収するがごとき行動は面白いが、このシークエンスは少々違和感がある。彼女の“おもちゃを作る”仕事に衝撃を受け、それまでの無気力から一転、“公園をつくる”(=生きた証を残す)行動に出る。その奮闘ぶりから、人生において「何かを成し遂げる価値」は十分伝わる。 【風小僧】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2018-06-24 14:17:14) |
228.《ネタバレ》 生き方という点で非常に印象に残る映画だが、演技がちょっとやり過ぎというか、気持ち悪いかな。ブランコのシーンは良い。 【なす】さん [DVD(字幕)] 8点(2018-06-04 01:41:43) |
227.黒沢映画10数本目の鑑賞ですが一番心に残ります。死期迫る主人公に寄り添う気持ちが私に乏しいせいか、じれったくてイライラしてしまいますが、とても胸が熱くなる作品です。 【ProPace】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2018-02-02 20:41:00) |
226.《ネタバレ》 30年役場で惰性のみで仕事をしてきた課長が余命半年を告げられ、これではいけないと突然市民のために生きる事に目覚めて実現困難な公園新設を死ぬまでにやり遂げた映画・・と考えると多分誤りで、平和な現在を基準に考えるとわざわざ映画にするような題材に思えません。 映画にも一部描かれますがこれが作られた昭和27年と言えば、主人公の年代の人は戦前の二・二六事件などの緊張した時代から戦争で肉親が出征、戦死したり、はたまた空襲で街が焼け野原になり、近隣の人が死に、戦後は食糧難と復興で観客も含めて皆「生き延びる」だけでも大変であった時代と思います。主人公も無表情のまま「とにかく忙しくて・・」とその人生を語っていますが、時代に流されるまま「生き延びる」ことにはその場その場で「必死に対応して生きて来た」と言う事だったのではないかと思います。そうして必死に生き延びた人生が「後半年」と宣告された時に、「何か」が芽生えて、生き延びるために生きるだけではない「何か」を若い小田切君に魅入られるように模索した結果が「公園建設」だったのだろうと思います。 「何か」が見つかった後はいきなり葬式の場面になって、公園建設に奔走する様は関係者の回想で断片的に語られるだけなのですが、建設のストーリーは問題ではなくて「精神」だけ描きたかったのだと思います。その「精神」も市民のため云々という奇麗事ではなくて、生き延びるためだけではない「生きる」の「何か」がこんなであった、というのが主眼で「夕焼け」と「雪中のブランコ」のシーンにその精神が集約されたのかも知れません。「何か」は見る人それぞれ何でも良くて、当時の状況からは「革新的な思想」や「新興宗教」はたまた一攫千金を夢見た「起業」かもしれませんが、作者はその何かを模索して欲しいと思ったのでしょう。とても良い映画ですが、現在から見るといろいろ考えないと解り難いという事ではこの点で。 【rakitarou】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2018-01-09 14:29:22) |
225.すばらしい! 命は限りあるものだから、自分の生まれた意味を人間考えるでしょうね〜。 深い。。。 【へまち】さん [DVD(字幕)] 9点(2017-12-06 22:43:15) |
224.昭和27年の文化背景が垣間見えるのは面白い。この頃からパチンコはあったんだなあとか、「メフィスト」は話に突然出てきて通用するくらい知られていたのかとか。 ただ、声が聞き取りづらくてセリフがよくわからないのが多々ある。特に主人公のセリフが一番わかりづらい。その分、表情が言葉以上に物語っていて、そういいった迫力は伝わってきた。 【もんでんどん】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2017-05-18 14:39:58) |
