4.琥珀色の光の中に浮かび上がる、窓辺に置かれた白い陶器。それを一心に見つめる少年の表情。そして、その全身像のシルエット。
映画の中で、波山が陶芸家に転身する動機らしきものを直接的に表すのはこの短い三つのショットのみである。
映画は説明に多弁を弄することなく、窯やランプの炎とオーヴァー・ラップする榎木孝明の顔や、長女(大平奈津美)がホタルの光や薪や星を一心に見つめる姿を通して波山の真情・感受性をあくまで寡黙に、間接的に、映画的に語りきる。
二人のロクロ師(柳ユーレイ、康すおん)が波山に心酔し協力することになる経緯も、一切の説明を省き、行動そのもので示されるのも簡潔にして雄弁だ。
そのアプローチにこそ、彼の陶芸の作風と矜持に対する作り手の映画的リスペクトが表れている。
明治期のランプや、窓からの外光など、単一の合理的光源を活かした金沢正夫の照明・芹沢明子の撮影もその任の多くを担う。
住職から返された陶器と、榎木を窓辺におさめたラストショット。
木々の揺れと慎ましい自然光の美しさに、妻と子供たちの楽しげな童謡と笑い声がオフで入ってくる。
端正・素朴でありながら、豊かな情感に満ちた素晴らしいラストだ。