1221. ボディ・ターゲット
《ネタバレ》 冤罪ではなかったのは少し意外でした。実はしっかり強盗しちゃっていたんですね。「俺が本当は捕まるはずだったのに」とかはじめのほうで仲間のビリーが言うから、勘違いしていました。 そんで、いつもでしたら「お前悪いやつじゃん。」って偏見たっぷりになっちゃって、主人公に感情移入しづらいパターンのはずなんですけど、なかなかどうしてサム君(ヴァンダム)、良かったですよ。何より過去の過ちを後悔しているのが良いじゃないですか。 アクション映画は、絶対正義、スーパー超人、聖人君主みたいな人たちのほうが、面白いに決まってるじゃんって思っていましたが、なんか真っ白ではない、グレーな感じの主人公ってのもいいもんですね。決して完璧ではないサムが、大事にしたいと思える人たちに出会えて、その人たちのためにその腕力をふるうっていうのは、普段あんまり感じることないタイプのカタルシスを得られてなんか心地良かったです。 そのグレーの良さってのを堪能してもらうために子供を効果的に使うってのは、なんかずるいやん、って気もしますが、やっぱ子供がからむと作品に味わいが出ますね。特に今回の子役の二人はとっても良かった気がします。 ラストの30分、特に警察に追いかけられてからは片時も目を離さず見入っちゃうほど面白い展開になりましたね。ヴァンダムキックが見られなかったことだけがちょっと残念だったかな。 そうそう、脇役さんたちが良い味出していたのもこの映画の評価のポイントでしょう。特にロニーは良かったね。彼もなかなか良い灰色出していましたよ。 [DVD(字幕)] 7点(2013-07-08 01:58:28) |
1222. 逃亡者(1993)
《ネタバレ》 事前に期待感が大きくなりすぎていると、どうしても小さな粗が目についてしまうことってありませんか?普段なら娯楽作品見ているときは、「娯楽作品だから」ってスルーしちゃうんですけどね。 副作用を暴いたキンブルを殺すために、足のつかない殺し屋を雇って、でも殺し屋が間違って奥さん殺しちゃって、その濡れ衣がキンブルにかかったんで結果オーライってことなんでしょうけど、ただそれだけの背景が、最後まで見てもわかりにくい。あくまで「追いかけっこ」のスリルを楽しむサスペンスですから、背景はわかりやすほうが良いと思います。 また、ジェラード捜査官が、キンブルを追いかけながらも、再捜査を同時に始めたことにものすごい満足感と高揚感を覚えたものですが、「キンブルはもしかして白なんじゃ?」と思い始めているのに、後半刑務所でキンブルを追いかけたときに躊躇なく発砲したことにドン引きです。 ただ、ハリソンフォード演じるキンブルさんにはもう大満足。 この状況で黒人警察官助けた!そんで逃げた!また逃げた!またまた逃げ切った!真犯人探し始めた!真犯人探すためならって警官うじゃうじゃの病院や刑務所まで行っちゃう!・・・子供助けたー!追われているくせに、逆探知利用して警察に捜査の手がかりあげたー!すげえ!なんてすごい人だ! と、スーパーマン好きな僕には最高の人物設定でした。 ニコルズさんも、「キンブルは頭が良いから絶対に捕まらない」って何度も警察に言っていましたしね。 でも本当に頭が良い人は、あんな状況で冤罪にはならんと思いますけどね。 そうそう!最初冤罪で死刑判決受けたときに、「んなアホな。それは強引すぎるやろ!」と思っちゃったのがそもそもの始まりでした。惜しいな~。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-07-07 11:19:38) |
1223. 忘れられない人
