1.《ネタバレ》 1998年のオリジナル版と筋書きはほぼ同じ。
オリジナル版を難解にさせていた数学教師の設定から精神科医に変更されたことで、
分かり易く洗練された演出で生まれ変わったリメイクのお手本。
主人公を男性から女性に変更した理由。
凄惨な過去で心が壊れた女とその過去から逃げ続けようとする男たちの対比を、
循環性の象徴である"ウロボロスの輪"に例えたのだろう。
何度も読み上げられる娘の死、繰り返される復讐行為が廻りに廻って日常になっていく。
だが、男たちは馴れ馴れしく、常に都合の悪い話をはぐらかそうとする。
女は延々に廻り続ける生き地獄から絶対に逃がさない。
結末における芯の冷え切った台詞の数々がそれを象徴している。
オリジナル版と比べてダミアン・ボナールの影が薄く、
むしろ柴咲演じる主人公の掘り下げが増えたことを考えると合点がいく。
蛇のように低体温でじわじわ嬲っていく主人公の果てしない闇と虚無が視線から発せられるラスト。
全てが終わっても心穏やかに過ごせるわけでもなく、西島演じる患者のような末路を迎えてしまうのか。
復讐という名のウロボロスの輪に囚われ続けなければ生きていく理由を失ってしまうのかもしれない。
見ていて答え合わせしている感じは否めないが、
黒沢清の作風がフランス映画と親和性があり、ヨーロッパで評価されている理由に納得した。