1. ニノチカ
これはもう傑作です。脚本がいいんですねぇ、セリフがとっても面白い。ガチガチのソ連から来た美女が、フランスの貴族と恋に落ちるラブコメディ。前半の固くニコリともしないガルボが後半は恋に悩み笑い、と人間らしい感情を出している。価値観の全く違う国の男女だから会話してもかみ合わず、風変わりなことこの上ない。たとえば二人が初めて良いムードになる部屋での会話。僕をどう思う?って聞くと「悪くないわ、白目は澄んでいるし、角膜は申し分ない」って調子。およそムードはないし生真面目すぎる口調なんだけど、それがまたおかしくて大笑い。せりふがおしゃれでうまい、と思ったらビリー・ワイルダーを含めた3人で書いて、ルビッチが手直し。監督もワイルダーのお師匠さんのルビッチ。軽妙で後味もいい素晴らしい運びです。撮影は「裸の街」のW・ダニエルス。共演者も舞台俳優など達者な人達。すごく豪華なメンバーなんですねぇ。見るときはどうぞこの抱腹絶倒の会話を堪能してください。ガルボの意外なコメディエンヌぶりも見物です。私の一押しのラブコメ傑作「グッバイガール」が10点なので、これはそれ以上で文句なしの10点! 10点(2003-10-22 16:52:50)(良:1票) |
2. ニュールンベルグ裁判
これはいいです。62年の作品だからスペンサー・トレーシー晩年の頃の出演作。裁判長なんだけどとってもいい。弁護士役のマクシミリアン・シェルがアカデミー主演男優賞だったけど、この作品の出演者全員が素晴らしく良かった。バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、マレーネ・デートリッヒ、モンゴメリー・クリフト、ジュディ・ガーランド・・そうそうたるメンバーで裁判が進む。裁判はナチの首脳者たちではなくナチ時代の憲法起草の法律家・司法大臣などである。ウィドマークの検事が罪を追求するのに対して、司法大臣ヤニング(ランカスター)の教え子で彼を尊敬する弁護士(シェル)が「彼が有罪なら全ドイツ人が罪である」と熱弁する。裁判は勝者のものだから圧力もかかってくるが、ヘーウッド判事は公平な裁きをする。原作も彼の書いた回想録。戦争後の裁判に対して社会派スタンリー・クレイマー監督が問題提起をしている。俳優たちがみなその心意気に感じて熱演しているように思える。 <追記>「真実のマレーネデートリッヒ」を見たら、彼女がドイツ人将校未亡人としてナチの非道行為を、「(一般市民として)私たちは知らなかった」と言うセリフにとても悩んだ、というのがあった。するとS・トレーシーは「ナチに反対した君が言うから真実味がある。言うべきだ」といったそうだ。デートリッヒがこの役をやったのにも大きな意味があったんですね。 9点(2003-04-11 17:09:41) |
3. 21グラム
「それでも人生は続く、、」というフレーズからは「ミスティックリバー」が浮かび、次に「25時」が浮かんだ。 死と共に命の誕生の話も描かれるので「生の連鎖が続く」といったほうがいいかもしれない。 こういう映画が立て続けにアメリカで作られたのは9.11の影響なんだろうか、、? 人の生死や命、人生の重さを改めて考える、みたいな所に真摯なものを感じる。 全く関係のない3者を時間軸をずらせて見せるので特に話の見えない前半は判りにくいが、眺めていれば段々話はつながってくる。この作りにも何か意味はあるんだろうけど意図が分からない。 心臓疾患で生死を脅かされる男、死亡事故を起こし罪の意識に苦しむ男、一瞬にして最愛の家族を失った女、みなそれぞれに生きることに苦しんでいる。家族を含めての苦悩は見ていても辛く重苦しい。 喪失感に苦しむナオミ・ワッツには思わず一緒に泣かされるほどの迫力があったが他の出演者もみな見ごたえがある。 ベニチオが熱心なキリスト教信者でその教会シーンがあるが、説教は一方的なアジテーションの洗脳みたいで違和感がある。 アメリカと宗教の関係は深いが、こうなるとキリスト信仰も恐い気がする。 最後のS・ペンの行動や21グラムの意味など見る人にいろんな謎を問いかけてくる。私、魂の存在は信じてますけどね。 (彼は再度の移植が誰かの死によってしかなされないこと、やらなければ死が近く苦しみしかないこと、などに絶望してああいう選択をしたのか) 8点(2004-06-17 17:27:29) |