《ネタバレ》 これは忘れられんですねー。 昔、「ストーカー」と「純愛」の違いは何か、と友人達と話したことがあります。何日も話し合った結果、「イケメンであれば純愛。ぶさいくだったらストーカー」という最終的な結論に、私達は非常に満足していたのですが、この作品を見る限りでは全然違いますね。 本作でのアダム(クリスチャン・スレーター)は、一度でもキャロライン(マリサ・トメイ)から拒否されれば、おそらくはすべてのストーカー行為をやめたんではないですかね。そういう人物であるという説得力は十分に彼の人柄から伝わってくるわけです。 アダムとキャロラインの愛情表現って、なんか良いですよね。相手への思いやりにあふれているというか。 ついアダムに主眼を置きがちになりますが、個人的にはキャロラインのキャラクターもかなり魅力的なんです。どこにでもいる惚れっぽい子供じみた女性かと思いきや、すごく母性あふれる優しさを秘めているんですよね。アダムの怪我の手当てにせよ、泣くアダムを優しく抱きかかえる仕草にせよ、アダムをさりげなく気遣う言葉の選び方にせよ、女性の善良性というものが本当によく感じられます。 なんにせよ、まったく飾りもなければサプライズもない、こんなストレートな恋愛映画がこんなにも胸に響くのは正直嬉しいです。 本当は10点満点なんですけど、超個人的な好みで、これだけは絶対許せない演出があったものでして。自分にリボンをつけて、「もうひとつのプレゼントはあたし」っていうの、あれだけはもう本当に本当にだめなんです。100年の恋も音を立てて砕け散ります。 [DVD(字幕)] 9点(2013-07-04 08:31:51)(良:1票) |
1224. ライフwithマイキー
《ネタバレ》 サクセス+ハートウォーミング系の映画はどれも好きなんです。 で、本作、「ライフwithマイキー」。悪くはないのですが、サクセスの部分がちょっと弱かったのが個人的には物足りなくて残念。芸能界の弱小事務所が街で出会った天才子役を売り出すという設定であれば、もう少し話を大きくしても良かったんじゃないですかね。CMの話だけで終わってしまったのはなんとなく残念。 それから、ハートウォーミング系としては、若干台詞や行動のモラルにひっかかる部分があるんです。特に万引きやスリについて言えば、コメディだからってそんな軽い感じであつかっちゃっていいものかと。な~んか、ひっかかるんですけど。 おおざっぱに、ざっくり見ると、わかりやすくて面白いんです。ただ細かい部分がやたらひっかかってちょっとメインのお話に集中させてもらえない感じが非常に残念でした。 コメディだからこそ、「成り行き任せで面白ければ何でもOK」ではなく、モラルや倫理観ってものが結構大事なのかもしれませんね。 [DVD(字幕)] 6点(2013-07-04 07:20:59) |
1225. カリフォルニア(1993)
《ネタバレ》 隣人や友人、同じ立場だったはずの者同士のパワーバランスが突然崩れるタイプの物語、この手の作品にはとにかく弱いのです。わかっちゃいるのに、だいたい想像ついちゃうのに、どうしても衝撃を受けてしまう。 評価されづらい作品かもしれませんが、僕はこういう作品すごく好きです。観ているこっちは、アーリー(ブラッド・ピット)のことがよくわかっている分、平和そうに見える、よくある微笑ましい光景が、驚くほど些細なきっかけで壊れることを知っているわけです。そんなに大きなイベントがなくとも、この映画全体を覆う、人を不安にさせるこの空気感がたまらないのです。 その空気感を創り出しているのが、言わずもがなアーリーとアデル(ジュリエット・ルイス)。特にアデルは、人の不安な感情や依存心といったものをものの見事に具現化したような存在。その二人を一般人代表のモルダー、・・・・じゃなかった、ブライアンとその恋人の目線を通して描いてくれているので、何とも言えない臨場感を味わえるのです。言わばこの二人は観客のアバターのような存在。この二人がいることで、アーリーとアデルの異質な雰囲気がよりいっそう際立っているんじゃないかと思うわけです。 とは言え、アデルには一筋の希望の光が見られるのもこの映画のひとつのポイントでしょう。ブライアンの心の変化も気にはなりましたが、この作品はやはりアデルがメインのような気がします。もう完全に破綻した4人の関係を、ヨーヨーの話や写真の話をふって、泣きそうな顔で元に戻そうとするアデルが痛々しくて観ていられない。そこに来てラストのアデルのあの独白。 最高に切なく、最高に痛々しい余韻が残りましたね。 アデルをカリフォルニアに連れて行ってあげたかったです。 [DVD(字幕)] 8点(2013-07-02 05:35:27)(良:1票) |
1226. ダーク・ハーフ
