6.《ネタバレ》 -How I Live Now-“今の私の生き方”。
他人とのコミュニケーションを拒絶する少女が、自然と隣り合わせの環境で暮らす従兄弟たちとの交流で心を開く。そこに第三次世界大戦が勃発し…って感じだけど、背景の戦争の状況がよくわからない。
最初の空港シーンからライフル持った兵隊がガヤガヤ居たり、家までの道のりに軍用車がたくさん出てきたりと、開戦直前の不穏な空気はよく出来ていたと思う。核の表現(強い風とズンッという重い音、死の灰、その後の雨。)は、アレはアレで怖かった。けど、その後は人体にも街や森にも核の影響がなく、世界規模の核戦争なのか、ロンドンだけたまたまテロに遭ったのかも解らない。水が飲めないのは放射能ではなくテロリストが汚染したって。検問でのユルい銃撃戦、旅客機の墜落現場、訓練基地?で袋詰めの死体。一貫性のないチグハグな戦争描写から、どこのどんな組織を相手に戦争しているのかが全く見えてこない。戦争から連想されるインパクトのある映像(ただし低予算)を詰め込んだだけに思える。いくら子どもたちだけが主役のドラマだからって、ニュース映像を増やすとか、新聞記事を差し込むとか、大人同士の会話から連想させるとかして、世界観の骨格・背景はしっかり作ってほしかった。
だけど幼いパイパーが可哀想で。エディーに会いたい気持ちから、パッパカパッパカ先に行くデイジーに頑張ってついていく。休みたいといえば怒られ、汚染のせいで水も飲めず。靴擦れで血まみれの足を黙って拭いて、泣き言を言わずに歩きだす姿がなんとも健気。
シアーシャ・ローナンの表情の変化が素晴らしい。冒頭のロック好きな少女の時は、全ての事が退屈そうで不機嫌さを隠さない表情を。従兄弟たちと打ち解け、エディーを好きになってからは、年齢相応な喜怒哀楽がはっきり伝わる表情を。収容施設のような強制労働(…と言うには自由度は高い)の最中は感情を抑えて、まるで空気みたいな表情を。サバイバル生活では“家に帰る”という強い意志を感じさせる表情を。家に帰ってからはエディとパイパーを守って生活を再建させる、母親のような表情を見せてくれる。それぞれでメイクが違うのもあるけど、状況に合わせた彼女の演技力を堪能する、イメージムービーのような気がしないでもない。
恋愛描写は古典的というか、ラノベ的と言うかアニメっぽいと言うか。お互いに怪我をした指を舐めることで、相手への感情が戻る表現は世代を問わずわかり易いと思う一方、頭の声とか土に埋められたエディーの夢とか、この超能力みたいな表現は最後まで説明がなく、どういう意味だったのか判らなかった。
この作品はティーン・エイジャー向けな映画なので、肝心の若い人がこの映画を見て、戦争は怖いなとか、人を好きになるって良いなとか、そう思ってもらえたら成功だろうから、いい年した大人がモチャモチャ言うモンじゃないって気もする。