4. 25時(2002)
10年前から道を反れたモンティを親友も父親も恋人も本気で忠告したり救おうとしなかった。収監を目前にしてそれを悔やむ彼ら。もちろん自業自得ではある当人も。この場に及んで悔やんでも苦しんでも誰も過ぎたこの年月をやり直すことは出来ない。最後にもし西へ行ったら、、と語られる家族に囲まれた幸せなもう一つの人生。もしかして彼にはやってこないかもしれないこのくだりが切なく胸に迫って泣ける。地道に誠実に平穏に生き、家族を増やしつつ年を取っていく平凡でささやかな人生。「人生を無駄に生きるな」こんなメッセージがずっとリフレインしてます。黒猫さんはじめ皆さんの素晴らしいコメントに共感したりいろいろ教えられました。それ以上うまく表現もできないのですが、とにかくいろんな感慨をおこす作品でした。 8点(2004-05-15 16:33:24)(良:1票) |
5. 担え銃
戦争や兵士の悲惨さを、これだけ笑いの中に描いてしまうのがチャップリンらしく凄い!華奢で小さい兵士が大活躍する。短編ながら見所も笑いどころも満載の中身の濃い作品。 8点(2003-11-16 00:51:16) |
6. 2010年
意味がよく分からなかった2001年に比べ、こちらは分かりやすくメッセージを伝えてくる。宇宙でソ連とアメリカの宇宙飛行士が協力して脱出しなければならない時、地球では両国は敵対関係になりそれを宇宙空間にまで拡大しようとする。モノリスが増殖して木星は大爆発し太陽ができる。こういう壮大な宇宙の中で、小さな地球上での争いごとなど愚かしい、みんなで平和に暮らせというメッセージと二つの太陽というラストは印象深い。 7点(2004-09-14 18:05:15) |
7. 肉体と悪魔
美しい人妻が、夫、幼馴染の親友たちと男たちを次々魅了し、男たちは命までもかけることになる。この魅力的で妖艶な女性を22歳のガルボが演じている。この男を惑わすような、美しすぎる女性が一種の魔物であるかのように描かれるのも納得。ラストで彼女が川にはまって溺れると、決闘寸前の男たちが夢から覚めたような表情になる。サイレントで延々とバックに流れる単調な音楽に眠気を誘われるが、若いガルボとサイレント時代のハンサム男優、ジョン・ギルバートの共演第1作というだけでも貴重品。 6点(2004-02-26 15:26:03) |
8. 2001年宇宙の旅
最初見たときはただ映像が見事だとかその映像と「美しき青きドナウ」などのクラシック音楽が印象的くらいの印象しかなかった。でもいろんな意見を聞くと作品には深い意味が込められ、自由な解釈ができる作品ということで好奇心を刺激させられる。292番の【o0KIM o0】さんの紹介してくれたHPはとても面白くて参考になった。でもまだ自分なりに咀嚼して腑に落ちるまでには至らず消化不良な状態。それでも何回か見るうちに退屈はせず段々面白いと思うようにはなったので、納得するまでまた見るだろうと思う。 6点(2003-04-11 16:33:27) |
9. ニードフル・シングス
スティーブン・キングの原作だから話が含蓄に富んでておもしろい。古物商に姿を借りた悪魔が平和だった田舎町にやってきて、その人の欲しいものをえさに誰かを憎んだり、困らせたりあげくには互いに争わせて殺人までおきる。その異変の原因に気づいたエド・ハリスが悪魔を糾弾、自殺の道連れに炎の中で死んだと思われたのに不死身だから生きてて、またどこかの土地で同様のことをするだろうという終わり方。世界中のあらゆる揉め事、戦争もこういう悪魔に魅入られた人間の欲望の結果だというメッセージを感じる。単なるホラーのB級映画に見えるけどこうして見たらけっこう面白かった。 6点(2003-03-11 23:15:09) |