《ネタバレ》 冒頭10分、頭を切り開かれた少年の脳には、吸収しきれなかった双子の片割れが入っていたシーンにまず度肝をぬかれますね。 脳の中で動く目。なるほど、これはさすがロメロ様。 ただその後は、わりとありきたりなサスペンスになってしまったのでしょうか。冒頭ほどの盛り上がりは見せきれず、ただ淡々と事務処理のごとく生産されていく犠牲者の方々に次第にこちらも慣れてしまった模様です。まさか関係者全員殺されちゃうとは思っていませんでしたけどね。 結局、幼少の頃主人公の脳にいた双子が埋葬されていたにもかかわらず、実体化することになり、最終的には主人公に成り代わろうとしていた解釈で正しいのか、正しくないのか、それすらもはっきりしないままラストを迎えることになり、これは原作読んだことのない自分には釈然としない結末になっちゃいました。 とにかく犠牲者が量産されていくに辺り、それなりに伏線などもきちんと処理されているため、面白いっちゃあ面白いわけですが、やっぱこういうサスペンスホラーって何よりもオチが大事なんじゃないでしょうかねえ。そういった意味では、やや残念な結果ではありました。 [DVD(字幕)] 6点(2013-07-02 01:49:32) |
1227. ジャッジメント・ナイト
《ネタバレ》 殺人現場を目撃したために、4人の元不良が命を狙われるってだけの設定なのですが、その単純さ故のインパクトと臨場感に思わずひきこまれてしまいました。 落ち着いたとはいえ、血気盛んな4人の主人公たちは、初めからなんかやらかすんじゃないかという雰囲気たっぷり。だけど予想していたほどの暴走はせずに、純粋にトラブルに巻き込まれちゃいますので、素直に主人公たちを応援できる脚本なのは良かったです。よくある、自業自得だろパターンだと、個人的に感情移入しづらいんですよね。 ただ単純でわかりやすいストーリーに終始したため、中盤あたりからいつまでも主人公たちを追いかける動機に説得力を欠き、観ているこちらは若干の中だるみ感がおこります。途中で、被害者になることを拒み、反撃の狼煙をあげようかというところでは再び盛り上がりを見せますが、結局はその後も逃げ回り、盛り上がりきれずにラストまで突っ走ります。 最初の理不尽すぎる緊迫ムードがとても良かっただけに、中盤からラストにかけて普通の追いかけっこアクションになってしまったのはちょっと残念だったかも。 ただその分万人向けのサスペンスアクションムービーには仕上がっていますので、割と誰でも楽しめる良作だと思われます。 [DVD(字幕)] 6点(2013-07-01 04:17:58) |
1228. 日の名残り
《ネタバレ》 過ぎ去ってしまった日々はなんて美しく尊いものなのでしょうか。普通は何十年も後にしか分からない感慨を、たった2時間のドラマの中で体験できたことに感謝です。 本作において、スティーブンスの執事としてのルールは、はっきりしています。そのルールの中でも核になるのが、「使用人同士の恋愛をしてはならない。」「執事は主人とそのお客様に対して、個人的な意見を言ってはならない。」の二つでしょう。その二つのルールを徹底しているだけなのに、そこに崇高な志を持った執事の姿を見ることができるのです。 ただ、スティーブンスはやはり生身の人間でもあります。彼が感情のある人物であるということを素晴らしいくらいに第三者の視点のみで描いているところにこの映画の魅力がありそうです。 個人的には、映画が原作を越えられることはまれだと思っています。なぜなら活字で表現できる心理描写というものを映像で描いていくことには限界があると思われるからです。ですが、この映画は心理描写を登場人物たちの台詞や表情、仕草を通してかなり的確に表現できているのではないでしょうか。まるで小説を読んでいるかのような味わい。それがこの作品にはあります。 スティーブンスは2回ほど、プライベートと公務において同時に選択を迫られるシーンがあります。一度目は大事な会議の最中に、父親が亡くなるシーン。二度目はダーリントン卿とナチとの密会の最中に、ケイトンが結婚の報告をするシーン。 まさにスティーブンスがプロとしての資質、執事としての在り方を問われる本作でのハイライト。そしてスティーブンスの選択、行動、振る舞いに、僕はただただ深い満足感を覚え、充足感に満たされるのでした。 [DVD(字幕)] 9点(2013-06-30 15:32:31)(良:2票) |
