261. アンネの日記(1959)
《ネタバレ》 誰もが概要とそして結末を知っている実話であり、しかも日記という第一級の一次資料が残っているので、大きく逸脱するわけにもいかない。しかも性質上、場面と視点は常に隠れ家の中。これだけ制作上のハンデがあるものを、よくぞここまで作品化したものです。わずかな物音にも全員が一斉にぴたりと動きを止め、以後は呼吸すら躊躇われる静寂の(そして多くの場合は暗黒の)中。何もすることはできないし、じっと我慢するしかない。その反復が、見る側にも自然と息苦しさと圧迫感を惹起しますし、だからこそその中で意志を失わない(しかし決して超人ではない)アンネの存在を輝かせます。登場人物の動き方や台詞のタイミングなどからは、元は舞台用の脚本かな?ということも推測させたりはしますが、しかしそれに溺れることなく力強く映像化した手腕は見事です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-05-19 20:55:17) |
262. ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
素朴な疑問ですが、このシリーズって、どれもこれもどうしてこんなに尺が長いんでしょうね?一つ一つのシーンが無意味に長く、テンポも悪いし、何が表現したいのかも分からなくなっています。私にとっては、スネイプ先生の変な渋さくらいしか見所がありませんでした。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2022-05-17 23:18:51) |
263. 武器よさらば(1957)
《ネタバレ》 戦争を一応ネタとしつつ、描写の対象はほとんどそれとは関係ない、主人公2人のイチャイチャルンルンベタベタキャッキャウフフ(たまにメソメソ)をひたすら追いかけているだけ。これぞメロドラマ、と言いたいが、ここまで何も工夫がないと、それはメロドラマとは言いません。輪をかけてまずいのは、主人公の男に、最初から最後まで、およそ魅力というものが一切ないこと。常時何かあるとニヤニヤ笑っているだけだし、何かと言い訳ばかりしたがるし、よく見ると(見なくても)自分から能動的なことは何一つしていない。これほど魅力のないラブロマンス(一応)の主人公も珍しい、というくらいです。ジェニファー・ジョーンズも、「慕情」のわずか2年後とは思えないほどの老け方で、こちらも残念。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-05-17 00:24:46) |
264. ワンス・アンド・フォーエバー
《ネタバレ》 ベトナム戦争についてはすでにいろんな角度や切り口からの過去作があるわけで、その先にどういう内容を提示してくるのかと思ったら、何もありませんでした。しかもなおまずいのは、至る所に言い訳じみた描写が満ち満ちていること。円満な家庭とよくできた奥さんを示して、「この人は家ではいい人なんですよ~」と言ってみたり、人種差別問題への意識みたいなものをちらっと見せてみたり、申し訳程度にベトナム側視点も入れてみたりとか。結局、数日間の話でしかないにもかかわらず、中身はまったく分裂してしまいました。●あと、マデリーン・ストーの不細工厚化粧にもがっかり。夜中に夫を追いかけて外へ飛び出たときのノーメーク設定メイク(?)だけが唯一綺麗だったというのが皮肉です。 [DVD(字幕)] 2点(2022-05-16 00:23:41)(良:1票) |
265. ペリカン文書
そもそもジュリア・ロバーツが、無力な女子大生には全然見えないのですが(この人の場合、もともと老け顔だからなあ)。デンゼル扮する記者に協力を得るという設定なのですが、むしろ顎で使ってそうです。それはさておいても、何か壮大な陰謀とサスペンスを構築しようとしているのは窺えるのですが、話がどこまで行ってもチマチマした雰囲気で進んでいるので、結局何だったのと思ってしまいます。脇役も巧者揃いのはずなのですが、ほとんど生かされていません。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-05-15 16:14:49) |
266. ロビン・フッド(1991・ケビン・レイノルズ監督作品)
ストーリーは当然ながら勧善懲悪一直線なのですが、微妙なミスキャストの数々が案外楽しい。ケビン・コスナーは、悪の討伐に向かう正義の味方というよりも、ところどころ生活に疲れた中年みたいに見えるし、モーガン・フリーマンは、ほっとくと全部1人で持っていきそうなのを抑えるのに自分で必死。アラン・リックマンの悪役は「ダイ・ハード」みたいで存在感ありですが、あのメークとヘアはちょっとまずかったなあ、気取った反乱者というよりも、その辺のゴロツキ上がりに見えてしまう。メアリーは可愛くはあるんですが、出会いのところで武闘派でもあるっぽかったのは結局どうなったんだろう?とあれこれ突っ込みを入れながら見られる楽しい作品でした。ただ、このシンプルな内容にしては、尺が長すぎですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-11 01:30:35) |
