28.《ネタバレ》 観終えてまず感じたのは、「事前に抱いていたイメージと大きく異なる作品だった」という戸惑い。
タイトルから想像する“政府の崩壊”や“内戦によるアメリカの最期”といった過酷な描写を期待していたのだが実際に描かれていたのは、
無秩序となったアメリカを舞台に旅を続けるジャーナリストたちの混乱を追うロードムービー。
戦争や内乱といった大きなテーマを、政府機能の不全や戦闘シーンの連続としてではなく、人間の心理や生活に焦点を当てた描き方は斬新。
また、ロードムービー形式を採用することで、地域性や人々のサバイバル描写に重きを置いている点も興味深い。
“戦乱”を生々しい戦闘シーンとして見せるのではなく、人々の混乱や心情を描いていくのだ。
一方で、タイトルが示唆するほどの「社会構造の劇的な崩壊」がはっきりと描かれていない点には??。
これはおそらく日本語題の問題だろう。作中では内乱が勃発した理由や政府の問題点が直接的に示されるわけでもなく、
大統領の独裁的行動や憲法違反があったらしい、という程度の断片的情報くらい。
そのため、なぜここまで大規模な内戦へ発展したのかが終始つかみづらく、観客として状況をのみこみきれないままストーリーが進んでしまう。
ジャーナリストの視点で“真実を追う”ことがテーマになっているにもかかわらず、彼らが事態の核心に切り込む場面は意外と少なく、
どこか取材の記録映像のように表面的な混乱を映すだけで終始してしまう。
そうなるとやはり内乱勃発の具体的理由や大統領の極悪さなどが説得力をもって描かれていない点が気になって仕方ない。
国民同士が殺し合うほどの内戦であるなら、もう少し観客側が理解できる“決定的な背景”がないと納得できない。
戦争行為の理不尽さを伝えたいのはわかるが、映画としての構成が粗雑に感じてしまうとどうしても付き合いきれなくなっていく。。
さらに、ジャーナリストたちの使命感を描くはずが、いつの間にか戦場を撮り続ける行為そのものが“カタルシス”のように映ってしまう。
実際の戦場カメラマンの持つトランス状態や使命感は、もっと切実で非情なものであるはずだ。
作品の最後では主人公が不思議な“達成感”に包まれているようにも見え、観ている私が取り残されたような違和感に包まれる。
もし、こんなことが起きたら。という状況でのある種のSFのロードムービーとして、
“報道”の持つ意義や危うさ、そして混沌の中にいる人間ドラマを描いている点は評価できるのだろうが、
もう一度観るかと聞かれたら、しばらくは結構です。と答えます。