2.《ネタバレ》 出演者の安全と匿名性を確保するためにアニメーションにする手法は、
アリ・フォルマン監督の『戦場でワルツを』を思い出す(参考にしていたらしい)。
双方ともアニメでワンクッション置くことで、"虚構"が入り混じり、私小説を読んでいるような感覚になる。
カクカクな動きもまた、不確かな記憶という映像の中で想像の余地が広がっていく。
難民を扱った映画は数多くあるが、本作では同性愛者という二重の苦悩を抱えている点である。
国によっては"存在しない"扱いになっており、自分らしく生きられることがどれだけ尊いことか、
先進国で生まれ育った人にはなかなか実感できない。
家族と再会後にゲイと告白し、長兄がゲイクラブに連れて行ったエピソードが印象深い。
ソ連崩壊直後の難民としての生活、そして彼らに対する扱い方は現代の日本でもそこまで変わらない気がする。
もちろん弱者の味方のフリをしてシノギとする団体がいて、不信感として向けられていることは否定できない。
綺麗事だけでは人を助けられない、余裕がない国ほど反動で排他的になるのは仕方ないにしても、
日本もアフガンやウクライナになったらどうするか想像力を巡らしたい。
一般人が国を守るために武器を持って戦うみたいなこと、イザとなったら何もできないから同じ難民になるだけかと。