267. ポリスアカデミー
導入部で、見る側の混乱などまったく考えずに怒濤のように登場人物を放り込む展開に好感。また、それでいて描き分けもそこそこきちんとできていますが、せっかくのネタの積み重ねが、中盤以降はあまり生かされなかったかなー。クスッとするシーンは多くても、大笑いするまでには至りませんでした。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-05-11 01:18:32) |
268. サバイバル・ソルジャー
《ネタバレ》 単に普段はビジネスのことしかないメンバーが、ヴァンダムに鍛えられてワーワーやるB級(いやC級)作品かと思っていたら・・・中盤以降の路線を逸脱しまくる展開にはびっくり。いつの間にかまるっきり変わっている作品世界が面白くて、とりあえず楽しんで見ることはできました。ただ、主人公の成長過程とか、サブキャラの設定とかにはもっとネタの仕込みが欲しかったところではありますが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-05-10 00:31:47) |
269. リオ・グランデの砦
《ネタバレ》 典型的西部劇シチュエーションの中で、親子がどうのとか夫婦がこうのとかいうのをやりたかったのでしょうけど、これが見事なほどかみ合っていないのだな・・・。妻の登場時にみんなが「誰この人」状態のリアクションになるのですが、作中の位置付け自体もその浮いたままで進んでしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-05-09 03:05:30) |
270. ニュルンベルク軍事裁判〈TVM〉
《ネタバレ》 一番びっくりしたのは、「そもそも裁判所をどこに作るか(物的な意味で)」「判事の構成はどうするか」「手続はどうするか」といった点を一から決めていたこと。まあ確かに、そういうことを決めたルールって存在しなかったのだから、そこから始めていくしかない。しかしその部分にこそこの一連の手続の根本目的が表れるわけであって、いきなり開廷とかではなく、その前置きにもきちんと着眼した点については評価したい。そしていざ開廷してからは、名前だけは聞いていたあの人この人が怒濤の登場です。その中でもゲーリングとシュペーアを対立軸のようにして進むわけですが、ごく限られた時間の描写ながら、それぞれの人物の特質に切り込んでいます。一方で、首席検事と秘書のどうのこうのとか、ゲーリングと看守のどうのこうのとかについては、エッセンス程度に入っているならまだしも、あそこまで時間はとらなくてよかったと思うけどなあ。それならば、ほかの被告人の描写にも時間を割いてほしいところでした。 [DVD(字幕)] 7点(2022-05-05 13:20:03) |
271. 素晴らしき哉、人生!(1946)
《ネタバレ》 どこがそんなに良いのか分からない。天使が出てきてからは多少面白くなるし、ラストは美しいと思うが、それまでが長過ぎで、しかも雑。そもそもこの主人公、いちいちメンタルが弱すぎで(負の方向だけではなく正の方向にも)、事業者には向いてないんじゃないかと思うが。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-05-03 01:34:00)(良:1票) |
272. 嵐ケ丘(1939)
《ネタバレ》 タイトルだけは知っていて、どんな文芸作品が出てくるのかと思っていたら、何とドロドロのメロドラマ!男の側も女の側も都合よくころころ気が変わっているところに、妙なリアリティがあります。本当はこの部分はもうちょっと間隔を空けたかったんじゃないのかとか、むしろこれって連ドラ向きなのではとか、気になるところはありますが、それでもこの重量感ある内容をここまでコンパクトかつシンプルにまとめた腕は特筆すべきです。後半はイザベラがいいアクセントになっていて、さらに心理の綾を深めていますね。それにしてもこれを見てしまうと、ケイト・ブッシュのあの曲のサビがさらに怖く聞こえます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-04-22 22:42:17) |
273. エネミー・ライン
《ネタバレ》 軍事系アクションのどこかで見たシーンをつなぎ合わせただけの作品。何といっても、主人公がまったく格好良くないのは致命的。唯一センスを感じたのは、逃走開始直後くらいの「画面上すぐ近くに取り囲まれているのに、気づかれない」シーンです。ここでは情報の遮断性あるいは片面性がスリルを高める効果を発揮しているのですが、そういうシーンはここだけでした。 [ブルーレイ(字幕)] 2点(2022-04-21 02:14:53) |
