4.《ネタバレ》 鬼気迫る北斎の演技だった。
柳楽くんも田中泯さんも・・
物語りは北斎の名作の誕生に迫っている。
4章から成る。
1章は、写楽、歌麿と競い合い、中々評価の定まらない時期。
波の絵で一皮むける。
2章は、嫁をとり、娘が生まれるまで・・
途中、歌麿の手鎖事件のエピソードをはさみ、
3章の戯作者種彦の壮絶な最期の伏線となる。
3章から老年期に入り、田中泯が、絵師を見事に演じる。
彼の存在感と、役柄の北斎が、お互い両者譲らずで、負けてないのがスゴイ。
圧巻は、突風が吹いたときの庶民の姿をとらえた時の、北斎の表情だ。
その後、病に倒れるが、そこで雨の中の絵の具との戯れから、
あの誰もが知る「波」の表現についに至る。
しかし、同時進行で種彦との交流も描かれており、
3章のラストで、種彦の「討ち」死にが描かれる。
種彦が時の幕府の風俗取り締まりに逆らってまでも、
武家の身分で戯作をつづける覚悟を示したからだ。
北斎はここで、すさまじい絵を残す。それはあまり知られてない絵だった。
描き終わった後の仕事場は、戦場さながらだ。
最終章は、こんな江戸から逃げる。
そして旅先で、ついに若い頃の「波」の大作をしあげるのだ。
北斎の娘も只人ではないオーラをしめすが、そこは深く描かない。
鑑賞後、田中泯さんの表情が頭にこびりついて離れなかった。
それほどの怪演だった。
テーマは一貫している。
蔦屋の取り締まりから始まるこの映画は、一貫して、表現したいことを表現して
何が悪い、それを押さえつけるお上への非難になっている。