1.《ネタバレ》 登場するロケーションが基本的に見晴らしの良い高台。山の手である。よって生活感も希薄。メルヘンチックですらある。
が、開き直ってそれに徹しているところがいい。全編通して清潔感に満ちた映画だ。
風通しのよい坂道や勾配は、主舞台の長野、そして母親の故郷も小豆島に設定することで
徹底され、そこに必須アイテムである自転車滑走シーンを入れ込むことも抜かりない。
手紙の朗読、そして橋本愛の涙。その単調な繰り返しになってしまいそうなところ、そうした運動を取り込んで映画を維持している。
病院の屋上、車椅子の宮崎あおいに、ユースケ・サンタマリアが背後から優しく手を差し出すと、彼女がそれを握り返す。
同様の触れ合いが吉田監督の『旅立ちの唄』にもあったが、他にも頭をなでたり、CDを手渡したりというスキンシップを
おろそかにしていないのがいい。
終盤に登場する結婚式のベールのエピソードが感動的なのは、回想ショットで宮崎あおいが心を込めて手編みする指の動きの美しさゆえである。
宮崎から橋本にベールが受け渡されるショット繋ぎの美しさと二人の表情の素晴らしさに打たれる。
クライマックスが『アタック25』出演というのも、なかなか大胆である。