274. 若草物語(1994)
《ネタバレ》 前半は、もうとにかく倍速回しかと思うくらいいろんなエピソードが右から左に流れていって、まあびっくり。「エイミーの転落事故」にしても、「メグの舞踏会デビュー」にしても、「ジョーの25ドル」にしても、もっと本来はいろいろくっついているのですが。せめてクリスマスの父の帰還部分は、もうちょっとじっくりやってくれないと、その意味合い自体がやたら軽くなってしまわないか?で、後半は突然テンポが弛緩して、ウダウダの恋愛沙汰を中心に進んでいく。よって、最後も本当はいろいろ着地しているはずなのに、ゴール感がありません。結局、役者陣で一番存在感があったのって、途中出場のサマンサ・マシスではない? [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-04-17 02:04:05) |
275. ディープ・アンダーカバー
《ネタバレ》 主人公が潜入捜査官として組織の一員となり、重要人物(会計士)を拷問にかける・・・というのが軸なのですが、前半は、時系列を工夫したり、それっぽい示唆・伏線シーンもちりばめられたりと、工夫は見られます。しかし収束のところで、結局その辺を生かしきれず、つじつまも合わずに低調なまま終わってしまいました。まあ大体、キャスティングのフィッシュバーンとクロムウェルというのがいかんでしょ。画面に出てきただけでネタバレに近いです。 [DVD(字幕)] 4点(2022-04-11 00:12:20) |
276. 沈黙の復讐
《ネタバレ》 マフィアと手を組むってのが、まあ、ちょっと捻ったつもりなのでしょうが・・・かえってグシャグシャになっただけでした。しかもラスボスの平時の業が「侵入強盗」って、証拠残しまくりな上に金銭的な意味では効率も悪そうで、速攻で捕まるんじゃないか? [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-04-10 02:59:50) |
277. アンダー・ザ・シルバーレイク
不条理とか混沌というのは自然ににじみ出てくるべきものであって、こんなに正面から作為的に打ち出されると、それは単に自己完結しているだけなのです。それにしても長すぎ。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2022-04-09 01:21:48) |
278. 南部の反逆者
《ネタバレ》 裕福なお嬢様が、ある日黒人との混血であることが判明し、奴隷として売られる・・・というインパクトのありすぎる出だし。さぞやこれは大映ドラマばりのどろどろの展開が、と思っていたら、多少重苦しそうな描写はあれど、ゲーブル登場以降は何かその辺はあっさり解決されてしまう(笑)。そして中盤は主役の2人があれこれ逡巡する王道メロドラマ展開。これってそういう話だったっけ?という疑問も、この自信満々な進行にかき消される。一方でシドニー・ポワチエ扮する奴隷頭がスパイスとして登場するのだが、存在感ありすぎで、ちょっとでも出番が増えると意図せずして主役になってしまいそうな勢いなのである。と、いろいろバランスがおかしいながら、終盤へ向けて各登場人物が収束していく構成力はなかなかのものでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-04-03 00:41:49) |
279. ダーティファイター(1978)
いや、こんなユルユルでのんびりしててなーんも考えてないイーストウッド作品があったんですね。主人公がしていることは、一目で気に入ったお姉ちゃんを追いかけることと、行き先ごとに殴り合いの喧嘩をしていることの2つだけ。それ以外には作品の内容は本当に何もなし。というかウータン君に頼りすぎでしょ。困ったときにはとりあえず何かさせておくという感じで。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-03-29 01:47:58) |
280. デヴィッド・バーンのトゥルー・ストーリー
架空の町を舞台に、デヴィッド・バーンが案内をしていく・・・という仕立てなのですが。えーと、その、つまり、何がどうつながっているのかさっぱり分からない作品です。とりあえずこのカットが撮りたかった、と思しき今ひとつ趣旨不明なシーンが脈絡なくつながれているだけです。同名アルバムからのヘッズの楽曲にはつい耳と身体が反応しますが、見どころ(聴きどころ)はそこだけです。音楽の天才に映像の才能があるとは限らない、という当たり前の事実が隅々まで再確認できる作品でもあります。 [DVD(字幕)] 4点(2022-03-25 00:34:22) |