84.《ネタバレ》 映画のラストでは、チューリングの悲劇的な死は直接描かれず、書類を燃やす映像に重ねられるテロップでのみ示されます。 勿論、書類が焼かれているのは、直接的な理由としては「用済みの極秘書類だから」ではあるのですが、それにとどまらず、このシーンには独特の楽しさと果敢無さが漂っています。一つの大きな仕事を成し遂げた後の、ひっそりとした有終の美。「個人的なお祭り」とでもいいますか、ちょっとキャンプファイヤーみたいなイメージから来る楽しさ。しかしその一方で、この映像にはナチスの焚書のようなイメージも感じられて。後にチューリングが同性愛を理由として社会的に抹殺されたように、ここでは彼の業績が、燃え盛る炎の中で消されていく、という果敢無さと哀しみ。 アラン・チューリング個人をコンピュータの始祖みたいに言うのが適切なのかどうかはちょっとわかりませんけれども、チューリングと言うと、ゲーデルの不完全性定理の「後日談」的に紹介される、チューリングマシンの停止問題(ゲーデルが因数分解の一意性を用いてあらゆる命題をゲーデル数に置き換え、対角線論法によって不完全性定理を証明したように、チューリングは対角線論法により、計算機が計算を完了しうるか否かを完璧に判定することはできない、ということを示した・・・超曖昧でテキトーな理解です、間違ってたらゴメンナサイ)、あるいは、AIの注目度が高まってる昨今では、チューリング・テストなどによって、名前を耳にする機会がありますが、我々庶民からすると、浮世離れしてて、どうもピンと来ない。 しかし実は、浮世離れどころか、我々の今があるのももしかしたら、彼の抹殺され(かけ)た業績、戦時中の暗号解読のお陰かもしれないのだよ、というオハナシ。これとは別途、暗号解読されまくって大勢の命が失われた日本の立場からすると、複雑な気持ちも無いでは無いけれど、それはともかく。 主人公を無闇に美化したり逆に過度にエキセントリックに描いたりすることなく、ちょっと風変わりで周囲になかなか溶け込めない人物の、いわば「居場所探し」みたいな物語として、映画は彼を描いています。しかし、戦時中に自分の居場所を見つけた彼、社会もまたその才能に多くを負ったはずの彼を、戦後、社会の一方的な価値観が追い詰めることになる、という皮肉。 映画は、子供時代、戦時中、戦後の時間軸を行き来して描いており、見てて混乱するという程ではないにしても、戦時中と戦後とはもう少しうまく描き分けて欲しかった気もするんですけどね。しかしこの構成自体は対比として効果を上げており、見応えのある力作、であることは確かだと思います。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-09-14 09:19:52) (良:1票) |
83.《ネタバレ》 天才数学者アラン・チューリングの人生を、時間軸を交錯させながら巧みに描いた作品。 カンバーバッチの演技はさすがの一言。というか、カンバーバッチ自身、チューリング同様に名門パブリックスクール出身のエリートであるから、共通点がたくさんあって、演技がしやすかったのではないか。 主に3つの時間軸が交錯する脚本だが、筋の破綻もなく、有機的に機能しており、実にお見事な出来栄え。脚本、演技は素晴らしかったが、演出面はやや平凡か。特に戦闘機や軍艦が出る場面のCGはちょっとちゃち過ぎないか。パンチの効いた画面作りはあまりなかったような気がする。そういう意味では、満点評価はあげられないというのが本音のところだ。 映画全体を通して、当時のイギリス中・上流階級の様子がよく活写されていたと思う。オックスブリッジの閉鎖性、エリート人脈の中で蔓延する共産主義、同性愛…。余談だが、当時、諜報関連の仕事に従事する人間の多くはエリートの出身で、かつ他人には言えない秘密(共産主義シンパ、同性愛傾向)を抱えていたという。当局も半ば承知の上で、そういう人間を採用していたらしい(秘密を頑なに守ろうとするから利用しやすい、もしくは何かが起きたときに使い捨てがしやすいから)。結局のところ、チューリングも、当局にとっては利用しやすい人間の一人だったのかもしれない。 戦後、チューリングの貢献・功績は徹底的に隠匿され、彼自身は同性愛の告発、その後の投薬治療で心身を害し、遂には自ら命を絶ってしまった。 大変な功績のある人物に対して、当時の社会や国家がした仕打ちはあまりに冷淡だった。それと同時に、戦争や諜報というものがいかにシビアな世界であるのかを感じた。 【nakashi】さん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2020-04-04 11:00:47) |
