2.《ネタバレ》 映画こそ「完結編」だが、原作の長編小説(18巻)のまだ中程である。第一部の映画が制作されたとき、作者五味川純平はすでに12巻まで完成させており、この第三部に続き続編も作られるはずであった。しかし、日活の社運をかけて投じられたこのシリーズも資金面が力尽き、三巻で打ち切られてしまいった。太平洋戦争から戦後の東京裁判へと続く流れが描かれず終わってしまったのは実に残念という他はない。
しかしこの第三部は、第一部と同様に大変なできばえである。戦争を食い物にのし上がる財閥、無謀な戦争をひたすら突き進む日本軍、軍国主義に翻弄される人々、戦争によって親兄弟を亡くした日本人や中国の人々、映画は残酷なまでに赤裸々に戦争とは何かを描き続ける。
今回またDVDで10時間に及ぶドラマを2日間に分けて再鑑賞したが、せひとも他の方々にも通して見てほしいと思う。
さまざまなシーンが目に浮かぶが、吉永小百合や夏純子らの愛する男に尽くす女心が痛々しい。戦争を知らない世代が、何かと他国の批判をする現世にあって、人の命の尊さと平和のありがたさを感じられずにはいられなかった。