1229. ハード・ターゲット
《ネタバレ》 父親が殺された理由を探していくにあたり、関係者が次々と殺されていく展開はありきたりですけど良かったです。この前半だけでフーション(ランス・ヘンリクセン)とヴァン・クリーフ(アーノルド・ヴォスルー)の悪役としてのキャラづけは完璧でしょう。 最後の関係者が殺されると同時に、ブドロー(ヴァンダム)たちも攻撃されて、更には刑事のマリーが応戦空しくやられちゃって、どうなることかと思いきや、まさかそこからラストまでひたすらアクション押しになるとは思っていなかったです。 悪くはないんですけど、もうワンクッションあっても別に良かったんじゃないかな。まだこちらの気持ちの用意がまだできていないうちに、ラストまで突っ走られてしまいましたね。 この手のアクションにはありがちの、主人公にはまったく弾が当たらないという設定はもはや鉄板なので気にはしませんが、もうちょっとだけ当たらないようには気を遣ってください。バイクの曲乗りも、ロープにぶら下がりながらの射撃もやりすぎです。笑えたけど。 ほかにも言いたいことはいろいろありますが、最後にひとつ。 撃って蹴るのではなく、せめて蹴ってから撃ってください。あほですか。 というわけで、最高に楽しいアクション映画でした。 いや、本当ですよ。 [DVD(字幕)] 7点(2013-06-30 06:24:39) |
1230. ホーカス ポーカス
《ネタバレ》 大好きなディズニー映画なので期待して見たのですが、ストーリー上追いかけっこがメインな上に、主人公達3人が目的も解決策もなく逃げ回るだけだったので、そもそもの設定に限界があったみたいです。 まあ、コメディ+ファンタジーみたいなもんですから、はじめから緊張感みたいなものは期待していませんでしたけどね。どちらかと言えば子供向けの映画ですし。 とは言え、ファンタジーならではのわくわく感やどきどき感はも~少しあっても良いんじゃないでしょうか。主人公たちがこれといった機転を利かせたりってのが少ないのもちょっと。 終始成り行き任せでストーリーが進んでいくものですから、途中で若干飽きちゃうんです。ただ、ものすごくつまらないとか、映画としてだめとか、全然そういうんじゃないんです。きれいにまとまってはいるんですよ。 つまり、一言で言うと、何か物足りないんです。 おいしいんだけど、ちょっと味薄いね、って感じなんです。 小学生くらいのときだったら楽しめたかもです。 [DVD(字幕)] 5点(2013-06-29 04:43:33)(良:1票) |
1231. 山猫は眠らない
《ネタバレ》 いろいろなアクション、サスペンス、クライムムービーを観ていると、比較的安全な立ち位置にいるように見えるのが、「狙撃手」と「ヘリの中」です。 ところがこの映画、狙撃手もヘリも、決して安全なんかではないって教えてくれるんです。360度ジャングルの中では、狙撃する側は同時に狙撃される側でもある。劇中常に漂う緊張感がたまりません。 更には、ミラーが赴任する時、ヘリの中にいながら狙撃されちゃうのが衝撃的です。仲間が次々と撃たれ、ヘリのパイロットまで撃たれてしまう。戦地では安全なところなんて実際どこにもないんだと警告するのに十分すぎる効果がありました。 残念な箇所をあげるとすれば、やはりリチャード・ミラーのばかっぷりでしょうか。特に前半。人を撃てない悩みがあるのは良いとしても、ベケットに対してあそこまで敵意にも近い不満を抱くのは不自然ではないですかね。 確かに、仕事ができないうえに努力もできないくせに、プライドばっかり高い役立たずってのはどの世界にもいるとは思いますが、ここは戦場ですよ?しかもあなた達はスナイパーですよ?って思っちゃうわけです。 ミラーがベケットに対して銃を撃っちゃうのもやりすぎ。(これは最初任務を言い渡された時の上官のセリフが伏線になっているのでしょうが、だとしても本当に撃っちゃだめ。) そんで、ラスト付近がドンパチ合戦に終始してしまったのはやはり残念。最後にもう一度だけ狙撃の見せ場みたいなのが欲しかったです。 子供の頃に、かくれんぼやエアガンの撃ち合いで遊んだことのある人はぜひ。きっとあの時の緊張感が味わえると思います。 [DVD(字幕)] 7点(2013-06-27 16:21:56) |
