1.《ネタバレ》 これは超が付くほどストレートな青春ドラマです。音楽で自らを表現して成功したい、という若者は文字通り星の数ほどいると思いますが、その中の一人であるヒロイン未央は、他の殆どの若者たちと同様、幸運な波に乗ることは叶わず、さりとて音楽の道を諦めることも出来ず、不本意ながらも地下アイドルとして細々と活動しています。人気ミュージシャンとの恋仲は、もしかしたら未来への希望の光でもあったのかもしれないけれど、結局は騙され捨てられ、事務所はクビに。コアなファンからは叩きのめされ、全てを失いながらも生きる力はかろうじて失わずにいた彼女は、自らを愛し励ましてくれる家族や本当の友人たちに力と希望を与えられ、改めて夢の実現に向かってチャレンジを始める、という決して目新しくはない、寧ろベタなストーリーと思えてしまうけれど、主演女優が、実際に長きにわたって苦労を重ねながら活動し続けているインディーズミュージシャンで、自らをヒロインに同期して自然体で演じ、かつ抜群の歌唱力をもって主題歌を熱く歌っている姿を観ると、ヒロインと彼女がオーバーラップして、まるでドキュメンタリーのような現実味を感じさせてくれます。尺の短さゆえに、背景やディテールは想像するしかないというところに少し物足りなさ、と言うかお約束感も感じますが、中心を成しているストーリーが明快なので、ひとつひとつの何故?どうして?は忘れさせてくれます。低予算で撮影期間も一週間程度だったとの話ですが、このシンプルなストーリーを短い尺に凝縮し、演技に不慣れな出演者も多い中、スムーズかつスピーディに展開させているのは、品川監督の技量に頼るところが相当大きいのではないかと思います。これから先、ヒロインが成功するのか再び挫折してしまうのか、それは全く分からないけれど、夢を追うことが一人の人間の人生にとっていかに重要なファクターなのか、更にはその情熱がそこに関わる他の人間にも多大な影響を与え得るということを教えてくれる、爽やかな中にもしっかりとした重みのある青春劇に9点献上です。