1.《ネタバレ》 原作由来のダークファンタジーを基本にして、若年者向けメッセージとエンタメ要素を加えた形になっている。主人公が死に至った経過も加えてあるが、当初の楽しかった学校生活や本人の愛すべきキャラクターと、その後の行動との間にギャップがあり過ぎて説得力がないのは残念である。
一方で映画の宣伝文句を見ると「自殺というテーマに挑んだ意欲作」とされているが、そういう前提でいえばストレート過ぎる内容である。現実の遺族が見れば心に刺さる場面もあるだろうが、しかし現に苦しんでいる人間にわざわざ“悲しいだろう?”と語りかけてさらに泣かせるような感覚であり、それ自体はあまり有益とは思われない。またこの映画では些細な動機で死んだ主人公と、その後も苦しみ続ける遺族とを直接対比させた結果として、死なれた側の立場だけが強調されて死んだ者は加害者扱いになっている。しかし現実の人間が死ぬ理由としては、本当は生きていたいのに、生きているのが死ぬほど苦痛だから死ぬ、ということもあるはずで、そういう観点が欠けたように見えるのは感心できない。
ただ、もしかするとそう感じるのは大人が見たからであって、初めから若年者向けに見せる前提なら案外この程度でいいのかも知れない。真剣に作っているはずの映画にマンガじみたCGアニメを出しているのも、子ども向けにやったことと思えば理解できなくはない。
そのほか、自殺者の霊は死後も苦しむといった検証しようもないことを材料にしては実社会に向けたメッセージになりえないと思うわけだが、ラストの締め方はよかったと思われる(少しほっとする)。こういう境遇の者が周囲にいなかった理由もこれである程度は説明できる。
なお主演女優は初めて見たが、カワイイかどうかは別としてなかなかいい感じの女優のようで、映画の内容にそれほど感心できなくてもあまり悪く言えないのはこの人のせいも大きい気がする。また主人公の友人のミドリについては、昔はあんなに可愛かったのにその後はこうなったかと残念に見えるところもあったが、ただしこの女優本人(吉田羊)は実年齢より10歳近く(正確には8歳?)若い役を演じる形になっており、何でも対応可能な女優さんというところか。