4.《ネタバレ》 ふむ、あえて作品中で触れられていないが重要なことがありますね。
これを抜きにしては評価しようがないというほど大事なことですけど、これって、金持ちの娘の話ですよね。
…マーゴとポーリンって、親が金持ちなんですよね。お嬢さんなんです。巧妙に隠していますけど。
それなもんで、この作品には人生に不可欠な「生活の心配」というものが、決定的に欠けているのです。カネの心配、住居の心配、親の医療費の心配。何もないです。
ポーリンは、稼ぎのない男と結婚を決め、将来の計画もないのに妊娠しますけど生活費はどっから出ているのか。…親が生前贈与でまとまったカネをくれているとしか思えません。なおかつ、「実家」をポンと娘にくれてやる。つまり自分達の住居はちゃんと別に確保しているということです。
マーゴは、離婚だ離婚だと騒いでいますが、真っ先に出てくるはずの「カネ」の心配は全くしていない。自分が作家で稼いでいるということもあるでしょうが、基本的に生活費の心配とは無縁。自分の不倫で逆に慰謝料をとられても不思議じゃないのに、カネの心配ゼロ。
私に言わせればこれって「生活費の心配のない金持ちの娘たちが暇つぶしでトラブってみる」というふうに見えます。
大部分の人間は「生活費の心配」だけでほとんど人生が終わっているのです。
余暇「スコーレ」がなければ文化は生まれない、確かにそのとおり。でも、この姉妹たちのように「生活の心配がないから他の事で悩んでみる」というのは、とても共感なんてできませんよ。それも大した問題じゃなくて「わざわざクスリ漬けになってみる」とか「自分から不倫して離婚を要求する」とか「避妊しないで婚前セックスして妊娠してみる」とか「わざわざダメ男と結婚してみる」とかなんですからさ。…違いすぎます、一般ピープルと。
息子のクロードが良かったです。ダメ母にしては素直に育った良い子ですね。
ベッキーのレイプ事件の話で大笑いするところを見せて「本当は合意だったんだな」と想像させるとか、便器の中の「何か」をチラッと見せて避妊具を想像させるとか、よくわからないチマチマとしたワザはありましたが、ほとんど効果はありませんね。なんの効果だかわかりませんが。
「退廃」を見せたいならこんなチャチなものではないし、「人生の悩み」として見て欲しいなら生活の心配がないことを「隠して」いるのはヘンなことなのだ。