64.《ネタバレ》 オープニングの油絵のような白樺林とベタ塗りの空。
小さい頃に連れて行ってもらった老舗デパートの渡り廊下の壁か、親戚の集まりで一度だけ行った大型温泉ホテルのロビーか…
ラーラのテーマを聞きながらエンドレスで観てられるわ。
葬列シーンの山でかっっ!!あれがウラル山脈(違うらしい)?山吹色の花と灰緑色の草、地表を覆い尽くす雪と氷、ガラスの雪の結晶、タマネギみたいな屋根、赤と黒の装甲列車。どっからどう観てもイメージ通りなソ連、ソ連、ソ連!(※世代的にロシアよりソ連。)
現地ロケをせずにこれだけソ連感を出せるのが凄い。広大な自然を堪能出来て、ソ連版『北の国から』な感じも味わえる。
兵役に行くパーシャの服を引っ張る赤ちゃん。ハラリと落ちるテーブルの花びら。歴史的超大作となると端々まで役を演じるんだな。
タイトルは~Doctor Zhivago~ジバゴ先生。
平たく言えば、全く詩を書かない詩人ユーリと美少女ラーラの不倫物語だけど、ちょっとコマロフスキーに注目したい。
コマロフスキーは半分冗談で17歳の小娘ラーラにベールを掛ける。
なんかあまりに美しかったんでヤバいと思ったんだろう。この時の苦笑いが彼の良い人っぽさを出していた。
パーティの日、母が風邪を引き、コマロフスキーは『欠席しよう』と、ラーラは『看病する』と言うが、母の強い頼みで二人で行くことになった。
当初コマロフスキーにそんな気はなかったんだろう。帰りの馬車でコマロフスキーの顔にチラチラと掛かる怪しい影。対象的にラーラの顔はハッキリ灯りが。
ユーリは戦地でラーラと過ごし、不倫関係を持ちかける。この時ユーリの顔に掛かる怪しい影。目だけギラギラ。ラーラの顔には日が当たっている。
ただの不倫と言えばそれまでだけど、コマロフスキーもユーリも、ラーラの天性の魔性に取り憑かれたんだと思う。もちろん彼女の美しさに罪はない。
ユーリとラーラ親子を逃がそうとするコマロフスキー。逃げなかったユーリの代わりに、生涯父親としてトーニャを育てた。良い人すぎるぞコマロフスキー。
機会がなかっただけで、エフグラフ・ジバゴ将軍も彼女に取り憑かれてトーニャ探しに協力した。『淡い恋心』と言っていたけど…
ん?ユーリの妻も、ユーリとラーラの娘も、どっちもトーニャなんだな。好きな人の奥さんの名前つけたんだな。
唯一ラーラを妻にしたパーシャはどうだったか?彼はラーラより、ボリシェヴィキに取り憑かれていた。
ところでユリアティンの男どもが、なんであんな美女を放っておくか謎だったけど、たぶんパーシャを捕まえるために家を見張っていた(当時の)KGBとかが、追い返してたんだろう。
魔性の女ラーラは強制収容所で死んだ。番号で処理され、記録は紛失。ユーリの美しい詩も、ソ連では発売禁止。
社会主義国家に女性の美しさや、詩の美しさは不必要なんだろう。まさにパーシャ≠ストレルニコフそのものだ。