1.《ネタバレ》 まずは雨音の響きから始まる。
その低く静かな響きは、映画がSEに対しても丁寧に演出を施していることを直感させる。
物々交換に出た母娘が食事を摂る河原のせせらぎ、境内に響く蝉の鳴き声とそれに照応するラジオのノイズ、
ラスト近くで再び降り出す小雨の音など、印象的なシーンは
ことごとくそれらの環境音が場面の官能性を一段と高めている。
映画は冒頭から家屋セットでの芝居が中心で、予算の制約も確かにあるのだろうが、
神社の坂道や子供達が川遊びをしている川にかかる橋など、見栄えのあるロケーション
も様々に取り込んでいて作り手の意欲はよく伝わる。決して貧相ではない。
解説で確認しなくともはっきりフィルム撮影とわかる画面の肌理も昭和の味がある。
空の題名を持ちながら全体を通しても空のショットは非常に少なく、前半は
Bの編隊が飛ぶ赤黒い空くらいのものだが、それだけに青空が大写しとなる工藤夕貴と
二階堂ふみの川原のシーンはやはり特別なのだ。
食事の映画でもあるが、それは時代背景描写にとどまらずそれぞれの関係性や心情を
慎ましやかに炙り出す描写としてあるところが素晴らしい。
二階堂ふみのラストのストップモーションも絶品だ。