82.《ネタバレ》 そうだったのか!ノルマンディー上陸作戦も、あの解読がなければもっと厳しい戦いになっていたのか! スイスのクリプト社の暗号解読事件もショックだったが、この事実を知って第二次世界大戦の印象が相当変わった。 【チェブ大王】さん [インターネット(字幕)] 8点(2020-03-14 23:28:51) |
81.エニグマ、知れば知るほど怖いくらい。 この映画は余分なこともなく、足りないところもない、素晴らしい映画でした。 ストーリーが事実だったことに仰天し、そして同時に連合軍が勝たせてもらっていたことに、英国がいつまでも「偉大」とされていることに納得。恋の駆け引きが何かを知らない主人公が戦争の駆け引きに勝った。忘れられない一本になります。 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-03-02 12:17:09) (良:2票) |
80.暗号解読に向けた様子が、苦悩は描かれてるけど、もう少し詳細な様子があると良かった。あと秘密とタイトルにまでつけたけど、それほどインパクトは感じられず。 【noji】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-02-29 22:00:40) |
79.《ネタバレ》 とにかくベネディクト・カンバーバッチの演技に感服です。 これ悲しい映画ですね。 半世紀も最重要機密として封印されていたとはね、そりゃあそうでしょうよ。 偉業を成し遂げた天才を称えるというより、抗議の意味合いが強いのね、内容的に。 しかし戦争というのは、勝とうが負けようが知れば知るほど辛くていたたまれないことしかないんですよね。 こんな内容の映画だとは予想してなかったです、もっと早く観るべきでした。 確かホーキング博士を演じたエディ・レッドメインがオスカー主演男優賞だったんですよねー 主要部門にノミネートされててカンバーバッチもでしょ、結局脚色賞だけだもの もう5~6年前のことで今さらなんですけど、なんか悔しいなあ、 それほど映画としてもカンバーバッチの演技も素晴らしかった。傑作、秀作だと思う。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2020-02-18 21:53:09) |
【なますて】さん [インターネット(字幕)] 5点(2019-12-28 06:15:53) |
77.《ネタバレ》 暗号キーが毎日変わる上に暗号元の平文の内容が分からないのに 解読する為に論理回路もそうだし 平文が正しい文章である事を解析する為の構文解析が必要だから 絶対無理だよなぁって思いながら見てました。 手でこれをやると結果を見て文章だと分かりますが 機械にはわかりませんからねぇ。 今ならGoogle翻訳使えばよいですが。 なので、定型文がある事を気づいたシーンは あぁー、これなら総当たりでいける。 と、個人的にかなり熱い展開でした。 で、そこで終わると思いきや それを全部使わう事によるリスクにすぐ気づくのが あぁーなるほどって感じでした。 確かにばれたら詰みますね。 高校野球でサイン盗むが問題になるのも やりすぎるからですからねぇ。 で、その後のパートはだいぶ重すぎて なかなか爽快感のある終わり方ではなかったですが、 途中の展開はかなり好みの映画でした。 ってことで8点で なお、コンピューターの元はノイマンだけ知ってましたが、 チューニングもそうだったのですね。 【シネマレビュー管理人】さん [地上波(吹替)] 8点(2019-07-22 21:10:18) (良:1票) |
76.《ネタバレ》 天才数学者を巡る良質なミステリーであり、社会の不条理に殺された孤独な男のラブストーリーでもある。非常に強いこだわりを持ち、協調性に欠けたアランの言動は普通の人なら避けたくなるタイプだが、その発達障害を持つ当事者なら共感するところはあるのではないか? 彼は戦争終結を早め、コンピューターの父という、世界レベルの功績を残した。だが、機密保持が優先である故に、理解者に励まされても何の慰めにもならず、多くの人がしている普通の生活を切望していたあたり、マジョリティーの世界との深い断絶を感じてしまって切ない。戦時下での判断が救える人と見捨てられる人の数を決めるように、そのボタンの掛け違えで、もしクリストファーが生きていたら、同性愛が禁止されていなかったら、歴史が大きく変わっていても彼に救いはあったのだろうか? |
