3.《ネタバレ》 虎に襲われる場面にて(これはもしや、ヴァン・ダムは序盤で退場して出て来なくなるパターンなのでは?)と危惧しちゃいましたが、そんな事は無くて一安心。
鮮やかな蹴りを披露してボスキャラを倒してくれるサービスシーンもありましたし「ヴァン・ダムは主演じゃないけど、彼のファンも満足出来るように作ってあるよ」という制作側の配慮が感じられましたね。
でも、映画自体は色々と粗が目立つというか……正直、観ていて退屈する時間の方が長かったです。
大人版「蠅の王」といった趣のストーリーなのですが「登場人物を子供から大人に置き換えたからこその魅力」のような物が全く感じられず、本当に舞台設定やプロットを拝借しただけって形なのが、如何にも寂しい。
「地獄の黙示録」や「コマンドー」をパロった場面でも、どうもテンションが上がらなくて「独自の魅力を打ち出せないから、他の作品の真似をしてみただけ」とすら思えたくらいです。
敢えて言うなら「会社では冴えない主人公が、無人島で活躍して同僚を見返してみせる」というカタルシスが本作独自の魅力なのかも知れませんが、その辺りも上手くやれてなかった気がするんですよね。
「日頃はダメ人間扱いされている主人公だけど、実は凄い奴だった」とは思えなくて、敵役になる同僚のフィルが無能で酷い奴だから、相対的にマシに見えるだけって感じなんです。
こういう「ダメ人間にとって都合の良い妄想映画」的なストーリーは自分も好きなんだけど、それだけに上手くやって欲しいというか……
(ダメ人間の自分から見ても、これは都合が良過ぎて嘘っぽいよ)と思えてしまったんだから、かなり辛かったです。
これなら「実は凄い奴だった」パターンじゃなくて「不器用ながらも無人島で頑張って成長し、周りに認められるようになる主人公」ってパターンの方が、もっと感情移入出来た気がしますね。
あと、これは我ながら贔屓目が過ぎると思うんですが、道化役を演じるヴァン・ダムが「恰好良い」「頼もしい」ってオーラを隠し切れていなかった事も、映画としてはマイナスポイントかも。
そんなヴァン・ダムを差し置いて、スター性に乏しいルックスの主人公が「恰好良くて、頼もしい存在」として描かれているもんだから、余計に説得力が薄れるし、胡散臭いキャラクターに思えちゃったんですよね。
本作はヴァン・ダムの出演が売りの映画なんでしょうけど、どちらかというと彼がいない方が完成度は高まったんじゃないかな、って気がしました。
ラストにて、フィルの偶像に火を放って救援の狼煙を上げる件は中々良かったし、詐欺師として逮捕される間際「刑務所宛てに手紙を書いて、面会にも来て欲しい」と主人公に頼みつつ敬礼して別れるヴァン・ダムはやっぱり良い味出していたしで、好きな場面も色々あるんですけどね。
「ヴァン・ダム出演映画は、一通りチェックしておきたい」という熱心なヴァン・ダム好きなら、ある程度は満足出来るかも知れませんが……
自分としてはオススメし難い、物足りない映画でした。