3.《ネタバレ》 マイルス・デイヴィスが引退した1975年から数年。
健康状態の悪化により入退院を繰り返しているうちに、コカインやアルコールなどに
溺れて生活は荒み切っていたという。
それでも、音楽に対する情熱は冷めずにいて、ひっそりとスタジオ入りして
セッションを行った事もあるらしい。
本作はそんな「幻のセッション音源」をめぐる騒動を主軸に、現在と過去を行き来しながら
マイルス・デイヴィスという偉大なるミュージシャンの姿を描く。
個人的に気に入ったのは、ありがちな伝記物語になってないところ。
類まれなる才能ゆえに早くから頭角を現し、時代の寵児になって、でもドラッグに溺れて、
愛する女性に支えらえ&愛想つかされ、そんな彼の晩年は悲しい色やねん~的な。
ぜんぜん、そういうのと違いますー。
レコード会社や野心家のプロデューサーらがこぞって狙う「幻のテープ」。
これがマクガフィンとなって映画を転がし、ユアン・マクレガー扮する音楽ライター
(見た目ふかわりょう)とのコンビが、バディムービー調でちょっと弾む。
「スケッチ・オブ・スペイン」のジャケットが飾られたレコード会社のエレベーターの中から
するっと過去に移動したり、転んで床に倒れこむ人物のマッチカットで現在に戻ったりする
映画のマジックが楽しい演出も個人的に好き。
演奏シーンと回想シーンのつなぎ方や、時間と場所の飛ばし方なども手際がよくて、
編集もイイと思いますね。
あとは、とにもかくにも音楽です。演奏シーンはマイルスの音源を使っているのが殆どで、
聞き惚れてしまう。特に彼のファンでもなかった自分でも思わず身体が揺れる(笑)。
特にラストのライブ・シーンのカッコ良さったら!!
もしやと思ってエンド・クレジットを確認したら、やっぱりハービー・ハンコックと
ウェイン・ショーターが参加していました(泣)。
ドン・チードルも嗄声のボソボソ喋りで役作りを頑張ってた感じ。
最後のステージなんて、すごいサマになってて震えます。
音楽ファンの方にはオススメ。