223.《ネタバレ》 学生時代に一度見たが、その時はなるほどこれが名画というものかと思った程度だった。 今回見ると、まずハッピーバースデーまでがとにかく長く、その間主人公がジタバタするのが非常に見苦しい。自業自得だろうと突き放したくなる一方、息子のためにこうしてきたというならそれでいいだろうがとも思う。生きる意味などそれぞれ気の持ちようなのでどうにでも納得できるはずで、特にこの時代なら、とりあえずここまで生き延びて子孫が残るだけでもいいではないかと思うが、それをあえて否定して、個人の生きる意味を求めたのがこの映画ということなのか。しかし現代ではその個人の部分だけが重視される一方で少子化が進んでいくのは皮肉ともいえる。 その後の通夜の場面では、一転して他者の視点から主人公の行動を明らかにし、印象操作や誤解を排した全体像を皆が共有していくのが面白い。警官の述懐は、いわゆる最後のピースがはまったようにすっきり感じられた。 またこの部分で語られる役所の組織体質は興味深い(笑う)。何もしない決まりがあるというよりは、行動様式として目の前に来た案件を捌くのが基本だから主体的に動く発想がないのだろうし、そういうのは江戸時代のままではないかという気もするが、わずかな体面のために自分の領分への干渉を許さないとか、執拗な相対化で個人の功績を薄めようとするなどは小役人というより日本人の気質ではないのか。記者の言う「プロモーター」はいかにも新しい言葉に聞こえたが、当時などほとんど理解されていなかったのではと想像する。 そこで何かしようとした場合、主人公に関してはたまたま本当に役に立つ仕事がその辺に転がっていたからよかったが、動機が不純だと自己満足だけで愚にもつかないことをやらかす恐れもある。そもそも自分のために仕事をするなど公僕のやることかと言いたいところだが、ただし工事現場で倒れた主人公を、周辺住民が寄ってたかって助けた場面は少し泣けるものがあった。要は実のある仕事かどうかかが真の問題であって、それが同時に当人の生きた意味にもつながりうることは示されていたように思う。今さら他人に言われる筋合いはないと反発を覚えながらも、人生悔いのないようにという思いは否応なしに残る映画だった。 ちなみに劇中の小田切とよは、近場に本当にこういう人物がいるので妙に親近感を覚えた。どうでもいいことだが。 【かっぱ堰】さん [DVD(邦画)] 7点(2017-04-05 20:36:14) |
222.こんなに後からじわじわとくる映画も珍しい。黒澤が描くヒューマニズムの代表格であり間違いなく不朽の名作。 無気力に生き坦々と過ごす日々の人間にある日死の宣告が訪れる。余命をどう生きるか。誰もがいつかは死ぬわけではあるが、こんなに人生の意味を考えることはないんじゃないか。きっと同じ立場であれば強烈な不安に襲われる。そのなかで明日をどう生きるか。深く考えさせられた。 また、志村喬が迫真。何が凄いって、全体的にボソボソと話すのだが会話要らずの眼の演技。絶望、不安、生命力を眼で表現してる。 エンディングは夕焼けが印象的。モノクロではあるが生き抜いた達成感と哀愁に映え色彩があるようだ。ブランコを見る際、恐らくずっとこの生きるが頭によぎるだろう。それだけの映画。 |
221.通夜の席で主人公の頑張りが回想されるという作りは興味深いですが、そこまでが冗長で退屈なので 高得点はつけられません。主人公の声が終始ボソボソして聞き取りにくいのもマイナスです。志村喬氏の最高傑作は黒沢作品ではなく「日本のいちばん長い日」だと思います。 【次郎丸三郎】さん [DVD(邦画)] 4点(2016-11-24 19:50:36) |
220.《ネタバレ》 この映画は基本的にコメディであろう。それも風刺の効いたとびきり上質なブラック・コメディ。とかく感動的な人間ドラマの最高峰と捉えられがちな本作だが、例えばもしこれから本作を初めて見るような若い世代の方がいれば、「なんだか、最後にほろっと出来るコメディ映画らしいぞ」と言うくらいの心持ちで観た方が、「重厚な泣ける映画なんだって」と思いながら見始めるよりも格段に良いだろう。黒澤明もそのつもりで作っているだろうし、それを証拠に「俺は生まれ変わったつもりで頑張る!」と言っていた新課長が場面が変わると結局今まで通りと言う流れは、「生まれ変わる」という宣言が大きなフリになっており、これはお笑いの基本的な構造そのものである。本作にはそうしたお笑いの構造を用いられた場面がいくつもあり、明らかに笑わせる事を優先して作られている。さて「死んだように生きるのか、それとも死にものぐるいで生きるのか」というのは「現代人」にとって永遠のテーマであり、「ショーシャンクの空」でも「Get busy living or get busy dying」でそのまま触れられている。そういった重厚なテーマを扱いながらもクスクス(時にはゲラゲラ)笑わせながら、考えさせる映画というのがこの作品の本質だろう。ちなみにお葬式のシーンでの役所の方々の立ち振る舞いをみながら、小田切さんの付けたあだ名の主が誰か?と想像するのも楽しい。 |