1232. ザ・シークレット・サービス
《ネタバレ》 捜査をがんばるおじいちゃん。護衛をがんばるおじいちゃん。走って走って、とにかく走ってがんばるおじいちゃん。 でも恋愛はがんばらなくていい。本当にがんばらないで。いや、まじで。 ピアノ弾いて口説くな。なんか自信満々のくさい台詞はくな。 そんで、相手の女性も本気になるな。何が「もう間違えたくないから。」だ。 そういう問題じゃない。 本編のストーリーも、空しく殺されちゃった相棒も、マルコヴィッチ演じるミッチ・リアリーも、みんなみんな良かっただけに、少々もったいない感じのする作品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2013-06-24 05:04:24) |
1233. 沈黙の戦艦
《ネタバレ》 前半は次から次へと魅力あるテロリストが出てくるので期待全開。 そしてセガールさんが本気を出せば出すほど、テロリストの魅力がどんどんなくなっていくので不思議です。セガールさんと比べちゃうと、みんな普通の人になってしまうのが残念ですね。でもそれがセガールさんの一番の魅力なのでどうしようもない。つまりこの人の映画において傑作なんてのはありえないんでしょう。 ただ、誰が見ても普通に楽しめるエンターテイメントとしては、いつも期待通りのものを提供してくれます。この作品もしかり。 悪いやつがとことん悪く、観ている人のフラストレーションをセガールさんが代わりに解消してくれるいつもの手法。悪くないと思います。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-06-24 04:25:25) |
1234. フィアレス
《ネタバレ》 もしかすると、この解釈は間違っているのかもしれないですけど・・・ マックス(ジェフ・ブリッジス)は、飛行機が嫌いだったという一言エピソードからもわかるように、きっと極度の怖がりだったのです。人一倍死や恐怖というものに対して敏感だったのではないでしょうか。 飛行機が墜落する少し前に、ほかの誰よりも「死」を意識してしまったマックス。そしてその意識は「ああ、自分は死ぬんだ」という諦観の念へといきつきます。そう、きっとマックスの精神は、飛行機の中で光を見た瞬間、実存の世界から別の世界へと昇華されてしまった気がするのです。 マックスは、一足先に誰よりも死の意識に支配されてしまったために、飛行機の中で歩きながら同乗者の人たちに声をかけてまわったり、少年を気遣ったり、墜落後も人々を冷静に誘導することができたのだろうと思うわけです。 マックスは、飛行機の中で光を見た瞬間から、本人が言っているように幽霊のような存在になってしまったのかもしれないです。きっとマックスが想定していなかったことは、自分が生き残ってしまうこと。だから、彼は自分が生きていることにもはっきりと気づかないまま家族のもとに戻ってしまった。そこに現実世界とのずれが生じる。ずれはひずみとなり、時折彼の精神世界を脅かす。その都度彼は自分自身を認識するために、飛行機事故での死の直前に見た光を捜し求め、もう一度あの状況に身を置く必要があったのではないでしょうか。 それが、行き交う車の中の横断であり、屋上でのワンシーンであり、車の運転での自爆だったのだと思うのです。 そして、ラストのイチゴを食べてからの生還。あのイチゴを食べる前に、彼は家族の世界へと戻ることを決めていました。それは、一度昇華された精神世界から、現実の世界へと戻る覚悟の表れでした。でもどうしていいかわからない。だから彼にとって現実世界の代表者である妻に助けを求めたのです。イチゴを食べた瞬間、彼の脳裏に墜落直後の様子がフラッシュバックします。そして妻に助けられたとき、彼は「俺は生きているぞ」と叫びます。 このとき初めて彼は、あの事故から生還したような気がするのです。 [DVD(字幕)] 6点(2013-06-23 12:01:54) |
1235. アビス/完全版