75.《ネタバレ》 エニグマを最初に解いたときはグッときた。けど、全体的に暗くてアンハッピーで、フラストレーションがたまる。 【センブリーヌ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2019-05-21 00:16:41) |
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74.所々自分には理解できない部分があり、おやっ?と首をかしげる部分があるが、ストーリーは飽きさせないグイグイ引き込まれる所があり面白かった。 ただ、同性愛関係の部分が自分にはあわず、モヤっとした。 【miso】さん [地上波(字幕)] 7点(2019-05-17 00:04:43) |
73.《ネタバレ》 恐らくほぼ事実に基づいたストーリーなのだと思いますが、 民主主義の街で100年も経っていないのに、価値観が異なる世界。 今後100年で世界はどう変わっていくのだろう? と恐怖を感じてしまう。 解読できるヒントを掴むシーンは当時の事実に基づいているだろうか? 事実では無いとしたら、ちょっと安易な発想だと思った。 |
72.伝記があまり得意でない自分にとっては物語りは軽快で見易さとしてはまあまあです。 ただエニグマ解読という難解なミッションとチューリングの秘密という2つのストーリーが混在しすぎてバランスが悪い。 また本作はビューティフルマインドみたいに数学の天才ということを披露する場面が弱かったように思う。 数学者というより機械いじりが好きなエンジニアみたい。 そういった意味ではやや消化不良である。 人よりも長けている部分があれば欠けている分部もある、それを人との出会いによってカバーしていくというのは嫌いじゃない。 |
71.《ネタバレ》 ベネディクト・カンバーバッチ出演以外の知識無く、prime videoで適当に選んだ何の期待も無く観た作品が大当たり。 天才数学者に纏わる物語が見事に交通整理された三つの時系列でもって描かれた奥行きの深い作品。 第二次大戦時ドイツ軍の暗号解読に成功した勲章ものの功労者に対するヒトラー総統と大して違いのない国の仕打ちが余りにも酷い。チャーチルは何をやっとったんじゃ(怒) 収監よりホルモン治療を選び衰えてしまったチューリングがクリストファーと別れたくないと泣く姿に胸を衝かれる。非業の最期をテロップのみで示してくれた演出により、悔し涙が止まらない事態は避けられた。半世紀の時を経ての謝罪やら恩赦に、国としての取り返しのつかない損失を思い知ればいい。 主役はベネディクト・カンバーバッチ以外考えられず、一世一代の名演技に拍手喝采。 |
70.《ネタバレ》 エニグマの解読機、ついに成功! でも物語の焦点はここからでした。 解読して、すぐに対応策を実行に移すと、敵に暗号を解読していることがバレてしまうため、助ける命と見捨てる命を選別。その結果、戦争を早く終結させることができ、多くの人の命を救いました。現代に生きる私たちからすると、その判断の良し悪しよりも「戦争を起こしたこと自体が悪」という結論を下すかもしれません。ですが、その当時の人々にとっては、命を選別することも、この事実を機密事項としたことも、同性愛を犯罪として扱ったことも、すべて「正しい判断」だったのだと思います。 過去の選択を「過ち」と判断するのは、現代という時代性。その価値基準や行為も、数十年後・数百年後から振り返ると「とんでもない過ち」なのかもしれません。正しい判断というのは「時代に合っている」ということなんでしょう。 いつの世も、必要なのは、天才よりも天才を上手に活かすことのできる人なのかもしれませんね。アランのような天才的頭脳を、この時代は「暗号解読」にしか使えなかったバカバカしさ、同性愛者ということで心身をボロボロにされて、果ては自殺させてしまう愚かさ。 いろいろなメッセージを、興味深くしっかりと感じさせてくれる本作品は、映画として非常に優れていると思いますが、個人的には、彼の功績が後の社会に大きな影響を与えていることの救いよりも、時代の巡り合わせが悪かったとしか言いようのない彼の人生の哀しさがズッシリと胸に残り、重苦しい気持ちにさせられました。 【ramo】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-03-05 18:39:11) (良:2票) |
