1.《ネタバレ》 2000年代後半、南米ボリビアのメノナイト(キリスト教一派)のコミュニティで日常的に起きていた昏睡中の性暴行事件。
その実話をモチーフに2010年の南十字星の見える英語圏某所に移し替え、
文字の読み書きも許されなかった被害者女性たちの決断。
テーマがテーマだけあり、娯楽要素を捨て去ってまで訴えたストイックな社会派会話劇。
去るか、闘うか、赦すか──
18世紀同然の生活を営む彼女たちと次世代の子供たちの未来を大きく左右する重い選択。
力では負けてしまう女性の立場なら、女性全員で村を去るでお終いだが、本当にそれで良いのか?
その三つの選択をさらに深掘りして、民主主義が如何に築かれ、秩序が作られていくか、社会の問題が浮き彫りにされていく。
閉鎖的な世界で赦しの名のもとに弱き者への暴力の正当化。
宗教は救いにもなれば、都合の良い思考停止の暴力装置にもなりえるのだ。
次の世代へ負の連鎖を繰り返されないために価値観のアップデートと教育の大切さが可視化され、
それを担うのが外の世界を知っている書記担当の男性なのが皮肉に思える。
彼女たちは新たな"国家"の建設を目指し、モーセの出エジプトの如く大移動する。
希望の船出のように見えて、その一本の道が海のように閉ざされることはない。
家畜もいないと分かれば、時代遅れの屈強な男たちが連れ戻すために逆襲するだろう。
新たな秩序を築くだろう彼女たちがどう動くか、我々が生きているこれからの時代とリンクしている。