1.一応はコメディに分類されているものの、笑える場面はまったくありません。テーマがテーマだけにストレートに描いてしまうと怒っちゃう人もいるので、監督も俳優も「コメディで~す」と表面上は道化を装っているだけで、かなり真剣に作られた作品だと感じました。
軍需産業は金になる上に、有象無象が出入りするおかしな業界らしい。アンドリュー・ニコル監督の『ロード・オブ・ウォー』でも扱われていたテーマですが、このテーマは映画としては面白くなるようです。秘密の多い業界の内幕を垣間見ることができる上に、若者が一発逆転の大成功を収め、そして自滅していく様がドラマティックであり、盛り上がるポイントがとにかく多いのです。
また、当事者たちのモラルが低下していく様もうまく描かれています。主人公も彼女も「私は戦争に反対している。武器を売るなんてことに加担できない」と言っていたのに、武器取引で自分たちの懐にどれだけの大金が入ってくるかを教えられると、商売を肯定してしまうんですね。彼女に至っては、「武器を売ることではなく、私に相談がなかったことを批判してるの」とよく分からない論点のすり替えまでを始めます。大金を見せられればたいていの思想信条はひっくり返る。人ってそういうものだと思います。
ただし、前述した『ロード・オブ・ウォー』と比較すると仕掛けがひとつ足りておらず、実際に起こった事件の顛末を描くにとどまった内容になったことが、本作のリミッターになっています。よくできた良作というところでしょうか。