63.《ネタバレ》 小津映画は苦手だ。
それでもサイレント期の傑作群を見て小津がどうして巨匠と言われるのか納得した今の自分には、それほどハードルを感じる監督では無くなっていた。
戦後の作品にしても「長屋紳士録」や「浮草」は楽しく見れたりした。
でも「東京物語」の頃は不安・・・と思っていたが、今回は予想に反して退屈せず最後まで見る事が出来た。
時折流れる音楽もそうだが、冒頭の電車のシーンや小気味良い会話などテンポも悪くないし、「こっち」のやり取りやおばさんのコミカルな役どころなど面白い。
あの原節子の作り笑いにしても、計算済みの演出だったので好印象だ。
「父は私がいないと駄目なのよ」
愛想笑いの仮面、でも本当はお父さんと別れるのが寂しいパパッ子である。
確かに最初こそ例の不気味な笑みで背中に悪寒が奔るほどゾッとしたものだが、自分の本心を突かれた時に見せた真顔。
「どうしてそんな事を言うのよ?」とでも言いたげな苦々しげな表情。
父親と結婚するという女性に対して見せた表情もそう。
拶代わりの愛想笑いから「あんな女・・・」と睨むような表情に変わる。うーむ、こういう表情の節子を小津映画でずっと見たかった。40分我慢した甲斐があった。
喜怒哀楽豊かな綾子との対比も印象的。綾ちゃんマジいい女。
オマケに目に光が入っているかいないかも注目だ。
作り笑いの時は光がほとんどさしていなかった節子。
ところが旅行先で父に見せた時の笑顔、結婚式を迎える場面の笑みには目に光があった。
「お父さんと離れたくないの」。ノーブラの無謀なたゆんたゆんおっぱいが余計に子供っぽさを物語る(スイマセンね下品な話になってしまって)。恐るべし小津演出。
「麦秋」でもノーブラ乳くb(ry
結婚相手のゲイリー・クーパー(クーちゃん)は拝めなかったが、きっと良い男に違いない。
お父さんの問いかけは少し説教臭くも感じたが、二人きりで娘を諭すならああでも言わんといけんか。
最初と最後で佇む「波」は何を語り、リンゴを剥く父は眠ったのか息を引き取ったのか。気になるラストだった。