239.《ネタバレ》 最初に見た時は7点。前回見た時は8点。そして今回見たら9点という感覚の作品です。
アメフトのことはルールすら知りません。人種差別についてもよく知りません。しかし、映画として素晴らしい。
冒頭で「これは実際の出来事です」的なテロップが流れますが、その前提をもって本作を見ると、そのところどころで「え、マジで?」と思わせられる。
「人種差別」これは事実でしょう。「タイタンズの戦績」これも事実でしょう。
細かい部分、「ホントにそんなこと言ったか?」「ホントに人々の流れはそんな感じか?」「そんなアメフトガチ勢なキッズがいるか?」これは違う、否、不明でしょう。
しかし、映画として面白い。「綺麗に描きすぎ」というほど綺麗すぎない。ちゃんと汚い部分も描かれるが、それも汚すぎない。
自分の立場、自分の感情、自分の立場を踏まえた上での感情、自分の感情を踏まえた上での立場。この描き方が実に上手い。
無駄なシーンないし無駄なカットがない。全ての描写に意味がある。テンポの良さ、抑揚の付け方、キャラクター付け、そして構成。
面白いと思わせられざるをえませんでした。
差別の根源たるものはよく知りません。しかし結局、ブーンコーチの言う「相手と話せ」「相手のことをよく知れ」これが全てかと思います。もっと言えば「相手を認めろ」「相手の良い部分に焦点を当てろ」です。
いわゆる「差別」的なものは、現代日本においても十二分に当てはまっている。インターネットないしSNSの発達によって市民1人1人の声が大きくなった。叩かれるに足る行動をとった人間が叩かれるようになった。褒められるに足る人間がやんわりと褒められるようになった。
この現象って、相手のマイナスな部分に強く目を向け、相手のプラス部分に目を向けていないことによる結果だと思うんですよね。
SNS上でいがみあってる人たちも、実際に会って実際に話して、感覚を共有して、なんなら一緒に飲みにいって、酔っぱらって本音をぶちまけたら相手の良いところを理解して、仲良くなれるんじゃないか、と思うんすよね。
これは仕事にしてもそう。仕事外の人間関係にしてもそう。いつもどこかで「自分が正しい」「相手を認めない」という気持ちが自分を守るバリアとなるとともに足枷となる。相手を認めればもっと自分にとっても全体にとってもプラスになるのに、という主張。
本作の「完璧な人間はいない」「君はよく自分を理解している」というフレーズが、そのまま刺さります。
ともあれ、こういった主張を描いているのが本作であり、そこに共感できるから本作が面白いと思える。
汚すぎず綺麗すぎない、否、綺麗寄りだが映画としてのクオリティが高い、そういった作品かと思いました。