3.《ネタバレ》 都市伝説としてまことしやかに流れる噂の中の人物、記憶屋。記憶屋はどこからともなく現れ人々の記憶を消すと言う。そんな記憶屋を巡って話が流れるのですが、この映画は記憶屋を探す探偵的要素が大半を占めます。記憶屋とは誰で、どこにいったら会えるのか、手がかりを求めあっちこっちへ。記憶屋そのものがどうと言うことより足取りを追うほうにウェイトを置きすぎていた印象です。ただの人探しなら別に「記憶屋」なんて特殊なものをテーマに扱う必要はない。
記憶屋についてもっと掘り下げて欲しかった。記憶屋とは本当に記憶を消すだけなのか、取った記憶は戻せないのか、記憶屋は取った記憶を自分のものにするのか、見たくない記憶も強制的に見てしまうのか、他にも記憶屋と呼ばれる人たちはいるのか、など、見ていて気になるところはたくさんあったがほとんどそれが解消されることはなかった。
「記憶には忘れたほうがいいものもある」「いやどんな記憶でも消してしまうなんておかしい。ずっと抱えて生きていくべきだ。」
という、なんだか他の映画でも聞いたことがありそうな話をずっとしています。そもそも別に記憶屋という話でなくてもこういうことがテーマになることはよくあって、そういう意味では別段珍しい話ではない。
個人的には、別に私は理想主義というわけではないですが、どんな記憶でも持って生きていけば良いと思います。それがたとえひどい事件の被害者としての記憶だったとしても、それをどう受け止め吸収するかはその人次第。その経験をもとにその人の人生がどう変わるかは誰にも分からない。そんな可能性を第三者の誰かの判断で変えることにはやはり違和感がありました。あくまで自分なら、という話で別にそれを誰か他人に押し付けようとは思いません。結局、その当事者がそれで良いなら記憶屋でもなんでも利用すれば良いと思う。つまり、どっちでもいい。
主役の彼も、消さなくても良い記憶まで消した幼馴染に対してどういうメンタルで許すことができたんだろう。その辺りの描写が全く不十分で、結局この映画のほとんどに人に感情移入できなかったことがそのままこの映画の評価になっていると感じた。製作の人たちがやりたいようにやっただけ、という印象です。それがうまく転ぶパターンもあるんでしょうが。。。