69.《ネタバレ》 エニグマ解読の成功を何年も隠しながら味方の犠牲に目を瞑り続ける、是即ち戦争終結を2年以上早めて1400万人の命が救われたという歴史家の論理。この辺は日本への原爆投下同様、勝者が歴史を作るのが世の常なんだろうけど、もうちょっと検証してほしいですね。このような作品を見ていると論理的冷徹さが勝者への必要条件だということを思い知らされます。生まれてくる時代がちょっと早かったために悲運に見舞われたLGBTの主人公、冷徹な見方をすればこれも社会環境の進化の一過程なんですか。映画の方は登場人物等かなり脚色されているように見受けられましたが、同時進行の3時代の映像や構成のバランスが素晴らしいのであっという間に引き込まれました。 【ProPace】さん [CS・衛星(吹替)] 8点(2018-01-30 22:05:53) |
68.エニグマ解読の裏に、こんなドラマがあったとは・・・すごい。 【へまち】さん [インターネット(字幕)] 8点(2018-01-20 10:07:22) |
67.《ネタバレ》 カンバーバッチの芝居が「いかにも奇人の天才感」満載で素晴らしいですし、映画の中で「決まり切った言葉をもとに解析すりゃいいんじゃん!」とひらめいてからのシーンは観てるこっちもテンション上がるし、全体に真摯な内容で「名画ならではのオーラ」が漂っている素晴らしい映画だと思います。 とても素晴らしい映画だとは思いますが、この手の映画は個人的には「なるほどね」以上の想いを抱けない、つまり心が動かない映画なので、(あくまで個人的には)高い点数にはなりえません。 客観的には9点級の映画だと思いますが、個人的に点数をつければよくて7点といったところです。もうしわけないです。 同性愛に関しては1960年代まではイギリスもあんなんだったんですね。てか「同性愛で男性が捕まった」とあったんですがってことは女性は捕まらないわけですね。 それ自体が性差別なんですけど…と思ってしまう2010年代に暮らしてる我々にはなかなか信じがたい事が割と最近まで普通にあったんだなという事に驚きです。 あと、昔の戦争映画では望んでも不可能だった事が今はCGで簡単に表現できるんだなぁ、という事を感じました。 映画中出てくるドイツの飛行機はユンカースだしハインケルだし、戦車は3号戦車だし。 昔の戦争映画であれば「アメリカやイギリスの練習機あたりを改装してそれっぽくしてる」程度のひどい代物が使われているのが普通で、観ている側としては「明らかに本物と違うじゃん」と言う事でテンションダダ下がりだったわけですが、昨今の映画はCG技術で簡単にそれを実現できてしまうわけです。 20年後、30年後の映画ってどうなってるのかなぁ、と思っちゃいます。 【あばれて万歳】さん [インターネット(字幕)] 7点(2018-01-06 12:19:00) |
66.実在した人物と実話を元にした映画です。天才の業績と悲劇に、心打たれます。映画としてどうか、というところでは、主演のベネディクト・カンバーバッチの存在感によるところが大だと感じました。声に深みがあり、知的な雰囲気が魅力的です。 偉業を成し遂げた人に正当な評価をしてこなかった社会に対し、この映画が担っている役割は大きいのではないでしょうか。 【あきさん】さん [映画館(字幕)] 7点(2017-03-20 08:04:28) |
65.「誰も想像しない人物が、想像しない偉業を成し遂げる」に始まり、「ドイツは愛で戦争に負けた」とか、「運が良ければ2度と会うことはない」とか、「あなたが普通じゃないから、世界はこんなにすばらしい」とか、そしてラストの「今、我々はそれをコンピュータと呼ぶ」まで、セリフの1つ1つが実に洗練されていてグサグサ来ます。派手なドンパチのシーンより、言葉の選び方が強い印象を残すこともある。文句なく秀作。 【眉山】さん [インターネット(字幕)] 9点(2017-03-04 03:10:29) (良:1票) |