《ネタバレ》 「ファンタジー」は、もしかすると絶対的な目線で観賞すると限界があるのかもしれないです。 この作品、もちろん専門家からするといろいろと言いたくなることもあるかもしれませんが、私程度の知識で観賞するとかなりリアルに感じられます。 それは、潜水艦沈没からそれを救出するまでの流れだったり、軍と民間との目的意識の差異やそこから膨れ上がる確執であったり、また後半のハード・サスペンスだったりです。それに夫婦間の心のすれ違いもそうですね。 ラスト間近の、核弾頭回収(分解)のための深海へのダイブは、見ているほうが奈落へひきずりこまれそうなほどの迫力。本能的な恐怖を掻き立てられる演出で、この作品の中で一番恐怖を感じました。 とまあ、話が長くなりましたが、これが「人間」のリアルな世界。そのリアルを徹底して表現し、人間の限界を私達が感じるときに、突然現れるのが「エイリアン」達です。その出現のタイミングが本当に見事で、私達人間の限界を感じる世界をより明確に描くことで、相対的にエイリアンがもたらす「ファンタジー」の効果が絶大な効果を発揮しているんです。 深海で、「ここにいるよ。」と通信を終えて座り込むバッド。酸素は残り5分。普通に考えれば、ここからの逆転はありえないわけです。また、そう思わせるくらいのリアルさがこの作品にはあります。 ところが、そこで出てくるか、エイリアン。 そう、これこそが僕がファンタジーに求める究極の形のひとつなのです。 [DVD(字幕)] 8点(2013-06-19 04:01:08) |
1236. メイド・イン・アメリカ(1993)
《ネタバレ》 ウーピー・ゴールドバーグは大好きな女優さんです。 「ゴースト」や「天使にラヴソングを」も見ましたが、彼女が出演しているだけでその映画のクオリティが随分と高く感じるんですよ。 で、本作ですが、ウーピー・ゴールドバーグの強烈なキャラ全開なのでやはり楽しいです。しかもウィル・スミスが娘ゾーラ(ニア・ロング)の男友達役で出演し、素晴らしい個性を発揮しています。 「こりゃあ、とんだ拾いもんだ!」と、楽しく観賞していたのですが、何とウーピー・ゴールドバーグのラブシーンが始まるじゃあないですか。これにはまいった。偏見と言われても仕方ありませんが、どー考えてもハル・ジャクソン(テッド・ダンソン)がサラ・マシューズ(ウーピー・ゴールドバーグ)に惹かれるとは思えないんですよ。 それから先は、「ええ?」「ええ?」「えええ?」「どこでぇ?」と、ハルがサラに惹かれちゃった理由ばかりが気になってしょうがなかったです。 ストーリーを考えれば、確かにハルとサラが恋仲になったほうが、説得力はあるのですけど、どーーーーーしても不自然に見えてしまうのです。 ちなみに本作では、ハル・ジャクソンが何気に常識も良識も持ち合わせていて、一番大人ではないかと思いました。 ウーピーや、ウィル・スミスや、ニア・ロングももちろん良かったのですが、なんか最後まで見ると、彼のキャラクターが一番良かったですね。 [DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 03:15:56) |
1237. ジェニファー・ロペスの救命看護
《ネタバレ》 あくまで「救命看護」というのがこの映画のポイントです。 がっつり医療系のドラマを想像しがちですが、どちらかというとサバイバルの要素が強いような気がします。 実際この作品、メキシコのジャングルの中に仲間の乗ったセスナが墜落し、そのセスナに積んであった医療用品のほとんどを現地の盗人たちに盗られてしまうものですから、「手も足も出ない状態」が多いのです。 優秀な医師が何もできずにイライラしている状況。そこで新米看護師達が、何もできないながらも、けが人のそばにいて励まし続ける。そう、これは「医療」ではなく、「看護」の物語なわけです。 で、医師たちは治療したくてもできないとなれば、あとはひたすら救援要請をし続けることになっていきます。ですがこの救援要請も、メキシコの内部情勢がいろいろ絡んできて全然うまくいきません。 リアルといえばリアルな内容なのかもしれませんが、知らず知らずのうちにフラストレーションがたまっちゃうんですよ。それに、中だるみになっちゃうようなシーンが割りとちょこちょこ挿入されて、緊迫感がその都度そがれてしまいます。その割に、医療ものの醍醐味みたいなシーンは少ないので、期待していたほどの充足感は得られないのです。 ・・・なんか残念! [DVD(字幕)] 5点(2013-06-15 10:10:30) |
