1. ヘッドハンター(2011)
《ネタバレ》 あまり期待せずに見たがなかなかよくできている映画だった。すさまじいひねりがあるわけでもないが、特に後半はハリウッド並に非常にテンポよく進み、見ていても引き込まれる。 ■裏の窃盗業の関係から一転して追われる身になる主人公。発信器を体に埋め込むというのは見たことがある(例えば「悪魔を見た」など)が、それを振り切るための主人公のなりふり構わない描写はハリウッドではあまり見ないタイプ。肥溜の中に隠れるなどのシュールなシーンも挟まっていて面白い。 ■こういうマイナーな良品を知れるのはこのサイトのいいところだなあと思う [DVD(字幕)] 8点(2013-07-01 23:44:14) |
2. メランコリア
《ネタバレ》 舞台設定といい、画や音楽の使い方といい、明らかにタルコフスキーの再来の印象。 ■確かに非常に美しいのだが、特に前半部分が長いのが明らかにマイナスに出ている。「一般人の期待/鬱の主人公」の期待の対比はいいのだが、あれはダラダラしすぎ。スパッと印象的カットで決めてしまって、後半につないだ方がよかった。後半はいい展開と描写をしているだけに残念 [DVD(字幕)] 7点(2012-11-02 00:53:01) |
3. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 久々のフィンチャー・ワールド全開の作品。「セブン」「ファイト・クラブ」の空気を引き継いでいる。「ソーシャル・ネットワーク」「ベンジャミン・バトン」のイメージで見ると期待と違う作品になるかもしれない。 ■彼特有のおどろおどろしい雰囲気、殺伐としつつも美しい画、は健在。ドラゴン・タトゥーの女、リスベットの雰囲気は群を抜いて素晴らしい。あの特異なキャラはそうそうできるものではない。 ■ただ一方、ミステリの展開としては微妙。そしてミステリ部分に時間を割いていて、人物像の掘り下げがあまり出来ていない(私はシリーズものとかそういうことは考慮せずに単体で作品は評価する)。 この作品なら、リスベットに絞って話を展開するか、あるいはミカエルとリスベットの二人を軸としつつ、事件の方は最初から犯人が分かっている、ぐらいのレベルで問題なかったように思う。この作品のメインは謎ときではなくドラゴン・タトゥーの女の心理にあるというのは恐らく正しいであろうから。 [DVD(字幕)] 8点(2012-02-16 01:49:50) |
4. 刑事マルティン・ベック
《ネタバレ》 あまり期待しすぎずに見たためか、なかなか面白い映画だった。 ■映画の雰囲気はまさに「ヨーロッパ」という感じのドキュメンタリータッチで淡々と、そして乾いた感じで描きだす手法。冒頭の殺人シーンやヘリのシーンはハリウッドではまずやらないであろう撮り方だなぁと思った。 ■前半が捜査、後半が一転して銃撃戦。ただしヒーロー的な展開ではなく、地味に作戦を試み失敗し、の繰り返しで、ラストもなかなかにあっけない。しかし実際の事件はああいうものであろう。(ただしヘリの作戦だけはいただけない。あれは犯人に殺してくれと言わんばかりの方法だろうに) ■展開が勧善懲悪では全然ないところもリアルさを感じさせる。 [DVD(字幕)] 6点(2011-11-07 00:01:33) |
5. ぼくのエリ 200歳の少女
《ネタバレ》 私はキリスト教におけるヴァンパイアの位置付けとか、ヴァンパイアの性質とかはあまりよく知らないので、細かな描写がどうなのかはイマイチわからない。それにヴァンパイアものは初めてなのでどうなのか不安になりながら見たが、予想以上に面白かった。 ■カテゴリとしてはヴァンパイアもの=ホラーではあるが、グロ描写満載で覚えさせるような作品ではなく、むしろある種の芸術性を強く感じさせられる。雪の白、闇の黒、血の赤、この三色がうまくコントラストをなしている。乾いた描写とエリ役のもつ美しさと同時の不安感(不気味さ)が非常にうまい。残虐なシーンを巧妙な構図とカットによって直接的にではなく心に響くようにしている。 ■それぞれがそれぞれの悲しさを含意している物語の展開も深い。いじめられっ子のオスカーは「支えてくれる人」と「強さ」を求める。だが「強さ」はプールのところで自分へと跳ね返ってきて、それは「自らの強さ」によってではなくエリによって救済される。 他方のエリは「理解者」を求める。だが、プールの惨劇のみが本質的に「グロい」シーンになっているところが、エリによるオスカーの救済が、同時にオスカーに自らの完全な「理解者」になってもらう道を閉ざしているようにも思える。エリはオスカーの補完者であり理想像でもある。ある意味で「ファイト・クラブ」を彷彿させられるような。。。 ■邦題のひどさ(笑)はひとまず置いておきましょう。 [DVD(字幕)] 8点(2011-02-11 01:04:18) |
6. サクリファイス
《ネタバレ》 細かな意味や筋よりも、ひたすら映像美に酔いしれるほうがいいのではないかと思うような作品。陰影の美しさ、すさまじい長回しなど、映像としてだけみても十分すごい。飛び散るミルクのカットは有名だが、個人的には最初から二番目の森のカットのあの得体のしれない感じが好き。 さて内容だが、核戦争による終末を淡々と描き切っている感じか。ガタガタ揺れる食器ですべてを表し尽くす。そして最後のサクリファイスはある種の希望と絶望の入り混じった地平を見ているのだろう。もはや論理ではこの映画は理解しえない。そう、ラストのセリフではないが、言葉ではないのである。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-08-17 23:42:15) |