1.《ネタバレ》 イスラム原理主義組織が暗躍し治安が悪化するアルジェリアで、フランスへの帰国を拒み、修道院に留まり続けた8人の修道士達の映画。実話に基づく。丘の上にある修道院で暮らす彼らとふもとに住む村人達(イスラム教徒)との交流を通じて、宗教の相違による争いとその空しさ、さらに信仰という行為そのものを描く。
修道士たちと村人の関係は良好だ。宗教の違いを認め合い、修道士たちは村のイスラム教の祭りにも参加する。また、修道士の中には医師もいる。病気や怪我をした村人は、丘を登り、皆、彼に診てもらうのである。原題のGodsの意味もここにある。ここでは修道士はエホバ同様アラーにも敬意を払うのだ。村人も彼らを敬い、相補的な関係が築かれている。しかし、原理主義者たちは違う。彼らは武装しキリスト教徒を襲って虐殺する。彼らにとってはアラーを信仰しない者は敵である。そして彼らの手は修道院にまで迫っていた…。
映画としては、修道士達の礼拝の様子や会話、村人達との交流が淡々と描かれながら進行していく。礼拝については、その厳かな雰囲気は良く出ているのだが、日本人の僕には少し退屈だった。一方で、村人達から帰国しないで欲しいと嘆願されるシーンや帰国すべきかどうかという問題に関するそれぞれの意識の温度差が如実にあぶりだされる修道士達の話し合いのシーンは大変興味深く、心を打たれるものがあった。特に「最後の晩餐」を思わせるクライマックスシーンは本当に感動的だった。そして誰が生き残り、誰がこの話を語ったかを意識すると更に感動は深まると思う。
さて、僕はこういう映画を観るといつも思う。ああ、本当に宗教がこの世から無くなれば良いのに、と。