1238. ハックフィンの大冒険
《ネタバレ》 アドベンチャーとしては、父からの虐待や奴隷制、人種差別に詐欺といった爽やかではない内容が続くので、はっきり言って爽快感や解放感は感じられないです。 つまり、アドベンチャーやファンタジーに求める要素がこの映画には正直少ないんです。かと言って、奴隷制や人種差別の話を掘り下げているかと言えば、そうでもない。要所要所では確かにまじめに奴隷制や人種差別の問題に対して強いメッセージを発信しようとしています。ただアドベンチャーやコメディといった、エンターテイメントの要素も入れて、楽しい作品にしようとしているため、当然ながら雰囲気が軽い。説得力もなくなっちゃっているんですよ。 エンターテイメントとしても、まじめな感動系のストーリーとしても、中途半端でどっちつかずな感じです。さらっと映画の表面だけを楽しんだ感じで、あまり物語りには入り込めなかったですね。 [DVD(字幕)] 5点(2013-06-07 15:02:32) |
1239. パワー・オブ・ワン
《ネタバレ》 心に残る素晴らしい映画でした。 青年PKは、自分自身運命に翻弄され、幼少期に過酷ないじめを受け続けたからこそ、虐げられる立場にあった黒人たちの気持ちが痛いほどわかったのでしょう。 PKにとっては肌の色の違いによって人が差別されることが、あきれるほどにくだらないことでした。映画の中では常に異色の存在であるPK。彼の価値観は現代の私達に近く、当然当時のアパルトヘイト政策下では受け入れられるはずもありません。彼のまわりで悲劇が繰り返されるのはもはや必然だったのかもしれないです。 あまりにシビアな内容に、重く、暗くなってしまいそうなのに、全然そうならないのがこの映画の素晴らしいところ。むしろ、全編に渡って明るく爽やかなイメージが作品を支配しています。これはきっと、PK、ドク、ヒールピート、セント・ジョン、ポータ、マリア、ギデオンといった、彼とその周りの人達が、いつも希望を抱き続け、自分たちの信念を貫き続けたからでしょう。 この映画の中から感じられるのはいつも希望なのです。そしてその希望を信じて疑わないPKたちの心です。彼らの希望は、彼らの心は、言葉となり、歌となり、そして教育となって彼らの世界を駆け巡ります。 片目を失ったギデオンをPKが気遣ったときにギデオンが「俺の目なんかより教育だ。」と顔を輝かせているのを見たときは、涙が止まりませんでした。 どんなに過酷な状況に陥っていても、そこに希望があることが大事なのだと教えられました。 命がけで英語を学ぼうとする人々の姿に、教育の大切さを知ると同時に教育を当たり前のように受けられる現代の私達がいかに恵まれた環境にいるかを実感しました。 ドクが言った「人生で最も大切なのは健康と教育だ」と言ったことば、僕もこれからの人生で胸に刻んでおこうと思いました。 [DVD(字幕)] 10点(2013-06-06 02:29:03)(良:2票) |
1240. ガンクレイジー(1992)
《ネタバレ》 まるで「悪人」のようなストーリー。 この映画においても、「犯罪者=悪」という構図を根底から覆し、主人公たちより最低な人間たちを犠牲者という形で見ることが出来ます。 正直、何をやっても状況は悪くなる一方で、最後には悲劇が待っているだろうと予想される映画というのは、観賞するのがなかなか辛いものがあります。 そこにあるのは閉塞感や絶望感であり、浅はかな愚行を行ってしまう主人公たちへの憤りです。そんな空気が蔓延している映画が、楽しめるはずがないっすよ。 と、言いたいところですが、やはり一定の完成度と、それなりの雰囲気を持っている作品でありましたので、二人の子供のようなピュアな気持ちに心打たれることもしばしば。 好みでいけば苦手なタイプなんですけどねー。 こうゆう映画のほうが結構心に残ります。 [DVD(字幕)] 6点(2013-06-05 23:50:03) |