1.《ネタバレ》 テネシー・ウィリアムズの戯曲が原作です。テネシー・ウィリアムズというと登場人物のカップルが激しく刺々しいセリフをぶつけ合うというイメージがどうしても付きまといますけど、本作に限ってはとても彼の原作とは思えない落ち着いたストーリーをじっくり堪能できます。 家が隣同士の牧師の娘と医者の息子の、長すぎた春という風情の悲恋物語であります。この娘をジェラルディン・ペイジが演じます。ジェラルディン・ペイジと言えば『バウンティフルへの旅』でオスカー受賞したあのお婆ちゃんですが、彼女にも当然若い時があったわけで(失礼)、その落ち着いた美貌は牧師の娘という役柄にピッタリです。医者の息子はローレンス・ハーヴェイで、彼も親父の跡を継ぐべく医大に進むんですが、ギャンブルに目がない典型的なドラ息子になってしまいます。牧師の娘も、近所の娘たちに音楽を教えながら頭がおかしくなってしまった母親の面倒を見ているオールドミスというありがちなパターンの人生を送って三十路になってしまいます。どっぷり信仰に浸って生きてきたジェラルディン・ペイジの心を吹き抜ける“肉体のすきま風”がこの映画のテーマというわけですけど、この邦題はストーリーを暗示する優れものではないでしょうか。ここでぜひ注目していただきたいのはローレンス・ハーヴェイの存在感で、英国人の彼が南部のボンボンドラ息子を見事に演じ切っています。早世しちゃった人ですが、もっと長生きしていればきっと名優として記憶される存在になってたはずで、実に惜しいです。 パターン化したメロドラマじゃないかという見方もできますけど、俳優の演技がじっくり愉しめる映画でもあります。