1.《ネタバレ》 勝新が東映の映画に唯一出演した作品。先週まで「兵隊やくざ」シリーズをずっと見ていて、勢いで本作も見たわけだが、海兵団に入団した主人公の大暴れを描いていて、勝新が演じていることもあってどうしても「兵隊やくざ」の焼き直し・二番煎じ感はある。でも「兵隊やくざ」と比べて過激になっているのは東映らしいところ。「兵隊やくざ」のとくに1作目は見ていて「網走番外地」の1作目を思い出したのだが、本作は山下耕作監督の作品だが、当初、石井輝男監督が自分で監督する予定で書いた脚本が使われていて、作り手側も「網走番外地」を意識しているのが分かるが、それによって山下監督というよりも石井監督の映画という感じもして、山下監督らしさはそれほど出ていないように思う。前半は海兵団で大暴れした主人公が軍事刑務所に送られるまでが描かれているが、この部分は東映任侠映画でよく見る展開となっていて見ていて安心感があるし、高倉健や鶴田浩二ではなく、勝新というところに妙な新鮮味を感じる。この前半での勝新と松方弘樹の共演が珍しいのだが、考えてみれば松方弘樹は一時期大映に貸し出されていた時期があり、そこでの共演がなかったのかと思うと少し意外に感じるのだが、軍事刑務所が舞台になる後半になると、菅原文太が主人公に影響を与える少佐役で登場し、勝新と菅原文太の共演が実現しているのがなんとも貴重で、この二人の共演を見るだけでも見ごたえのある映画になっていると思う。ドラマ的には主人公と久邇宮朝融王(太田博之)のエピソードも良いアクセントになっていた。欲を言えば田村高廣がどこかにカメオ出演していたり、この時期は事情があって無理だったかもしれないが、若山富三郎が出ていてくれると盛り上がったろうなと思ってしまう。とくに東映での若山富三郎と勝新の共演はぜひ見てみたかった。